第十一話 真実はいつも辛いね
耳に突き刺すような雄叫びが聞こえる。みんなの勝利宣言がよく聞こえてくる。実際あの化け物は軽々止められるものではない。それこそ、私が特攻武器を持っていたから奴は一撃で瀕死まで持っていくことができた。
そして、造物が動いているということは確実にヴェルツバイが戻ってきているということになる。ヴェルツバイは私が殺したはずなんだけど。本来いないはずの私もいるからその前提は崩れてしまう。何かしらの要因か。それともヴェルツバイを仕留め切れてなくて、彼がわたしごと穴に落ちたか。
みんなが涙を流しながら抱き合っている。違うところでは、すでに酒の話をしている。団長にお礼を告げに向かう団員たちも多い。勝利ムードの中で私だけ心残りが大きくある。いや、それは違うかも。団長たちも旧帝国のことが頭によぎっているだろうから。
「シアハさん。どうしたんですか?」
「先輩...」
ルスベリー先輩が私の横まで来てくれた。なんだか、きょとんとした顔をしていてこの人もかわいい所あるだなと思いながら。ゆっくりとさっきまで考えていたことを話す。
「先輩。日記に書いてあったヴェルツバイを覚えていますか。」
「もちろんですよ。あの人が造物の原因ですよね。」
ああ、そっか。そこまでは書いていなかったか。
「ちょっと違うかな。あ、でもここで話すのはよくないかも。」
「わかりましたよ。それに、シアハさん疲れているみたいですよ。」
言われて気づいた。確かに思考が回らないし、何かと体がだるい気がしてきた。ルスベリー先輩が言っている通りに疲れてしまったのかもしれない。創造剣を使うのはもっと成長してからだったから。
「うん、先輩。部屋まで運んでくれるかな。ちょっと疲れちゃったみたいで。」
「はいー!いいですよ。」
なぜかウキウキのルスベリー先輩に連れられて私は自室まで戻ることになった。そのあとは身支度を済ませてすぐに寝ることにした。疲れがとれるかはわからないけれどそのままよりはましだろう。
寝て起きたら、すぐにラニウリさんから医療棟まで来てねと言われてしまった。体調不良というわけではなのだが、念のために私の体を調べておきたいとのことらしい。
ベッドから出て、身支度を済ませて出ようとする。だけれど、その動作すら重く感じて、体が動かしづらいのがよくわかる。それでも、前世で培った気合で何とか動いてラニウリさんのところまで向かう。
医療棟特有のアルコール臭に飲まれながら、ラニウリさんのところに向かう。道中、看護師さんが心配してくれたのか、肩を貸してもらい連れて行ってもらうことになる。
扉を開けるとぎょっとしたラニウリさんが慌てて駆け込んでくる。
「ちょっといいかな。」
そうしてラニウリさんは看護師さんから私を連れて行って、ベッドに寝かせる。すぐさま体温計を持ってきて、熱を測ってくれる。そんな熱があるような感じじゃないんだけどな。
だが、思ったより私の体調は崩れていたみたいで、体温計は38.0度を示していた。
そのあとは早かった。テキパキとラニウリさんが動いてくれて、どこが悪いのかを徹底的に調べてくれたのだが、原因はわからなかった。
「うーん。シアハちゃん。何か心当たりはある?」
「あります。私が初めて皆さんにあったときに持っていた剣を使って、造物に致命傷を与えました。たぶんその時に力を使いすぎたんだと思います。」
考えるようにして、
「とりあえず、寝ることかな。あとおなかすいたら教えてね。ご飯作るから。」
そういって彼女はベッドのカーテンを閉めて、お休みなさいと言って作業に戻ってしまった。それも、あまり音が聞こえないほどの静音でね。私はこれからどうしようかと考える前に、おなかがすいて仕方なかった。
作業に戻ってすぐで悪いけれど、ラニウリさんを呼んでご飯を作ってもらおう。
「ラニウリさん。ごはん食べたいです。」
「はーい。シアハちゃんちょっと待ってね。あ、雑炊でいいかな。」
「はい、大丈夫です。」
ここはすでにラニウリさんの生活スペースとなっているのか火の音と共に包丁で具材を切る音がする。それに、水を注いで、お湯を沸かそうとしていることや、ノームオイルを使った加熱器でインスタントごはんを温めているような感じがする。
意外とみんな生活能力があるんだなあと思いながら待っている。私は大体のことはメイールとヴェルツバイに任せていたからそういうのはまったくだな。多分料理してくださいって言ったら。火事になっちゃうよ。
そんなことを考えていたらカーテンを開けられて、ちょっとした配膳用のワゴンを手押しでこちらまで持ってくる。
「ちょっと熱いかもしれないから待ってね。」
そういってフーフーとスプーンですくった雑炊を覚まして食べさせてくれる。暖かさが体にしみわたって安心と疲れが取れるような感覚になる。
「おいしいです。でも、あーんはちょっと恥ずかしいかもです」
「ふふ、じゃあ、あと一回だけしてもいいかな。」
「一回だけですよ。」
彼女の作ってくれた雑炊は体にしみわたり、そのまま寝てしまった。なんだか、メイールみたいな世話焼きな人だったなと感じながら。




