7月~汐 2周目 前
あの雨の日から数日。
案の定というべきか、朱斗は風邪を引いて寝込んだ。
最初は、くしゃみをしている程度だった風邪が、だんだん悪化していったらしく、ついには部活の顧問に治るまで来るなと言われるほどの酷い風邪にまでなったそうだ。
で、ついに今日、熱を出して休んだ。
朱斗のお母さんは専業主婦だから、病院に連れて行くそうだ。
ちなみにこれまで、ごねてたらしい。
病院どれだけ嫌いなんだよ朱斗…。
「汐、今日どうするの?」
「え、何が?」
美凛に耳打ちをされて、わけが分からず聞き返した。
「…これイベントだよ。お見舞いのイベント」
「あー…そういうことか…でも前、帰らされたんだけど…」
「好感度が低いと、アイツでもそうなる。汐なら大丈夫だよ。だって彼…」
美凛が何かを続けて言いかけた時だった。
「美凛ー」
「銀?どしたの二年の階まで来て」
「クレープの割引券今日までだったから、一緒に食いに行かねぇかと思ってさー」
「…クレープ…」
一瞬、美凛の目が哀しそうな目になった。
「俺一人で買いに行きたくねーもん。な、行こうぜ」
「分かった。じゃ、部活終わるの待ってるよ」
「おう!ってあれっ、汐先輩いつの間に?!」
「さっきからいたよ馬鹿!」
「何か、すんません…」
「ううん、いいよ別に」
「ホント猪突猛進なんだから…」
「ちょとつもーしん?」
「もういいから早く部活行きなさい!」
「へーい!」
走っていく鉢梅君。
なんだ、美凛のこと大好きなんじゃない。
「ごめん、なんだっけ…」
「あー、いいよいいよ。美凛も部活でしょ?とりあえず私、朱斗のお見舞い行ってみるから」
「うん、頑張って」
「美凛もね」
意外と、順調に"イベント"は潰れていると思う。
それに鉢梅君って今は聖風さんじゃなくて美凛が好きなんじゃないのかな。
…ただ、本性を見られるほどいろんな人と仲良くなってないのが不安だけど。
そんなことを考えつつ、私は帰り道にあるスーパーでゼリーとかプリンとかを買って、朱斗の家に向かった。
コンビニのものって、学生にとっては高いんだもの。
インターフォンを鳴らすと、出てきたのは朱斗のお母さん。
「あら、汐ちゃん!」
「こんにちは。朱斗のお見舞いに来たんですけど…」
「だったらちょうどいいわ。今から買い物に行くんだけど…その間朱斗お願いできる?あっ、用事があるなら無理しないでね」
「大丈夫です。あと帰るだけなんで」
「そう。ありがとう。じゃあ、少しの間お願いね」
相変わらず美人な朱斗のお母さんは、そのまま家を出ていった。
…任されたし、帰れってことはないと思うけど…行ってみるか。
二階に上がって、朱斗の部屋のドアをノックする。
「…なにー?」
「朱斗、私、汐。お見舞いにきたよー」
「えっ、汐?!」
「入るよー。何かまだだるそうだね」
「だ、ダメだって入ってきたらっ…うつるよ?!」
「大丈夫だって。私すぐ治る方だし」
「けど…」
「朱斗は病院に行かなかったせいでここまで悪化したんでしょ?」
「う…」
「ホント病院嫌いだよね」
「…だって、休まなきゃいけないじゃん」
「そりゃそうでしょ」
「それにオレ、病気で苦しい時に一人で寝てるのって、苦手なんだ」
「どういうこと?」
「いつもよりずっと…誰かに一緒にいてもらいたくなる。うつしたくないのに、傍にいて欲しくなってくんだ…」
だったら何故前の時に帰らせたし。前はそんなに聖風さんが好きだったのか。
…でもそれなら私に告白してきた意味が分からんのですが。
「じゃ、傍にいる。おばさんに朱斗のこと頼まれたから、帰れって言われても帰らないつもりでいたしね」
「…うん。ね、オレのお願い、聞いて?」
「なに?」
「手、握って。起きた時も汐がいてくれるって、思いたいから」
「いいよ」
布団から出されたのはテニスで豆が何度も潰れて少し固くなった朱斗の手。
それを握ると、朱斗は本当に安心したように目を閉じた。
早く治るといいね、朱斗。
だんだんと汐と朱斗話ばっかりになってきましたね…。
他の攻略対象とも絆を深めないといけないのに…どうしたものか。
では、閲覧ありがとうございました。




