12 変化
「はぁ……どうしたものか」
レイゲンはリグルをどうしようかまだ悩んでいた。
あんな力を持った少女だ。下手なところに置けばそれ相応の物が帰ってくる。
「だからといってギチギチに縛れば中のキメラ共が容赦はすまい……監視役を付けるのがいいのだろうがどうしたものか」
同年代では幼すぎる。せめて成人していて、それでいて簡単には死なないような奴をつけたい。
「ん?あぁ、そういえばお前がいたな」
書類をめくっていくと一人の生徒を写した書類が出てきた。
「戦闘科所属、スモーキー・スモーカー。彼なら簡単には死なないだろう。1年だし歳も
18歳と申し分ない。連絡をとってみるか」
レイゲンが胸を一度叩くと一冊の本が出てきた。
名は【グリモワールオブブラッド】。彼の本だ。
「第2章35頁、【点を結ぶ者】」
そう言うと本はばらばらを勝手にめくれ、35頁までくるとぴたりと止まった。
そこに書いてある文字が淡く発光する。
数秒すると本からなんともひょうきんな声が聞こえてきた。
『はいはい、こちら点結者です。ご用件をどうぞ?』
「スモーキー・スモーカーと連絡をとりたい。できるか?」
『しばしお待ちを……あぁ、一人名前に該当する者がいました。
16歳の男の子で……ほぅほぅほぅ!面白い子ですねぇ。あ、ご用件は?』
「明日入ってくる緑の髪の女の子の世話をして欲しいと伝えてくれ。それと詳しいことは明日話すと」
『はいはい、えぇーと。はい。はい。ほっほっほ!『わかった。代わりに何か特典をよこせ』だそうでございます』
「そうだな。学園内ならどこでも喫煙できる権利をやる。」
『『了承した』だそうでございます。ヘビィスモーカーですねぇ。名前に偽りなしと申しますか。ヒヒヒ。ご用件はもういいですかな?』
「あぁ」
『それでは今日はこんな時間に呼び出されましたし、えぇ、銀貨5枚でしょうかね』
「相変わらず高い料金だ」
『もっと早い時間にかけてくだされば少し安くしますのに』
「次はそうするさ」
『それでは、またのご利用お待ちしておりますぅ』
そう言うと本は勝手に閉じ、レイゲンの胸へと収まった。
「これでひとまず安心……か」
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「(普通に美味しかった……なんだかショックだなぁ)」
マギラビットのステーキはシェフの腕がいいのか臭みはなく、柔らかかった。
かかっているソースも絶品の一言に尽きる。
「どうしたの?リグル」
「うぅん!なんでもないよ!ご飯美味しかったね!」
「嬉しいこといってくれるじゃん。ノンお嬢様ってば毎回ごちそうさまとしか言わなくてさぁ」
リグルとノンが会話しているとさきほどノンと言葉を交したエイトという青年が声をかけてきた。
「こんばんは、ノンお嬢様とリグルお嬢ちゃん」
「私のこと知ってるんですか?」
「あぁ、もちろん!さっきガーランさんがノンお嬢様と一緒にリグル嬢ちゃんのことを話していったのさ。会話的にはお嬢様9割リグル嬢ちゃん1割だったけどね」
「9割って……ノン愛されてるね」
「暑苦しい。いらないそんな愛」
「手厳しいなぁノンお嬢様は!ガーランさんにもっと甘えてあげてもいいと思うぜ?」
「このままでも十分。行こ、リグル。エイト。ごちそうさま」
「あっ、待ってノン!エイトさん!ごちそうさまでした!」
「あいよー」
話を切り上げたノンはリグルの手を取って自分の部屋に戻っていった。
「ずいぶん活発になったじゃないの?やっぱ似たような年のお友達は大事だよなぁ……っと仕事仕事」
エイトはやってきた従業員からメニューを受け取ると急いで厨房へ戻っていった。
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「エイトさんいい人だったね」
「料理も美味しいし、いい人よ、彼は」
部屋に戻った二人は大きなベッドに一緒に入り、今日起こったことを話していた。
リグルにとっては大波乱の一日であり、ノンは泣きつかれていた。
だんだんと会話はとぎれとぎれになり、どちらともつかず眠りに落ちていく……
「……またこの夢かぁ」
前に見たことがある景色だ。
立っている場所も目覚めた時と同じだ。
不思議とあの時感じていた恐怖はどこにもない。
もしかしたら何かがまた変わっているかもしれないと思い。
前に覗き込んだ時と全く変わらない真っ黒な湖を覗き込む。
「うん。目も普通だし、手も普通だし、お腹にもなにもないと……よかったぁ」
そう言ってリグルは雪のように真っ白な髪を撫でる。
「それにしてもどうやったら目覚めるんだろう?」
夢の中ということはわかるが、夢から覚める方法はわからなかった。
「うぅん……あれ?あれなんだろう」
あたりを見渡していると草むらががさりと動いた。
そこから飛び出してきたのは真っ白な体に青いうずまき模様を持った兎だ。
「不思議な兎、初めて見た」
兎もリグルに気づいたのだろう。ぴょんぴょんとジャンプしながらリグルの足元まで来た。
物怖じしない勇敢な兎である。
「こんにちは兎さん。どうしたの?」
兎はしばらくリグルの周りと跳びまわっていたが、しばらくすると満足したのかふすっと鼻を鳴らして草むらへ跳ねていった。
「なんだったんだろう……?」
何とも言えない気分を抱きながらリグルは目を覚ました。




