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98 今後の事を考えましょ

 病院へ出勤した私は迷惑を掛けた人達にまずは謝罪行脚です。特に坂本さんには状況の説明もキチンとしました。誤解されて変な噂が広まるのも怖いですからね。


「なんか大変だね。時々ドラマとかで有り得ない親族とか見るけど、真面目にそんな人いるんだ」


「うん、居るんですよね。一応絶縁しているので、他人事みたいに言っちゃいますけど」


 私の話を聞いた坂本さんは、何とも言えない表情でコメントします。でも、中村さんの周りの人達とか、加納さんとか、意外にドラマで見るような人達って居るような気がするのは私だけでしょうか?


 その後も、場合によっては病院を欠勤や早退する可能性もある為、院長を含め上長に当たる人達には一通り説明をしました。幸い皆さん同情的だった為、特に問題も無く話は終わります。


「まあ、実際に迷惑を掛け始めたら、雰囲気も変わるんだろうけどね」


 前世の仕事場でもありましたけど、人って自分に実害? が無い時は非常に寛容です。でも、一転休みとかが続くと次第に態度やら何やら変わり始めたりするんですよね。


 今回の場合、被害はあくまでもお祖母ちゃんなので直接私が動くことはあるかな? 何がどう転んで私に降りかかるかは判らないですから油断はできませんが。


 そして、お昼時間にお母さん達の携帯に電話を入れました。

 その頃には、事情聴取も終わっていて、ファミレスでご飯を食べている所だったみたいです。


「うん、その方が良いよ。お祖母ちゃん一人にしておくのも問題だし、うん、了解」


 午後からお祖母ちゃんの家に行って、何か壊されていないかなどの現場検証があるらしい。その際の立ち合いは、顔見知りの近くの駐在さんがするそうで、気持ち的にはずいぶん楽みたい。まあ、物損などの被害が確認されたら、また面倒になるそうですが。


 あと、今日はお祖母ちゃんはこっちに帰って来るそうです。私達としても、こういう事があると不安ですので、何とかこの機会に一緒に住めないかお祖母ちゃんを説得する予定。


 そんな感じで慌しく過ごしていると、夜に従兄の和夫さんから電話を貰いました。ちなみに、今日何かと疲れたお祖母ちゃんは、客間で既に就寝しています。


「そうですか。でも、暴力を振るわれていたら、そうなるかもしれませんよね。はい。いえ、ご連絡ありがとうございました。此方も気を付けておきます」


 電話を切ると、思わず溜息が零れました。


「どう? 何か言ってた?」


 向かいに座っていたお母さん達が、心配顔で私を見詰めます。


「私達と言うか、和夫さんが大変そう。何か実家に帰ってこいって煩いらしい。次郎君はまだ拘留中らしいけど、戻って来たら何をされるか不安だから一緒に住めって。実家へ戻るってなると通勤できないし、現実的じゃないらしいのだけど、家族が心配じゃ無いのかとか言い出して話にならないらしい」


 私を含め、みんなが何とも言えない表情を浮かべます。その情景が何となく見えちゃうんですよね。ただ、和夫さん的には両親や弟の事になりますし、それでいて一緒に暮らしても自分の奥さんや子供には絶対に良い影響を与えませんから。


「面倒事を抱えるようなものだから、奥さん的には絶対に嫌よねぇ」


 次郎さんの事が無かったとしても、あそこの家で暮らしたくは無いですよね。


「俺が家に電話しても意味無いだろうなあ。親父達は俺の話なんて昔から聞きもしないからなあ」


「お父さん、絶対に連絡しないでね! 巻き込まれるだけで絶対碌な事にならないよ!」


 お父さんがそう呟いたので慌てて止めます。そりゃあお父さんにとっては両親であり兄弟なのかもしれないけど、私達にとっては赤の他人より遠いというか、関わりたくない人達です。


「そうね、そもそもこっちは被害者よ。絶対に関わりたくないし、変に連絡先とか知られたら面倒」


「そうは言うがなあ。何か出来る事があるんじゃないか?」


 お父さんの表情には純粋な心配の色が見える。だけど、本来なら全く関係のないお祖母ちゃんが巻き込まれたって事は、あちらは私達の事を絶対に良く思って無いと思う。


 だって、普通じゃ無いよね?


「今回の事件って、なぜ四日市のお祖母ちゃんが巻き込まれたか判らないんだよね? だけど、そもそも私達の事を脅せばお金を出すとかって思って無いと、お祖母ちゃんにお金を無心に来るなんて考えられなくない? 普段からあっちの家族でそんな事を話してない? 絶対におかしいよ?」


「そうね。今までだって酷い対応をされて来たもの。ねえ、だから絶縁したのよね? 次は日和達に被害が及ぶかもしれないのよ?」


 私達の言葉に、お父さんは俯く。


 私は、お父さんがあっちの家でどう育ってきたのかは知らない。若しかすると幼少期は仲の良い家族だったのかもしれないし、楽しい思い出もいっぱいあるのかもしれない。それでも、私にはそんな記憶は欠片も無い。


「お父さん、ごめんね。でも、あっちの家の思い出って良い事が全然ないの。あれだけ馬鹿にされて、ずっと下に見られて、何で私達が助けないと駄目なの? 自業自得じゃない?」


