第二章 周章狼狽な毎日 第二話 プレイヤーズ
ちょー簡単に前回のあらすじ
鬼谷が神谷が泣いているところを見つける。そっからご飯食べる。部活決めなきゃってなってオリエンテーション見たら、自分の思いを振り返ったりしてバスケ部に決める。鬼谷はバレー部。
そこで鬼谷のバレーのショットに神谷が見惚れてしまう。
そのあとの部活も楽しかった。だが、神谷の脳内から先ほどの衝撃が離れることはなかった。
チャイムが鳴り、仮入部の時間が終わる。
「よし、それじゃ仮入部の子はここまで。ぜひ、入部してね!」
「「「ありがとうございました!」」」
仮入部一同、全力の感謝。各々が先輩たちに指導してもらって、貴重な経験をすることができた。おそらく、ここにきたほぼ全員が入部するだろう。そのようなことが春斗は生徒の表情から読み取ることができた。気づけば、バレー部の一年生も挨拶をして体育館から出ていっていた。先輩たちはこの後も練習があるようで、迷惑にならないように急ぎ足で体育館から出る。体育館から出ると急いで鬼谷を探した。さっきのショット、あれはいったい何だったのかが気になって仕方がなかった。。あたりを見渡していると、校門あたりに鬼谷の姿を見つけた。
「あ、鬼谷!」
急いで鬼谷の場所まで向かい、ともに駅まで向かう。
「鬼谷ってバレーすごいんだな。俺びっくりした!」
思っていたことを率直に伝える。鬼谷からの返事はそう、という簡単なものだったけれど。
「どっかで練習してんの?中学校の時に部活でやってた?」
「部活はやってなかった。趣味で少し」
なるほど、と春斗は内心そう思った。もし部活をやっていたのなら間違いなく推薦されていただろう。普通科にいる生徒で先ほどのショットはレベルが違いすぎた。そして、趣味であれほどの境地にたっていることに驚きも感じた。
「そっちはどうだったの?」
「ん-俺はあんまりだったかな、なかなかボールの扱いがうまくできなくて」
「苦手なの?」
「まあ苦手っていうか...」
苦手というか相性が悪いというか。バスケをやってみて改めて感じた。制御ができないのだ。ボールが思っている方向に飛ばなくて、追いかけるために走ってもキャッチがむずくて。春斗はバスケに向いていないのだ。仮入部に参加した生徒の中で上位に入ることはできない実力だった。
「じゃあ、別の部活にしたら?」
そう簡単に言われる。事実、そうした方がいいのだろう、他の方がもっとうまくやれて、もっと楽できるのかもしれない。でも、それじゃダメだ。春斗は諦めが悪い男なのだ。自分をスポーツ万能と称えたいのだ。意地になって、スポーツに挑戦したいから、苦手でも、他のスポーツが似合っているとしてもこのスポーツに春斗は挑戦し、もう一度スポーツ万能の称号を得たい。春斗は頬をかきながら少し笑って鬼谷に伝える。
「そうかもしれないけど楽しかったんだよ、バスケットボール。」
春斗なりの言い訳の仕方だ。自分の心の中を隠すように、言葉を出す。だけど、口から出たその言葉も本心で、どうしようもないほどに楽しいのだ。
「それに苦手であれば苦手であるほど、燃えるじゃん。」
ガッツポーズをしてめらめらと自分を燃やす。そう返事すると、少しの沈黙があった。
気まずい、と春斗は思った。春斗を思って言ってくれたのに、めっちゃ否定しちゃった。まだ、出会って二日目でそんなこと言うのはさすがに...。
「そっか」
だけど、鬼谷はそんなこと何も気にしていないように、むしろほんのわずか嬉しそうにそう答えた。
「うん、お前もがんば!」
あっという間に駅に着き、電車に乗った。帰宅ラッシュの時間帯よりも少し早い電車に乗れたからか、電車は少し空いていて、二人とも座ることができた。
