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第十話 最後の責任は

私たちが最後に来たのはかつて帝国が席巻していた凍土だった。そこにはあり得ないほどの広い凍土と氷原が広がっており、何もなく、生物の気配もない不毛の大地だった。だが、その虚無にそびえたつたった一つの建物と、地獄にまでつながっているのではないかと思うほどの救都ほどのとてつもない広い穴だった。


 本来なら鼻につくような強烈な冷気にされされて呼吸もままならないだろうが、私の作った剣ならばそんなことは些細なことになる。私の周りは常に空気に満たされていて、一定の温度に保たれている。多分、理論上天の底まで行っても生きていけるかもしれないが試したことはない。


 「ヴェルツバイ、データは取れた?」


 「もちろんですとも、これで世界を再構築することは可能ですよ。」


 「そっか、ありがとう。これで私の罪は消えなくとも、世界は回ってくれるかな」


 最後に私たちが行うのはこの世界が元に戻るように促すことだ。それも、私たちがいない世界を。もとをたどれば、私がこの装置を作り、ヴェルツバイに命令を下したところから始まっている。もっとさかのぼれば原因はたくさん見つかるだろう。


 だけれども、私が責任をとれるところと言ったらここまでだ。


 最後の工程を行うためにヴェルツバイを一度、離す。


 「ヴェルツバイ、生贄を放り込んでいって」


 「わかりました。マスター」


 ヴェルツバイはそう言って外に出て行ってくれた。生贄としてささげたものたちのみが次の世界で生きる権利を得ることができる。後、どこに回帰するかも決めておかなければならない。


 みんなが生き返った時がそれこそ文明と呼べるものが一切なかったら大変な思いをさせてしまうから。


 「そうだなあ。私が帝国に追放されたところから世界を始めようかな。」


 そう思い、目の前にあるチョー複雑な装置とにらめっこを開始する。それはそれは、現代には誰にも理解できないほど高度な技術で作られている。だが、これをしておかないと装置の起動すらできないようにしたはず。


 うっすらとした記憶とともに私は装置を動かしながら思い出していく。そうして、動かしているうちにふと考えが飛んで、気になることができた。


 「あれ?いつも持っている手帳がない。」


 日記やら今日やることやらをいろいろ書いてある手帳がない。背筋が凍る感覚に見舞われて、一度持ってきた荷物を確認するために持ち場を離れる。慌ててしまったのかずっこけそうになるけれどなんとか体勢を立て直して、荷物を見る。


 がさがさと中を漁って、物を取り出す。ポイポイと物を投げつつ、中を探索するのだが手帳らしきものはない。


 「やっばい。もし、保護シェルターの中に落としたら本当に大惨事になってしまうんだけど」


 だが、さすがにこの世界のどこかに落としたものを見つける装置なんてものはない。今から作ろうとしたらいったいどれだけかかることやら。だけど、どうせ死ぬんだからもう関係ないかと思い。思い切って作業に戻る。


 あれから、数時間もしないうちにすべての工程を終えることができた。もう、私たちはするべきことはない。ただ、己の罪を償うときが来たのだと。


 装置を起動するために外に出る。あいもかわらず、吹雪のごとく雪が吹き荒み、視界は相当悪い。だが、そんな視界の中でも、大穴はぼんやりと見える。その容貌は地獄までつながっているようでノームオイルでデコレーションされて赤黒く光っていた。底知れない悪意に満たされたかのようでこれからのことが心配になってくる。


 新世界でみんなは元気に生きていけるのだろうか。私のことは忘れてしまっていてもきっとどうにかして生きていけるだろう。


 すると、すっと、吹雪がやんで空が晴れる。ああ、時間を気にしないで作業をしていたからかすでに夜になっていたのか。夜でもきれいに見えるようにゴーグルをつけていたのがあだとなったか。


 夜空の星々はとても私達とは違く、昔見上げた空と変わらない。いつまでも、このままでいたと思わせるほどにきれいで、でもその永遠が残酷なのが伝わってくる。


 「マスター、準備はすべて終わりました。それでは私たちは施設に戻りましょう」


 「ああ、そうだね。ねえ、ヴェルツバイ。」


 「なんでしょうか」


 ヴェルツバイの返事を聞いた瞬間に私は。


 「マス、ター?」


 ヴェルツバイを殺した。この剣ならヴェルツバイを確実に殺すことができる。そして、剣を引き抜き、真っ赤なノームオイルにさらされる。もはやそれが細事であると言わんばかりに。


 「さようならヴェルツバイ。もし、地獄が会ったらそこで会おう。」


 そう言って私は自分の胸を剣で貫き。その場に倒れこんだ。もう二度と、こんな悲劇が起こりませんようにと願って。



 side ???


 「仕方ない、です、ね」


 マスターが胸に剣を突き立てその場に倒れる。その光景を見て、マスターは自分がいなければああならなかったと思ったのだろう。だが、それではマスターが本当に幸せになれるのだろうか。私はマスターの旧友と再会させたいと一心で動いていた。だが、それは間違いだったのかもしれない。だから私は。


 薄れゆく意識の中でマスターを抱えてともに大穴に落ちる。これでマスターも私も、新世界に行けるだろう。だから、罪を償うのは今度は私であるか。

ここまで読んで下さりありがとうございます!!!!!

次の章が最終章になり、ここまで書き続けたことに自分でも驚いているほどです。

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