特殊3話 帝国騎士団団長 side グラージス
「失礼します。団長、連れてきました。」
伝令兵から連れてきてもらったのは帝国騎士団団長だった。彼とは救国以来の再開となる。前は一緒にキメラの掃討をしていたからな。懐かしい、救国都市陥落事件が起こる前は様々な国が協力して灰生物に抗ってたものだ。
ゴツイ鎧を着たまま、中に入ってくる。早く帰りたいと心から思っているのだろう。せっかちなのはあまり変わらない。
「失礼します。お久しぶりですね、グラージス団長。」
「事件以来だな、グラハム団長。」
彼は少しよそ見をするように目線をそらす。事件で失ったのは先代の救国騎士団団長だから私が団長になっていることにも、事件を口にしたのも彼にとってはあまり聞きたくないことだろう。あの時、帝国が来られたらと思うことはあった。
「過去のことはまた今度。議論すべきは統一国家についてでしょう。」
「そうだな。帝国にも宣戦布告は届いたか?」
「当然です。その上、私たちの偵察部隊の一つが壊滅させられた。だから帝国は強力なアーティファクトを持っているあなた方に尋ねに来たんですよ。」
「そうか、それは残念だったな。まあ、立ち話もなんだ座ろうか。」
返事もせずにすぐに行動に移そうとする。ただ、鎧が邪魔なのかその場で脱ぎ始めたのだ。中に鎖帷子を着ているからだろう、さらに下に何かを着ているだろうから心配していないのだろうが。
「さすがに座りづらいね。すまない鎧は隣に置いとくよ。」
「はあ、まあいいだろう。話の続きをしようか。」
彼が座った時に私は机の上にあったいつも使っているケトルから紅茶を作り、彼に渡す。私の分も目の前で作り、彼からも安全であると示そうとする。だが、それをする前に口につけていた。まったく、昔馴染みだからって警戒心死んでいるのかこいつは。
「昔と変わらない、おいしい紅茶だね。」
「そりゃありがとう。けど、警戒したほうがいいんじゃないのか。」
「君はそんなことする?」
「しないけどさあ。」
「じゃあ大丈夫じゃないか。」
余裕綽々みたいな態度が鼻につくがこれも彼なりの敬意なのだろう。互いに少し紅茶を飲んでから再び話し出す。
「単刀直入に言う、どこまで奴らについて調べた。」
「そうだね、古代兵器のような強力なものを持っていることくらいしか」
「我々と大して変わらないか。」
彼とは話していても統一国家のことについてはあまり知ることができないだろう。だから、あの子を呼ぶしかないか。断腸の思いでこの場に彼女を呼ぶことにした。少しだけ待っていてくれと言ってその場を離れて、ルスベリーに呼ばせに行った。
今この時間であれば彼女は”研究室”にいるだろうから呼んできてくれと。いつも雑用を任せてばかりだが、大体の仕事が外での任務だからここにいるときには雑用を任せるときもある。
「待たせた、今古代文明に詳しい人を呼びに行ってもらっている。」
「それじゃあしばらくは暇かい」
「そうなるな。」
ここから研究所は5分もないが、暇なのは変わらないだろう。彼の目の前で書類仕事をするわけにはいかないからな。彼もそれを察してか、少し、口を開けた。
「久しぶりの再会だからさ、昔ばなしでもしようか。」
「何を話すにしても、いい思い出はないぞ。」
「何、ちょっと聞きたいことがあるだけだよ。君が昔いた、村について。」
こいつそれ今言うか。紅茶のカップを落としそうになる。それを見てこいつは笑っていやがる。はあ、言いたくないとあれほど言い続けたからな。今となっては何も覚えていない。
「残念だが昔のこと過ぎて覚えていないぞ。」
「そう?君なら覚えていそうなものなのにね。」
「最後に、村について知っているのは」
そう言いかけた時に、ドアをノックする音がする。私は話をそらすように許可を出して中に入ってもらう。そうして中に入ってきたのは私の可愛い子供になってもらったシアハだ。
「失礼します。団長お呼びでしょう...」
「どうした?」
シアハの顔がどんどん青ざめていく。なんだろうかそんな帝国騎士団団長が怖いのだろうか。そんなところも可愛いと思うのだが、どうにも違いそうだ。シアハは震える唇を抑えるようにしながら顔を隠してしゃべり始める。
「団長、その人は誰ですか。」
「失礼、挨拶が送れたね。私は帝国騎士団団長グラハムだよ。今回、帝国と救国騎士団において統一国家の対策について話し合いに来たところだよ。」
警戒態勢に入って、今にも戦闘が始まるのではないかというほどの殺気が飛び出る。
「団長、あの手帳を見たならこいつについて知っていると思います。」
ああ、そうか。帝国に攫われそうになって、ガベーラントとアネモネがいなくなり、造物によって私がきえて、彼にルスベリーを殺されたからか。そりゃあ、警戒もするか。だが、この場ではどうにかして矛を収めてもらわねばならない。一刻を争うからな。
「シアハ、今は緊急事態だ。募る念はあるかもしれないが、少しだけでいい。彼と私に統一国家について教えてくれないか。」
シアハは黙るようにして、一言。
「これは全部独り言だと思って聞いてください。」
「あそこには皇帝がいます。そいつの目的は大陸の統一。さらに、様々な研究者が作った兵器が大量にあり、防衛兵器もたくさんあります。」
「だけれども、あれって完成品じゃないんですよ。だから設計図さえ取りに行けば何とかなります。」
「というわけで先輩、ちょっとお使いに手伝ってくれませんか。」
「うへぇ!びっくりした。こっちに話飛んでくると思わなくて、いいよ。行こうか。」
「では失礼しました。」
早口でぱっぱと退散してしまった。どうやら相当彼に恨みを持っているそうで。
「えと、俺ってそんなに嫌われるようなことしたかな。」
「顔が怖かったんじゃないか」
「そりゃひどいって。」
「まあ、後で教えてやろう。すべてが終わった後にな。」




