第8話 オオカミ接近
「来たか……」
思っていたより早い接近。
クソクどうこうは関係なく、戦力を投下してきたような気がするが、王の真意は俺にはわからない。
だがこれは、完全に魔王城の領地への検問を任せ、いつも以上に遠くまで感覚を研ぎ澄ませていて正解だったな。
しかし……。
「これは速いな。馬、じゃない。相手は鳥か? いや、そんなことないだろ。竜騎士? いやいや、そんな兵士はいなかった」
竜騎士なんて世界的に見れば勇者よりも珍しいような存在だ。
いれば確実に投入してくるだろうが、そもそも魔王討伐に向かわせておけばいいほどの存在。
「となれば、とんでもない身体能力による全力疾走ってところか」
一応は勇者パーティにいて、国では優秀なチームの所属だったから、才能のある人間がどこまで動けるかはある程度知っている。
普段、鉄の塊みたいな装備を身につけ、それでいて俊敏に動けるような戦士は多数いるのだ。
まあ、これは俺の能力的にそうしたことを理解しておいた方がよかったからというのもあるのだが、わかっている情報なら使うべき。
「じゃあ、暗殺者か?」
即座の決着を望むなら、素早さ重視も納得。
しかし、今回に関しては裏目に出たな。
こっそり侵入してくる気がないようでわかりやすくて助かった。
普通は俺みたいな遠隔の状況を把握できるようなヤツを想定してないだろうしな。
だが、そもそも人間……か? 反応がなんだか俺やパトラと違うような……。
「まあいいさ。相手が誰だって関係ない。魔物なら別に急いで接近する必要はないし、人間なら魔王攻略を目指しているってことだ。どちらにしろ、要警戒」
相手の情報をある程度把握したところで、今度はタイミングと場所をうかがう。
このまま突っ込ませるわけにはいかないからな。
「ふっ」
接近していた敵の動きが止まった。
俺の作った新しい嵐の壁による足止めは成功した。
これで犠牲は出ていない。
暴れ回られるよりいい手を打てたはずだ。
しかし、勢いのまま壁に突っ込んでくれたらよかったんだが、そういうことにはならなかったか。どうやら、なかなかに勘が鋭いらしい。
まあ、ここは壁を越えられなかっただけよしとするか。
戦闘の準備をしようとソファから立ち上がったところ、コンコンとノックだけしていきなり誰かが入ってきた。
「カイセイ様っ! 非常事態ゆえ、突然の無礼お許しください。魔王城を取り囲んでいた嵐の壁が、新たな壁により囲まれました。おそらくはカイセイ様のものだと思いますが、お心当たりはございますでしょうか?」
さっき壁を出して様子を見てただけなんだが、この対応の早さ。
俺の部下は少し優秀すぎやしないか?
そして、俺以上に心配性みたいだな。
「その壁は俺がやった。俺が作った。強者のお出ましだ」
「本当ですか……では、直ちに対処に」
「待て。おそらく幹部が出なければ、この魔王城にいる多くの兵が犬死にするだけだ」
「ですが、そう易々とカイセイ様のような幹部の方に任せるわけには……」
俺はぽんぽんっと真面目な部下の肩を叩いた。
俺だって同じ立場なら同じように言い、同じように行動するだろう。
少しは役割を任せ、頼ることも大切ということはわかってきたつもりだ。
だからこそ、今は俺が行くべきということを伝えないといけない。
「勇気と無謀は違うって、ここでは言わないのか? 真面目なのは結構だが、命大事にだ。敵の力を見誤ると早死にするぞ」
「っ!」
部下は感動したような顔で俺の顔を見つめ返してくる。
「大変、大変ありがたいお言葉!」
「いや、そんなことないさ」
「そんなことありますとも! 相手の実力を把握することさえできない強者とわかっていながら、私のような若輩者が出る幕はありませんよね」
「適材適所ってだけだ。たまたま幹部である俺の方が向いていた。それだけのこと」
「わかりました。その言葉、この胸に留めておきます」
なんだかやたら重く受け止めてしまったようだが、命を無駄にしないでくれるみたいだしよしとしよう。
やたらとすごいヤツみたいに思われてるのは少しプレッシャーだが、期待してくれてるなら応えたいしな。
「それでは行ってらっしゃいませカイセイ様。どうか、ご武運を」
「ああ。任せておけ」
さて、最低限の準備をして向かうとするか。
任されたからにはしっかりとやってくるかな。
新作を書きました。
「妹の代わりに転生して幼女にされましたがヤンデレ化した妹が追ってきたようです」
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よろしくお願いします。




