月と魔導書①
イーグレットが神器であるシャムシールを生成した。
両手にシャムシールを構えたイーグレットは私を殺すと宣言した。
それと同時にアリスを中心に黒い魔法陣が発現した。
「これは……」
あの空へと伸びる黒い光と同じ光だ。
「この魔法陣は精霊城への扉を開く物だ。後はエリーの血を加えれば完成する。
アリスは命と引き換えに新たな神になるんだ!」
「ふざけた事を!」
怒りを吐きながらも頭の一部では冷静に冷静に周囲の魔法陣を観察する。
どうやらこの魔法陣はアリスの魔力を起点にイーグレット自身が展開しているみたいだ。
詳しく調べる余裕は無いが、魔力の強制吸収と私の知らない未知の魔法が発動している。
未知の方はおそらく奴が言っている精霊城とやらへの扉を開く魔法だ。そして強制吸収がアリスの魔力を吸い取っている魔法だろう。ならば……魔法陣を制御しているイーグレットを倒せばこの魔力吸収は止まると言う事だ。
「システィア、依頼よ。アリスを守って」
「……私は高いぞ。必ず生きて払え」
「ええ」
アリスをシスティアに預けた私は、フリューゲルを手に前にお出て、左手に魔力を集める。
「神器【暴食の魔導書】」
私と対峙したイーグレットは嬉しそうに両手のシャムシールを交差させて踏み出す。
「はっはっは!」
「【炎壁】」
私とイーグレットの間を業火の障壁が遮るが、イーグレットは一切速度を落とす事なく炎の中に飛び込み、一刀で炎を切り裂きながら突き抜けた。
「【暴風】【雷撃】」
続いて放った魔法もイーグレットの神器で斬り払われる。
「魔法の切断……違うわね。魔法を構成している魔力自体を斬っている!」
魔法により引き起こされた現象ではなく実体がない魔力を斬っていると言うことはそれがあの神器の能力か。
「神器【強欲の魔導書】」
魔力を斬れるなら暴食の魔導書は相性が悪い。
私は強欲の魔導書に収納している物の中から剣を取り出す。
魔法武器では無いが、非常に上質な剣だ。それを斜めに構えて右手のシャムシールを受け流し、流れる様に繰り出される神器による二撃目を屈んで躱し、フリューゲルで脚を払う。
イーグレットがフリューゲルの刃を砕く様にシャムシールを突き下ろしたので、フリューゲルを止めて体を反転、その場で転がる様に立て斬りに切り替える。
【縮地】で後退したイーグレットは神器を掲げる。
「神器【弓張月の夜】」
シャムシール型だったイーグレットの神器が形を変えて弓となる。
「二つ目の神器⁉︎」
いや、私の【七つの魔導書】と同じ複数の形態を持つ神器か!
イーグレットは矢を番える事なく弦を引く。すると周囲の魔力が光の矢となり放たれた。




