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月と魔導書②

 イーグレットが放った光の矢は通常の矢とは比べ物にならない速度で飛来する。

 ただの矢ではなく神器の効果によって生成された物。性質が不明である以上、斬り払うのはリスクが高い。

【強欲の魔導書】を【暴食の魔導書】に切り替える。


「【疾風強化】」


 風属性の身体強化魔法を使う。無属性の魔法より速度に特化した身体強化魔法を使った上に【縮地】でその場を離れる。

 すると直前まで私が居た場所が炎に包まれる。

 やはりただの矢ではなかったか。

 イーグレットの魔法適性は炎属性、おそらくヒルデの【泡沫の蝶】の様に魔法を込める事で効果を高めるタイプの神器だろう。

 イーグレットは回避した先の私に再び光の矢を放つ。

 今度は複数。連射も出来るのか。

 雨の様に撃ち出される矢を【縮地】と体術を織り混ぜながら躱し、避けられない物だけを同属性の魔法をぶつけて込められた魔法が発動しない様に打ち消す。


「同量、同属性の魔力で魔法の構成を崩壊させたのか。器用な事をするね」


 楽しげなイーグレットは更に矢の数を増やす。

 アリスやシスティアに流れ矢が行かない様に気にすると如何しても行動範囲を制限されてしまう。

 イーグレットもそれはわかっているのか、次第に逃げ道を塞がれてしまう。


「キミのその神器。実に素晴らしいね。だが、その性能には限界が有る。

【暴食の魔導書】と言ったかな? 能力は他人の魔法をコピーする。それも適性のない属性の魔法までコピー元の術師と全く同じ性能で使え、連射も可能。

 強力な能力だが……その神器は魔法を連続で放つ時にタイムラグが有る。

 見た目に派手な魔法や、攻撃範囲の広い魔法で上手く誤魔化している様だが、実際には完全な連射では無く、魔法と魔法の間に約5秒の間隔が空くのだろう?」


 バレている。

【暴食の魔導書】の欠点。今のようなギリギリの戦いの中ではこの数秒は大きな隙になる。

 イーグレットが弓を引き絞り、面制圧する様に私の逃げ道を塞いだ。

 ……ダメだ。間に合わない。


「【氷壁】」


 仕方なく分厚い氷の壁を作るが、突き立った矢が次々に爆発して砕かれる。


「うぐっ!」


 爆風で飛ばされ壁に叩き付けられた肺の空気が吐き出されて一瞬動きが止まる。

 今度は炎魔法ではなく爆発魔法か。

 地面を転がる様に追撃の矢を躱す。

 もう、魔法を打ち消す余裕は潰されてしまった。

 その上、私が攻撃として放った魔法を今度はイーグレットが発動時の構成の甘いタイミングで射抜き破壊する。魔法発動の順番を見切られている様だ。


「ほらほら、どうするエリー?」

「……こうするわ!」


 そう言うイーグレットに向かって【暴食の魔導書】のページ2枚を破り取って飛ばす。


「【蒐集開放:白炎】【蒐集開放:岩棘】


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