第十七章:ゼロアワー
「気づかないうちに、もう一か月も経っていた……。今頃、カネキは何をしているんだろう?」
豪華な屋敷の窓からぼんやりと外を眺めながら、ヒナタは独り言のように呟いた。
優しいノックの音が彼女の思考を遮り、専属のメイドが部屋へ入ってきた。
「お嬢様、朝食のご用意ができました。」
ヒナタはかすかに微笑んだ。
「分かったわ。ありがとう。」
メイドは一瞬ためらった後、その表情を深い職業的な心配へと変えた。
「お嬢様……率直に申し上げることをお許しください。私はお嬢様の事情を十分理解しております。しかし、カネキという人物にご自身の信頼と貴重なお時間をすべて委ねるのは、非常に危険かもしれません。特に、彼が私たちが手に入れた銃器を使って、明らかに危険な行動を起こそうとしている以上は。」
ヒナタは視線を落とした。
その瞳には、揺るぎない決意が宿っていた。
「心配しないで。私も、自分が大きな危険に直面するかもしれないことは十分理解しているわ……。でも、これが私の状況なの。だから、受け止めるしかない。」
一方、街の反対側では、俺の小さなアパートにまったく違う空気が漂っていた。
「新しい生活習慣を始めてから、正式に一か月が経ったか……。」
俺は運動靴の紐を締めながら呟いた。
机の上に置かれたカレンダーへ視線を向ける。
「来週から新学期が始まる。高校二年の学習内容に向けて、そろそろ学業面でも準備を始めるべきだな。」
時間は冷たく、容赦なく過ぎていった。
一週間後。
夏休みは終わり、俺は再び、見慣れた無機質なAクラスの教室へ足を踏み入れていた。
「去年のクラスメイトの大半は、Bクラスに落ちていない限り、まだここにいるんじゃないか?」
キハラは机の列を軽く見渡しながら言った。
「それに、新しいクラスメイトも何人かいるみたいだな。去年かなり高い成績を取ったらしく、下のクラスから正式にこの特別なクラスへ移ってきたらしい。正直、歓迎すべき変化だと思う。」
俺はその会話を完全に無視し、スマートフォンの画面だけを見つめていた。
プライベートチャットを開き、ヒナタへ短く、慎重に考えたメッセージを送る。
【約束を果たしてくれ。俺たちのあの取り決めのことだ。】
ほとんど即座に返信が届いた。
【分かったわ。すべて、私たちが約束した通りに処理する。】
【どうしてそんなに早く返信できた?】
すると彼女は答えた。
【えっと、ふふ……ほら、こうなると思ってたのよ、ふふ……】
俺がスマートフォンを閉じようとした時、一人の女子生徒が近づいてきた。
彼女は好奇心と疑念が入り混じった表情で俺を見ていた。
「ねえ、カネキ。どうして夏の公式イベントや活動に一度も参加しなかったの? あれ、私たちの記録にとってすごく重要だったのに。」
「ひどい胃の病気にかかっていた。」
俺は冷たく答えた。
その声には、完璧に作られた無関心さが滲んでいた。
「ああ、そうだったの。分かったわ。答えてくれてありがとう。」
彼女は頷くと、自分の席へ戻っていった。
数週間は数か月へと変わり、学校での生活は俺自身の日課と自然に混ざり合っていった。
十月になる頃には、俺の寝室はまるで指揮室のようになっていた。
壁には詳細な計画書、観察記録、整理された予定表が並んでいた。
「準備は完璧だ……。だが、まずこれらの計画書を処分しなければならない。」
俺は最終的な資料を見つめながら呟いた。
この二か月間、俺は施設の周辺について細かく観察を続けていた。
人員の交代時間。
部下たちの動き。
そして、特定の区域がほとんど人のいない状態になる時間帯。
それだけではない。
そこで働く人間たちのことさえ、把握していた。
明日。
午後九時。
夜の空気は鋭く冷たく、厳しい冬の匂いを運んでいた。
午後九時ちょうど。
俺は事前に考えていた経路を進んだ。
余計な疑いを残さないために。
やがて俺は、深い木々の影の下に立ち、厳重に警備されたFCIの施設を正面から見つめた。
コートの下には、この行動のために持ってきたものが隠されていた。
さらに、自分の顔を誰にも見られないようにするため、マスクも用意していた。
俺は静かに構え、すべての準備を整えた。
「ずいぶん長い時間が経った気がするな……。」




