第八話 統一国家
「おはようございます、ルスベリー先輩」
「おはようございます、シアハさん。もう歩けるようになったんですね。」
一週間ほどで治るほどには軽度だったぽい。足の怪我もそうだけれど、転生した瞬間から衰弱していたっぽくて前よりもずっと気分がいい。それに、行動する量も増えた気がする。ルスベリー先輩とは久しぶりに会った気がする。彼女、団長の用事がある?みたいなこと言ってしばらく姿すら見えなかったから。
「ルスベリー先輩、久しぶりですね。何していたんですか?」
「あー、」
誤魔化すように言葉を濁して、やり過ごそうとしている。いつも隠し事なんてしない彼女がそれでも言いたくないことって何だろうか。まあ、普通に機密情報でほかの人には言えないかもしれないだけだと思いたい。
何か、考え込むように腕を組んでしばらくした後に、ルスベリー先輩は話し出す。ゆっくりとね。
「そうですね。シアハさんになら言ってもいいかもしれないですね。単純に言うと私は一人で遠征に行っていたんですよ。」
「一人で?」
「ええ、そのほうが素早く行動できますからね。で、何をしに行ったかというと、現在存在しない何かしらの国家ができたと言うことで私はその存在を確認しに行ったんですよ。」
え?存在しない国家。そんなものはないと言い切れる。だって、私が前世ですべてを滅ぼしたときにそんな正体不明の国家なんていなかったから。詳しく聞いてみないことにはわからないか。
「えっと、その正体不明の国家はどこにあったんですか。」
「それがですね。帝国と救都の中間くらいの荒野にいたんですよ。それも割とこっち寄りで。」
居た?あったのほうが正しいのではないか。それに荒野。あそこは本当に何もなかったと思っていたからもしかしたら本当に知らないだけだったのかもしれない。
「とにかく、やばすぎる国家がここに来ようとしている。それは間違いないと思います。実際私が接敵した時にはこちらに向かってくるような感じがしましたし。」
「こっちに向かってくる?国が動いているんですか?」
「あー、ちょっと話過ぎたかもしれないですね。忘れてください!」
お辞儀をした後にすぐさまその場を離れて行ってしまった。とにかく今は何があったかを知りたいのだが、一体何から聞けばいいだろうか。ひとまず、私は食堂に向かってご飯を食べることにした。
食堂につくといつも通りの光景が広がってくる。いろんな団員たちがテーブルを囲んでご飯を食べているところだったり、何かしらの話で盛り上がっているところだったりと、まだ日常が続いていることに私は心が苦しくなる。
宣戦布告がされたことを公言すれば、この光景はすぐさま崩れ去るだろう。皆の空気は悪くなり、ご飯を食べる手もあまり進まないだろう。
「どうしよう」
一人で私はご飯を食べて、考えた先に一度研究所に向かうことにした。一応職場だからね。
いつものように扉を開けて中に入る。慌ただしい光景は変わることなくここはたとえ戦争が始まったとしても大して変わらないというか。逃げることも視野に入るかもしれない。ただ、研究するのが自分のやりたいことではなくて、兵器を作れるかどうかに代わるけど。
とりあえず、自分の部屋に行き、ルスベリー先輩の言っていた正体不明の国家について調べてみよう。
まずは歴史から見て何か該当しそうな国家がないか、それに準ずる組織はないかを調べてみる。過去の大事件で多くの国家は消滅して、組織単位の少数規模に落ち着いた。ある程度の国と呼べるものは残っているが、帰属意識がない集落や帝国くらいだろう。
私たちもしょせん亡国の残党といっても過言ではない。だから、そういうものがないかを調べてみる。幸いにもいろんな本を借りてここに置いてきているから何とかなるだろう。
興味深い何かに誘われて、私はふと外を見た時には違うことをお昼までしてしまっていた。一度切り替えてご飯を食べようと考えて扉の近くに来た時。
「シアハさーんいますか!」
ルスベリー先輩がおもいっきしドアを開けて入ってきた。当然私はその反動によって地面にたたきつけられる。あっぶないまっじで前世だったら死んでたわ。
「先輩。ドアはゆっくり開けてください。本当に」
「すいませんシアハさん、緊急のことでつい」
一応悪い自覚はありそうだったから今日はいいけれど緊急の要件はおそらく正体不明の国家だろう。
「緊急の要件って何ですか。」
「団長からの呼び出しです。応答しないと大変なことになりますよ。」
「大変なことって、まあ行きますけれど。」
「それじゃあ早く行きましょう。」
「ちょっと!」
爆速で担がれて私はルスベリー先輩によって研究所から誘拐されてしまった。前もあったけれど周りの視線がすごく痛い。
「とうちゃーく。」
団長の執務室の前までスパッとこれた。早いのはいいことだけどもうやりたくないよ。そんな思いを抱えながら中に入る。
「失礼します。ルスベリーです。予定通りシアハさんを連れてきましたよ」
「ご苦労。ルスベリーも座っていいぞ。」
中に入ると団長が座っているのとともに隣にはドークスさん、対面にはラニウリさんが座っていた。私はルスベリー先輩に連れられてラニウリさんと挟まれる形で座ることになった。少し窮屈だけれども落ち着くね。
「シアハ。早速で悪いがこれを見てくれないか。」
そう言われて、見せてもらったのはあり得ない映像であった。昔いた、私を殺した帝国の移動都市が、映像に移っていた。発作で倒れそうになるのを抑えて何とか保つ、なぜ。




