第十四話 決戦
私が突入したときにはすでに彼の手中の中で、ヴェルツバイを殺したあの雪原の建物まで飛ばされていた。近くには底知れない大穴があって、今にも私たちを飲み込みそうなそんな気がした。
ヴェルツバイは佇むだけで、何も話さないし、何もしようとしない。ただ、私を誘拐したいだけだったのか。一番の脅威を私と判断したのか。おそらく、死んでほしくないのかもしれない。彼から私のイメージはずぼらでひ弱な研究者ってイメージだと思うから。
ただ、もうそれほど弱くはない。あの剣を作って使えるほどにね。
「ねえ、ヴェルツバイ。あなたを殺したのは私だよ。復讐でもしに来た?」
彼は答えない。ただ、一つあるものを取り出すようにして、それは私がメイールに挙げたあるものだった。不器用ながらもちょっとずつ作った自作のペンダント。それをこれ見よがしに見せつけて、ただ一言こういう。
「マスター。やり直しませんか。一からとは言いません。ただ、旧文明の人々を救いに。」
「それは、今ある文明をなくしてってこと?」
「ええ、もちろん」
うつむいていた顔をゆっくりと上げて、彼はそう話す。一点の曇りもないただ一つの願いのように。ただ、私はもう、旧文明にとらわれてしまっていない。強欲と言われようとすべてを救いに行く。
「ヴェルツバイ。私はね。もう旧文明には囚われていないんだ。だからさ、現代も古代もそのすべてを背負い、私が救おう。救世主として世界に救済を作ろう。」
「美しいですね。マスター。だけれど私ももう引けないんですよ。だから」
彼も肩のところから剣を抜く、もはや話す余地はないかのように剣を掲げてこちらに剣先を向けてくる。私も彼に呼応するように剣先を向けて佇む。
「ヴェルツバイ、君がしたいことはもうわかった。だからこんな茶番すぐに終わらせてあげる。」
「茶番、そんなのに見えるのならマスター。その身をもってわからせてあげましょう。」
即座に、鍔迫り合いに持っていかれる。ヴェルツバイの突撃は思った以上に重く、まともにやり合えばすぐに音を上げるのは私だろう。だが、この剣は灰生物、および造物特攻兵器。少しでもかすれば致命傷間違いなしのチート級の装備だ。
もちろん彼もそれをわかっている。だから、何とかして一撃も食らわないように尽力している。
剣と剣がぶつかり合う甲高い音を奏でながら、私たちは切り合っている。だけれども、何かがおかしい。ヴェルツバイには私を殺そうとする意志が全く構見えない。私が致命的な場所を狙うのに対して彼は足や手などの切ってもすぐには死なない場所ばかりだ。
「ヴェルツバイ。あんた殺す気ないでしょ。」
「さてどうでしょうか。」
一度鍔迫り合いを解いて、互いに距離を取る。このままでは埒が明かない。それに、この寒さだ少しづつ不利になっているのは私だろう。現に、手の震えが少しあって、剣先がぶれてしまっている。
こんなに剣を振ったのも前世いらいだから腕も疲れてきた。それに対してヴェルツバイは一切の疲れを見せていない。このままやり合ってもすぐに私は彼に無力化されてしまうだろう。だからだ。
「ヴェルツバイ、残念だけど終わりだよ。」
そう言って剣先を彼に向けて、突撃する。彼は受け流すこともなく、剣ごと叩き伏せようとしてくる。そう、ヴェルツバイなら避けようとしてこないと思った。だからこれで終わりなんだ。
予想通り、ヴェルツバイは剣をはじくために大きく上に剣を振って無防備になってしまう。だから、そこに
「これで終わりだよ。」
ある拳銃を叩きこんだ。今回の潜入作戦で必ず、ヴェルツバイと戦うと思ったから造物にしか効かない強烈な麻酔薬を作ってそれを弾丸に込めた。これほどまでに近い距離なら銃の扱いに慣れていない私でも叩き込むことができる。
力なく倒れこんだヴェルツバイにゆっくりと近寄り。
「さよなら、今度は人間として会おうね。」
そう意識のないヴェルツバイに対して話しかけて、彼の首を飛ばした。私は彼の体に剣を突き刺してそのまま消滅させる。それとともに研究室の一角にある建造物に彼の頭を入れておいた。すべてが終わったら彼を。
「じゃあね。ヴェルツバイ。次はもっと」
言いかけたが、一つ問題が、ここからどうやって帰ろうか。少なくとも1週間は歩かないとここから抜けられない。あれ、これどうすればいいんだろう。そう思っていた矢先なのだが今から爆速で駆け抜けられるものを作ればいいとそう思い。
とりあえず、暖房をつけて作業に取り掛かることにした。少なくともここに来るまでに使っていた昔の奴が何か残っているはずだからそれを再利用すれば何とかなるはず。今から作って、帰るとすると少なくともここで一日は過ごさなければならない。
「まあ、天才の私ならすぐに終わるか。」
私は研究所を探検してみているが、どこも埃っぽいし、何より懐かしいと思うほどに作りに見覚えがある。きっとここはヴェルツバイが作ったのだろう。私の趣味嗜好にあっている。正直に言うとここに住めるくらいには。
「ただなあ、ここ極寒なんだよな。もともとの私には厳しいところだよ。」
思わず独り言がこぼれてしまう。早く、皆と会いたいな。そんなことを思いながら見つけたある車を見つけたからこれを改造すれば帰れるだろう。だけれどもみんなはちゃんと生きているのだろうか。空を飛んでいきたいほどに心配になってきた。




