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王立魔導機管理取締部第七小隊〜落ちこぼれ貴族が辺境の吹き溜まりで魔導鎧を駆る〜  作者: 武内陣


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第四章「暴走」(2)

 現場に到着すると、施設の北棟はすでに半壊していた。

 壁が崩れ、石材が散乱している。採掘用の木製の足場が一部倒れていて、鉱石を運ぶための台車がひっくり返っている。

 作業員たちは安全な距離まで退避していて、遠くから震えた顔でこちらを見ていた。

 現場監督のテオが走り寄ってきた。四十代の男で、顔が青い。

「来てくれた……助かった。あれは朝方から急に動きがおかしくなって、制御装置に触ろうとした技術者が弾き飛ばされて——」とガルド隊長に状況を伝えた。

「やはり通報通り無人で魔導石の掘削して探査する単純作業になってるみたいだ」とガルド隊長が全員に通信で届ける


「現在の機体の位置は」ファリスが現場監督のテオに尋ねる

「ここの魔導石はあらかた掘り尽くしたので北にある新しい鉱山に向かったようです」


 ガルド隊長は無言で施設の中を歩き始めた。レンには何を見ているのか分からなかったが、鉱山の全体を、何かを確認するように見渡している。

 「暴走機体はここからは確認出来ないですが、北方に向かったとの情報です」ファリスが通信で言う。

 「ならここからは魔導車では無理なので魔導鎧を起動して追いかけます!」とレンが操縦室から言うとバッハも呼応し二機とも起動し大地に立った

 その機体には大きな魔導石が括り付けてあった。


「北の鉱山へのルートを確認します」とファリスが地図を見ながら言った。

 バッハが「北ならそのまま向かえばいいじゃないか」そう言って行こうとするがファリスが通信で制する

「今、目標がいる北の鉱山へは直線で行くと水場があるのでかなり遠回りになりますが左から迂回して進んで下さい」

「水場なんて無視して最短の直線で行けばいいじゃないか」

「ダメです、水場の周辺は地盤が緩んでいます。この季節は特に。魔導鎧の重量で足元が崩れる可能性があるます。崩れたらそこで動けなくなってしまいます。

 暴走機に遭遇する前に使い物にならなくなったらどうするんですか」

「崩れないかもしれないだろ」「そんなリスクをわざわざ取る必要はありません」

 ファリスとバッハが言い争っていると北の方からドーンと爆発音がする。 

 現場監督のテオが発破用の爆薬が爆発したかもと告げるとバッハは「もうここでじっとしていられねえ、先に行く!」二番機を北の鉱山へ直進して進める。


 ファリス「バッハさん!」と叫ぶが無視して進んでいく そこにセナから通信が入る「バッハさんは僕が誘導します、一番機は迂回ルートで来て下さい」 

 ファリスはなにも作戦通りいかないことに苛ついている。そこにレンから「ファリスさん、北の鉱山までのルート指示願います」との通信が入る

 ファリスは冷静さを取り戻し一番機を北の鉱山へと誘導を始める

 ガルド隊長はその一部始終を見ていたが決して声を掛けようとはしなかった


 作戦が始まった

 先に出た二番機は問題の水場もセナの的確な指示で崩れることもなく通過し北の鉱山で暴走機と遭遇する

「あれが目標か」バッハは舌なめずりをしている

 そこにセナが「ここでの戦闘はダメです。爆薬が残っているかもしれないので。このまま魔導石を使って北の荒れ地まで誘導します」

「面倒くさいがわかったよ」暴走機に向かって「おい!お前の大好きな魔導石はここにあるぜ!」と煽るように高く掲げる。 

 暴走機はそれに反応し二番機を追ってくる

 迂回ルートを使った一番機はまだ迂回路を進んでいた「二番機は大丈夫でしょうか?」レンがファリスに問いかける

「セナは優秀な指揮者よ、信じましょう。」

「ですね、自分たちも急ぎましょう」


 バッハは暴走機との距離を一定に保ちつつ上手く誘導し何も無い荒れ地へと誘導に成功した。

 暴走機体が迫ってくる。魔導石の反応に引き寄せられるように、速度を落とさず一直線に。

「来い。一発で終わらせてやる」

 バッハが二番機を正面に構えた。砲撃モードに切り替える気はなかった。距離を取ってじわじわ削る戦い方は性に合わない。

 こういうのは真正面からぶつかって、力でねじ伏せる。それだけだ。

「バッハさん、砲撃で牽制してから——」

「うるせえセナ。黙って見てろ」

 セナが小さくため息をついた気配が向こうにあった。

 暴走機が激突してくる。

 衝撃が二番機全体に走る。踏ん張る。押し返す。相手の質量は想定より重かった。しかし引く気はない。

「この程度か」

 魔力を上げた。二番機が唸るように前に出る。少しずつ、少しずつ——暴走機体が後退し始めた。

「バッハさん」とセナの焦ったような声が来る。「足元が―――!」

「今いいところだから黙れ」

 さらに力を込める。暴走機の両足が地面を削る音がした。後退している。押し勝っている。

「……あの時の一番機がこんな感じだったな」

 バッハが笑った。模擬戦でレンが全力を出してきた瞬間の感触を思い出した。あれは驚いた。しかしこの機体相手なら―――。

「バッハさん足元!今すぐ下がって!」

 セナの声が今度は違った。いつもの抑えた声ではなく、はっきりとした声だった。

 一瞬だけ、バッハの意識が足元に向いた。

 水場を抜けたとき泥が蹄鉄に詰まるように、二番機の足裏にも湿った土が張り付いていた。気づかなかった。

 踏ん張ろうとした左足が滑った。数センチ。たったそれだけ後退した瞬間に、均衡が崩れた。

 暴走機は逃さなかった。二番機が体勢を崩した瞬間に体ごとぶつかってきた。受け切れない。

「くっ!」

 二番機が横倒しになった。地面に金属が叩きつけられる音が荒れ地に響いた。

「バッハさん!」

「……生きてる」バッハは答えた。「くそ、あと一歩だったのに」

「足元が滑るって言いましたよね」セナの声が来た。怒っているわけではない。ただ、静かに確認していた。

「……言ったな」「次は聞いてもらえますか」

 返す言葉がなかった。バッハは黙って起き上がろうとしたが、二番機の右脚部が地面に挟まって動かない。

「……起き上がれない」


「分かりました」とセナが答えた。「二番機はそこで起き上がれるまで頑張って下さい。その時間は僕が稼ぎます」

 そこで通信が切れた。

 暴走機が、二番機の手から落ちた魔導石に印を付ける動きをしてから、それを踏み越えて、次の反応源を探し始めていた。向きが変わる。セナの方だ。

 セナが袋から出した小さな予備の魔導石に反応している。

「セナ!」

「大丈夫です」とセナが短く答えた。馬から降りて暴走機から距離を取る、落ち着いた声だった。「距離は保てています。でも流石にちょっと怖いですね」

 セナは馬を逃がして自分は暴走機と一定の距離を保ちつつ二番機から引き離す。

「セナ、やめろ危険だ」バッハが必死に起き上がろうとするも足が嵌って立ち上がれない「クソ!なんて使えないんだ私は!」

 セナに迫りくる暴走機。セナは諦めたのかなにか策があったのかわからないが両手を広げて覚悟を決めた表情をする。

「セナーーーーー!」バッハの叫び声がセナの通信機に虚しく響く。

 その瞬間、通信ではない別の声が割り込んできた。

「セナ、下がって!」セナが声の方を向くと

 一番機が、荒れ地の端に立っていた。

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