「ゲーム、いつできるの?」
「へ?あー」
ゲーム、完全に忘れていた。そうだ、その話もしなくちゃと鬼谷を探していたのだ。すっかり部活の話に夢中になっていた。
「えっと、家に帰ったらすぐできる?」
「いいよ」
よし決まり、と返事をして会話が終わる。
改めて鬼谷を見ると、身長高いなと思った。同じ座高の電車の座席で比べたら、俺の頭がちょうど鬼谷の肩ぐらい。頭一個分離れていて、正直ずるい。
「鬼谷って毎日が牛乳が3Lぐらい飲んでる?」
「いや飲んでない。」
「そっかー、そうだよなー」
「まあでも、米はめっちゃ食べてる」
「米かー」
俺ももっと米たーべよ!せめて平均身長の172センチには行きたいと160センチの春斗は思ったのであった。
そうこうしているうちに、春斗の最寄り駅の到着のアナウンスが鳴る。
「あ、もうそうそろか」
席から立って、荷物を持って、扉の方に向かう。電車が駅に着き、揺れながら止まる。
「じゃあね!」
「ん」
そうして会話を終えて、電車からでる。改札を抜けて、コンビニでおやつを買って、自宅へと向かう。
自宅ではやっぱり親はいなかった。汗がすごい。四月と言っても、春じゃないくらいに熱い。急いで風呂場に向かう。その時、ポケットのスマホが震えた。ミンスタから一件の通知。
「もうちょっと後ででいい?」
俺も打ち込む。
「いいよー俺シャワー行ってくるわ。」
既読がつき、ありがと、了解。と簡単な連絡を終えた。スマホのボタンを押して画面が暗くなる。そして急いで服を脱ぎ浴室に入る。シャワーを浴び、汗を軽く流し浴室から出た。体をふき、ゲームの準備を始める。そして、鬼谷からの連絡を待ちながら、軽く練習をしておく。黙々と、ゲームの試合を回す。そして大体10分後ぐらいに鬼谷からの連絡がきて通話をはじめ、チームを作る。
『あ、あ。聞こえる?』
「ばっちし!よし、じゃあやるぞ!」
『うん』
試合開始のボタンを押し、バトル開始の合図を待つ。ゲーム名は、「SEATTLE」。複数のモードがあるけど、最も人気なのはSUM。それぞれの役職で5対5のバトルを行う。役職は、ヒール、アタック、チェイス、ブロック、タンク、テンプなどなど、味方の役職との被りは禁止。自分たちのチームの陣地を守りながら相手を全滅したら勝ちのシンプルなゲーム。春斗はチェイス、味方の囮となって逃げながら戦う。
「おっけ、寄せたよ。」
『任せろ。』
寄せた敵を鬼谷が刀で処理する。鬼谷が使うキャラの役職は、アタックとヒールの兼用役職。攻撃と味方への回復の両方ができる万能役職だ。ただその一方で不遇役職との名も名高い。役職が被ることが禁止されているSUMにおいて、立ち回りが非常に困難なのだ。ヒーラーとアタッカーの立ち位置が異なり前線に出ようとしてもヒーラーとしての役職を意識したらなかなか前に出ることができず、ヒーラーやアタッカーとしての性能もそれぞれの役職の能力の半分より少し上ぐらいのステータスでどうしても劣等感が残り、器用貧乏という言葉がよく似合う。だがその点、鬼谷の立ち回りは流麗だった。役職の立ち回りが絶妙でそれぞれのもっともいてほしいポジションに最も望んでいるときにその場にいる。相手からの攻撃に対して受け流しやすく、攻撃の時に一気に詰めれる。
「ないすぅ~!」
『おつかれ』
「もう一試合行こ!」
春斗が敵を扇動し、寄せてそこを鬼谷が狩る。初試合にしては息の合った連携だった。
「鬼谷うま!」
『神谷もだいぶ上手い』