 お母さんは黙って私とお父さんを見ている。そして、考え込んでいたお父さんが顔を上げて私を見た。


「そうだな。今こうして幸せに暮らせているのも、お前たちのお陰だしな」


 う~ん、これには何って答えて良いのか判らない。うん、私達のお陰だよっとは言い辛いですよ。


「伯父さんや伯母さんがどうするのかだよ。今まで家族としてどう過ごして来たか、これからどう関係を作っていくかだと思う。次郎さんが今後逮捕されるのかは判んないけど、自分がやった事の重大さは理解しないと」


「そうね。それ以上になぜうちの実家を巻き込んだのか、そこはキチンと弁護士さんに聞いてもらうわ」


「うん、そこ重要だよね!」


 私とお母さんの言葉に、お父さんはまたしょぼんとしている。ただ、お父さんはやらかしそうで怖い。何せ今も私達の会話を何とも言えない表情で聞いている。


「お父さん、何かある?」


 承諾無しに何かをされる方が怖いんですよね。


「その、なんだ。出来ればなんだが、前科とかが付かない様には考慮してあげられんか? 前科が付いてしまえば生き辛くなる。更生できるものも出来なくなる」


「でも、それってうちがって言うより、あちら様の方がよね? お母さんの家は壊された物は無かったから脅迫罪が立証できるかだし。大声で騒いでいたのをご近所も、茂子さんも聞いているから証言には事欠かないと思うけど」


 そうなんですよね。お母さんが言う通り我が家の訴えでは結構微妙な所なんです。警察の人に聞いた感じでも、良くて罰金刑? 最悪は厳重注意かも。


「和夫さんの話だと、最初は暴力を振るうような息子など怖くて一緒に暮らせない。刑務所でも何でもとっとと行けば良いって騒いでいるみたい。でも、冷静になったら判らないけどね」


「そうだなあ。親父よりお袋の方が近所の目とか気にするだろうし、恐怖が薄れればコロッと態度が変わるかもな」


 今の段階では不明点が多すぎますからね。それに私達の目下の問題は、四日市のお祖母ちゃんを如何にして説得するかなんです。今回の事を期に一緒に暮らそうって説得中。お祖母ちゃんも怖い思いをした事もあって、今までとは違い話を聞いてくれる傾向にあります。


「問題は実家よね。田圃は貸せばよいけど、実家をどうするかよ。貴方達だって将来、あそこに住むつもりはないでしょ?」


「うん、お姉ちゃんも無いと思う」


 あそこはお祖母ちゃんの家であって、暮らした事の無い私達にとって愛着があるかと言われると困ります。勿論、お母さん的には生まれ育った家だから愛着はあるでしょう。でも、暮らした事の無い私達にとっては言い方が悪いかもですが、旅館と変わらないと言いますか。


「そうよねえ。まあ、お母さんが存命の内は売るつもりは無いけど、いずれ考えないと駄目よね」


「人が住まなくなった家は荒れるって言うしね」


◆◆◆


 そんな会話をした数日後、次郎君が釈放された事を知らされました。想定内ではあるんですが、伯父さん達は訴えを取り下げたそうです。その為、今まで拘留されていた次郎さんは釈放されました。


「まあ、そうなるよね。でも、釈放後にどうするんだろ? 一緒に住むのかな?」


「多分そうじゃないかしら? 次郎君としても突然出ていけって言われても困るだろうし」


「え? あそこの家なら平気で追い出しそうだけど」


「家族なのに悲しいわねぇ。次郎君が可哀そうに思えるねぇ」


 お母さんとお姉ちゃん、そして私とお祖母ちゃんの4人で久しぶりに買い物に来ています。そして、お昼に大きなエビフライで有名なお店でご飯を食べていました。そんな中で和夫さんから保釈の第一報が届いたんです。


「お祖母ちゃん、もし何処かで出会っても変に同情とかしないでよ?」


「今どきだと平気で人を刺したりする事件とか有るんだから」


「そうよ、お母さん。昔とは違うんだから」


「そうねぇ。まあ、気を付けんといかんね」


 私達の言葉に笑いながら返事をするお祖母ちゃんだけど、ちょっと心配になる。


「あ、それと、今度私の所で一通り検査するからね。来週の水曜日に予約とったから」


 お姉ちゃんの勤めている柴田医院で、お祖母ちゃんの健康診断をする事にしました。市からの無料健康診断はちゃんと受けて来てるのですが、丁度良い機会でもあるので一通り検査する事になったんです。


「日向ちゃんのお勤めしている所かね。そりゃあ安心だ」


 うん、何と言っても80歳を過ぎていますからね。女性の平均寿命が88歳とはいえ、健康寿命とは違いますから注意は必要です。それに、未だに畑の事を気にしているし、可能なら実家へ帰りたいというお祖母ちゃんを引き留める為の検査だったりするんですよね。


「このまま穏やかな日常に戻ってくれると良いのだけどなぁ」


 思わずそんな事を呟くと、お母さんに頭をぺシリと叩かれました。


「変なフラグを立てないの」


「え~~~、理不尽」


 ふくれる私をお姉ちゃん達が苦笑を浮かべて眺めているのでした。


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― 新着の感想 ―
父よ…いらんことしたら遠ざかったはずの離婚の可能性が鎌首をもたげるぞ…。 しかし向こうの人たち、和夫さんに向かって「家族が心配じゃ無いのか」って厚顔無恥だな…。心配されるような家族をやれていない自覚が…
ここから向こうがとんでもない事を言い出したりして?
幼少期から実家で虐げられてたり兄弟格差のある家で育った人って、親からの愛情に飢えていた人が多いから、どれだけ実家の連中がクズでもなかなか切り捨てない人が多いんだよねぇ……。
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