第四十六話 声援
タイトルを変えました、分かりづらくてすみません。
「行くぞー!!」
ドレッドの叫び声に会わせて、グアルも剣を引き抜いた。
「同族であろうと、ここはお前達を滅する他あるまい。平和のために」
剣は青い炎をまとい始める。やがて青い炎は元の大きさの数十倍、点にも届く高さに巨大化し、剣の形へと変貌する。
「下等なゴブリンに身を落とした前世の罪を悔やむが良い」
グアルは、巨大な青い炎の剣を、ゴブリンの軍団めがけて振り下ろす。
「ギギ、ガガー!」
ゴブリン達から湧き上がる、思わず耳を塞ぎたくなるような甲高い悲鳴。
その一撃で、グアルはゴブリンの集団の6割を消し飛ばした。
「ギ、グヤー!」
そして、残りの4割のゴブリンの集団が、命の危機を感じ、死に物狂いでエレナ達の元へとなだれ込む。
「させん!」
ゴブリンの軍団の中にいたドレッドは上空に青の魔法陣を展開すると、森に映えた一本の大木を転送し、ゴブリン達の前線に落した。
その大木の真ん中をドレッドは剣で切り裂く。すると、人一人が通れる程のスペースが大木の真ん中に空いた。
そこに、ゴブリン達がよだれを垂らしながら剣を持って走って行った。
「マーク!道は作った!俺がこいつらを倒すまで、その通り道だけを死守しろ!お前にはたやすいことだろぅ!」
ドレッドの勇猛果敢な戦いに、マークは意外にも圧倒されていた。
「これが……魔界の戦場。何て秩序がなく、混沌としているんだ」
魔族との戦場は余りにも泥臭く、一を相手にする数倍も鬼気迫っていた。
ひるみながらもマークは赤の魔法陣を目の前に展開し、その魔法陣を通り抜ける。
マークの身体能力が大幅に底上げされると、次に緑の魔法陣を大木に向けて展開した。
だが、少しだけ気圧されているマークに、エレナは気づく。
「マーク……」
エレナは子供達に凜として接していたが、マークに向けた表情は酷く怯えていた。
だが、エレナの言葉は、マークの予想していた言葉とは違った。
「マークなら、絶対にできるから、皆を助けて上げて」
エレナは立ち上がり、袖を放すと、マークの背中を押した。
二人の間に、それ以上の言葉はいらない。
ひるんでいたマークの表情は、女王を守る兵士の表情に変わっていた。
「ありがとうございます。陛下」
緑の魔法陣の輝きが一層増すと、ドレッドが落した大木の通り道が勢いよく狭まり始めた。
逃げ惑うゴブリンが数匹、迫り来る大木で潰れる。再び大木は左右に割れていき、再び勢いよく閉じ、またゴブリンを数匹潰した。
マークは魔法陣に何かを書き込んだ素振りを見せる。
魔法の自動化という、高度な技術だ。
一秒毎に大木は割れては閉じを繰り返し、なだれ込もうとするゴブリン達の数を制御し、着実に減らしていく。
知能の低いゴブリンは、大木を避けることもなければ、壊すこともない。ただただ、より人間の多い方へと進み続ける。
「ぐぃぃ!!!!」
大木の閉開による死を免れたゴブリンが数匹、エレナ達の元へと向かっていく。
「エレナに指一本触れさせない」
マークは小さくそう呟くと、左の手のひらに、自然を操ることの出来る緑の魔法陣を生み出す。
緑の魔法陣からは、氷の剣が三つ生み出される。
「俺がいる限り」
氷の剣がとてつもないスピードで、ゴブリン達の脳天を貫いていった。
大木の手前では、エレナの元へ向かうゴブリンをマークが。大木の向こう側のゴブリンの軍勢には、グアルとドレッドが、たった二人で大立ち回りをし、少しずつ、少しずつ、確実に、ゴブリンは数を減らしていく。
エレナは子供達を背に、ただただその姿を見届けることしか出来ない。
汗を流し、雄叫びを上げ、傷つきながら戦うドレッドも、敵陣の中心に切り込み、ゴブリン達の血を一身に浴びつづけるグアルも、そんな二人を助けたいという気持ちを必死にこらえ、確実にエレナや子供達を守る役割に徹するマークも。
だからエレナは、自分にしかできないことをする。非力でも、ほんの少しでも、彼らの力になれるよう。
「頑張って・・・・・・・」
エレナの呟きに、子供達や、彼らを囲う大人達が振向く。
エレナは背後の彼らの視線を一身に背負いながら、大きく息を吸う。
「頑張れ!!皆!!」
これしか出来ない。これしか。でも、きっと彼らの力になる。人の思いは、声は、きっと。
だが、エレナだけでは駄目だ。何も戦う事の出来ない、非力な大人が応援したところで、それは戦いを傍観する宣言でしかない。
だが、子供達の声ならば。
そしえ、女王たるエレナは、子供達の見本となるべく、誰よりも熱心に、声高に叫ぶ。
「頑張って!!頑張れー!!」
エレナの背後にいた、怯えている子供達は、エレナのそんな後ろ姿を見て、目に光が宿った。
子供達は、エレナの姿に唖然としている大人達の囲いをすり抜け、エレナの隣に並び、共に叫ぶ。
「頑張れーーーー!!」
「負けるなー――――――――!!」
「絶対勝てーーーー!!」
小さな体で、子供達もエレナにならい、エレナよりも大きな声を出そうと、必死に叫ぶ。
それを見た大人達も、子供達の横に並び、彼らを応援した
「我々が必ず、子供達とエレナ様を守ります!!どうか持ちこたえて!!」
「頑張ってください!」
「生きて、帰りましょう!!」
「我々にはまだ、すべき事が残っています!!」
好きな人からの声援は、子供達からの声援は、守るべき者達からの声援は、彼らをさぞ、奮い立たせたことだろう。
それに答えるように、ドレッドは大きく、低く、雄叫びを上げた。
「うおおおおおおおおおお!!」