「いやー俺はただ敵煽ってるだけだし。適当にうろちょろしといたら敵やってくるからそれを鬼谷の方に向かわせるだけだから楽ちんなんだよ。」
春斗の使うチェイスは敵からしたら厄介な役職だった。相手の懐に入り込み、キルはせずともうろちょろして、相手の注意を引き付ける。ひきつけたら味方のところまでいい感じに連れていけばそこで味方中心に奇襲に近い攻撃を仕掛けて試合を終わらせる。仮に相手が春斗を無視するのならそのまま敵の陣地に踏み込んで勝利。放置しても関わっても非常に迷惑な役職である。その分体力が少ないなどの欠点もあるのだが、それはまた別の話。
『神谷は相手との距離感がうまい。』
「あーほんと?ありがと。じゃあもう一回やろ」
試合がまた始まる。相手の動きをよく見ながら、行動を予測してゆっくり、着実に味方の方へと引き寄せていく。もうすでに勝利は確約されていた。
「ないすぅ」
『ナイス、もう一試合行くぞ』
「任せろ」
一試合、二試合、三試合と試合を重ねていき、二人の連携はもっと高まっていっていた。
気づけば時計は21時を示していた。ゲームを始めてから3時間が経っていた。母らはもう帰っていたのかリビングからは生活音が聞こえていた。
「俺腹減ってきたしやめるわ」
『わかった。またな』
「おう」
通話を切り、チームを解散する。ゲームの電源を消して、リビングへと向かう。リビングに着くと、母は帰ってきていて父は早帰りだったのかテレビを見ながら洗濯物をたたんでおり、母は料理を作っていた。キッチンからはカレーの香ばしいにおいがしていた。
「父さん、今日は早いんだね」
何でもないように父にそう問う。
「おう、仕事がひと段落してな」
そう、と相槌を打ってソファでスマホを見る。ミンスタに乗ってるストーリーやRE:BEALを見たり、友達の連絡の返信をしているうちにダイニングの机は彩られていった。
「ご飯よー」
母さんからの声に二人の男が反応する。1人はテレビを消して向かい、もう一人はスマホをみながらやってくる。
「「「いただきます」」」
手を合わせてそう言う。
スプーンを手に取りカレーを食べていく。ただ少し米の量が異常なほどにおおかった。
「...米多い」
神谷は母に対しそう愚痴る。すると母ははあ、とため息をついて春斗の頭を軽くたたく。
「あんた今日部活やったんでしょ。それなのに食べなくてどうすんのよ。それに、身長伸ばしたいんでしょ?」
ぐさりと春斗の胸を言葉の刃が貫く。最後の言葉でチェックメイトだった。
「とにかくたべなさい」
「はぁい」
まあ、鬼谷も米めっちゃ食べてるって言ったしな。そう思いながら、悶えながらもカレーを何とか食べ終え、食器を流し台に適当に置いて、風呂に入る。
風呂から入り終えると、時間は寝る時間になっていた。歯磨きをして自室に向かう。
「じゃあ、おやすみー」
「おやすみ、頑張って身長伸ばしてね」
いつも通りの軽口をたたかれながらベッドに倒れる。どうやら疲労はたまっていたらしい。布団を体にのせるとすぐに睡魔が襲ってきた。瞼が重く開けることを拒んでいく。気づけば朝の光がカーテン越しにあふれ出していた。
また、一日が始まる。学校への足取りは重いような軽いような不思議な歩き方だった。
一話「第一章 恋」の誤字脱字を訂正しましたが何か所か気づけていない部分があるかもしれません。そのときは教えてくれたら幸いです。誤字脱字は投稿前も確認しているんですけど、発見できていない場所もあるので、投稿後から三日間ほどかけて直しています。ご理解お願い致します。次回は、4/20-4/26の週に投稿する予定です!それまでの間も他の作品は更新するのでぜひお時間があればお読みください。




