第5話 受け入れのやり方を見直そう
さて、ここ魔王城のテリトリーに侵入してくるとすれば壁抜けか魔物受け入れ、そのどちらか。
壁抜けは無理だろう。いや、入れてたまるかと言う話だ。今のところ破壊されたことはないし日々侵入対策は強化しつつ敷地を広げている。
となると出入り口で看破すればいいということだろう。クソクに関してもわかってて入れた訳だし。となると、俺が入れなきゃいいのか?
「ここの仕事は俺がやる」
ここにいればもし仮に突然暴れ出すような輩が出てきた場合でも対処できる。
「ダメですよ。カイセイ様は幹部なんですから。ここの仕事は我々に任せてください。むしろ、カイセイ様は他の幹部の方々を見習ってください」
「他の幹部?」
「そうです。もっとカイセイ様にしかできないことをしていてください。魔物を通す仕事は我々がしますから」
えっと。俺の知る幹部ってのはレバレちゃんとか、スー、ノーあたりだろうか。
うーん。そう言われても仕事してるイメージないんだがな。勇者と戦ったり、ドラゴン倒したりしたくらいか?
でもあれって、ドラゴンの方はなんか勝手に遊んで迷子になったとかだったような……。
「警備の強化のために正体看破が必要で。それは俺にしかできないと思うんだ。だからこれは俺の仕事なんだよ。悪いけど、他のことを任せようと思う」
「ということは、この間入れた人間はやはり悪さをしていたのですね? すみません。わざわざ気を遣わせてしまって、そのうえ遠回しな指摘をさせてしまい。どうか処罰を」
「いや、そんなつもりじゃな、ってわかってたのか? クソクが人間だって」
「はい。名前までは覚えておりませんが」
えー。さも当然みたいに頷いてるんだけど。
知らなかった……。
まあ、クソクの力ってのは見た目だけ誤魔化すタイプの力みたいだからおかしくないのだが、それにしても人と見分けられるってどうやって?
「それは検問をしているからできるようになったとかか?」
「いいえ。魔物ならば身につけている能力です。さすがにカイセイ様ほどの力ではありません。どこでもは無理ですが、魔物なら相手が人か魔物か感知することはできますし、目の前なら何か細工をされていてもほとんどの場合はわかりますよ? もちろん、ここ以外の者がどれだけ判別できるかはわかりませんが」
「なるほど」
となると、これまでクソクが冒険者として生き残れたのは、外の世界では鍛えられた魔物がいなかったからか?
あんなスキルで生き残れるってのはそういうことだよな。
しかし、クソクのスキルでも見抜けるほど魔王城に住んでいる魔物が優秀ならば、俺がわざわざやる必要もない。
「確か、これまでは弱っている者、助けを求めている者を入れるように言っていたな。今回のことは失敗じゃない。俺の命令が悪かった」
「そんな。それは違います」
「いいや。他の幹部よりも幹部である期間が短いのに、こうして俺を信頼してくれている部下の能力も把握できてないんだ。ここは俺の責任としてくれ」てくれ」
「誠にありがたいお言葉です。では、今後はどのようにすればよろしいでしょうか」
「この球に人が来たら魔力を流してくれ。そうすれば俺がここに来る。それまではとりあえずこの場に待機していてもらえればいい」
「かしこまりました」
「頼んだぞ」
「はい」
さて、これで次からは大丈夫だろう。
クソクの力は見た目だけ。魔王城にいるような相手は騙せない。
しかし、俺だって反応を確かめられなかったら人間だとは気づけなかったはずだ。
そう考えればクソクのような能力者や上位互換のような能力者ならばこれで問題ない。
あとは、クソクが言っていたように実力者がやってきた時だが、暴れ回られるとまずい。だが、それこそこの魔王城にいる者として俺が来るまでの間くらいは耐えてもらうことにしよう。一応、奈落に落としても無事なやつらがいることは実証済みだしな。
「しかし、魔物は見ただけで人とバレるのか。何にせよこれで新たな侵入者は防ぎつつ外からの受け入れもこなせるはず」
「やっほー。カイセイ君。何してたの?」
「レバレちゃん。仕事ですよ」
「真面目だねー」
呑気に俺に手を振りながら歩いてきた剣聖様。
俺の同僚、魔王軍の幹部だが、そういえばこの人その辺ほっつき歩いて時々ちょっかい出してくるだけで何を仕事にしてるのか知らないな。
「そういえばレバレちゃんの仕事ってなんなんですか? 先輩として教えてくださいよ。俺働きすぎだって注意されたんですよ。部下に」
「あー。人間やってると、ね。カイセイ君も勇者パーティの一員だった訳だしね。わかる。わかるよ。すっごいわかる」
腕組んでめちゃくちゃ頷いてるけど、この人は微塵も働こうとしているように見えないがな。
「ボクの仕事はね。指導教官って感じかな?」
「指導教官?」
「そ。戦闘訓練をつけてるの。一応、実力を買われての幹部だからね」
「なるほど?」
そんな風には見えなかったが、まあ、才能だけで過去の英雄としての実力を維持できるとは思えないし、嘘ではないんだろう。
でも、俺に色々と絡んでくるのに指導教官か。
「今、疑ってるでしょ」
「いいえ」
「いいよ? カイセイ君も鍛えてあげよっか?」
「今までの戦績覚えてます?」
「カイセイ君には必要なさそうだね」
ひよってそっぽを向くレバレちゃん。
相性が悪いからね。仕方ないね。
「ま、これでもボクは働いてる方だよ? 他の幹部は仕事を分配するのが仕事みたいなところがあるから、ボクより自由に見えるだろうし。カイセイ君も慣れていくといいよ。ボクも実力が違いすぎるし、そもそもカイセイ君の壁があるから、別の仕事を考えるよう魔王様に言われてるしね」
「なるほど」
「ほんじゃ。お仕事頑張ってね」
「はい。ありがとうございました」
テキトーに手を振って歩いていくレバレちゃん。
確かに俺はずっと冒険者だった。
王侯貴族のように誰かを馬車馬のように働かせることには抵抗があるが、俺を信じて働きたいと言ってくれている者たちがいるのに俺が仕事を奪うのもいかがなものか、ということか。
スキルの一部をどうにか分けられたりするといいんだが、要検討だな。
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「クラス転移でハズレスキルすら出なかった俺、山に捨てられる〜実はここまで俺を独占したい女神の計画通りらしく、スキルを超える『溺愛』の権能を与えられたので、悠々自適に暮らします!〜」
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