特殊2話 私の最後が
そう、あの時。ヴェルツバイにもしも私が死んだときのことを命令したときだった。普段から変な轟音とかする研究棟だったがある時、おかしなことが起きた。私が一人で研究室にいるとき、なぜか皇帝直属の近衛騎士がやってきた。
「シアハさん。あなたにはノード爆弾を作った疑いがあります。」
あり得ないことを言って、中に入ってきた。
私が、殺戮兵器を一人で作ったと。本当にあり得ない。私が作ってきた、物は、人のために、誰かが少しでも楽になるために、そう思っていろんなものを作ってきた。発明してきた。ノード爆弾を作ることは理論上可能だけど。なんだか、彼らが決定的な証拠を持って私を裁きに来たように感じる。
「残念です。あなたが、王国に属しているとは思いもしませんでしたよ。」
「はあ?」
さらっと、いや信じてやまないように彼らには疑念の余地がないように衝撃的なことを口にした。私があの惨劇を起こすために行動したと言っているのか。私が生き延びたから疑っているのか。それとも、私を始末したいのか。
奴らは陣形を組んでいて、どう考えても逃げることは不可能だということがよくわかる。後ろの窓から飛び降りるのもここが四階だから下りたら死ぬだろう。だが、即座に殺すことはさすがにないはず、あったとしても公開処刑にして、見せしめにするはず。
”ここで私が助けに行ければよかったんですがね。”
”そんなこと言っても私が雑用を押し付けたから無理だったからね。”
空を飛びながら昔の話をしている。私はこの時に楽観的になり過ぎていた。ヴェルツバイが何とかしてくれると思っていたし、すぐに死ぬとは思わなかった。
「仕方ないですね。おとなしくしますよ。」
「そうか。じゃあ、」
そう言って、奴は私を拘束しようとせず、即座に剣を胸に突き立ててきた。そこからはもうわからない。驚きとともに奴らの邪悪な笑みとともに私は死んでいった。
”それでは私がその後のことでも話しましょうか”
それは、マスターの雑用を終えて、研究棟に戻ろうとしたときでした。町に人だかりがあり、何があったのかと思い私はそこへ向かいました。騒がしく、明らかに罵倒が多い声でした。なにか、暴動でも起きたのでしょうかと駆け足で向かったところ。
”そこにあったのはマスターが磔にされているところでした。”
虚ろな目に、胸から血がたれ、鮮血の匂いが立ち込めて、そこに一人の少女が暴徒をかき分けて飛び出しました。
”それって”
”ええ、マスターの予想通りだと思います”
”最後まで迷惑かけちゃったかな。メイール。”
メイールがマスターの足元に到達しようとしたときに、彼女は近くにいた兵士に殺されてしまいました。何を言ったのかは私には聞こえませんでしたがそれだけマスターを慕っていたのは間違いないでしょう。
”彼女との最後の会話は「もう無理しないでください。もっと自分の人生を歩んでくださいよ。」だったかな”
”当時のマスターはある装置を作るのに必死でしたからね。”
”最後、調整段階まで行ったのに殺されちゃったからな。”
”自分たちでも使えると皇帝が思ったのでしょうかね。”
私が最後に作ろうとした装置、それはノームオイルの真価を発揮させて、世界の根幹に入り、世界を作り直す。そんな夢のような装置だった。ある程度のデータがあればそれを再現するということなのだが、すべてを放り込んで作り直すとそれは新世界といっても過言ではないだろう。名前はティクバ。
そうして、なくなった仲間や、住めなくなった場所を元に戻せばこの世界は平和になると考えていたから。
”その後は私がすべてを破壊しました。当然、ティクバを動かすことは彼らにはできませんでした”
”私が今生きているのはヴェルツバイがティクバを動かしたから”
”そうですね。私がすべて壊した後にティクバを動かしましたですが、完璧ではありませんでした。データの保存しかできずに再現するのにあり得ないほどの時間がかかりましたから”
そっか、そうだよね。本来なら私は今、きっと旧友と囲まれて、幸せに生きていたのかもしれない。戦争もなくなって、ノードも治せるようになって、平和な世界に生きていただろう。だが、それは人が、人の悪意が許してくれなかった。たくさんの人たちが自分の利益のために行動し続ける限り、あの時はどうしようもなかっただろう。
もしだ、私が今の世界を捨てて、旧世界を復活させたとしても、その悪意に飲まれて死んでしまうのではないか。何より、また、戦争によってあり得ないほどの人々に不幸を振りまく魔王になってしまう。
まあ、すでに現世では全人類全滅させているから今世は魔王になってしまったのだけれど。私とヴェルツバイがなくなった世界だったら。
「マスター、到着しましたよ。ここが旧救都、最後にお別れでもしに来ましたか?」
上空からでもわかる崩壊した都市が目の前に広がっている。団長が守ろうとした救都だった。だが、ここですでに私たちが立て直すには崩落がひどく一から作り直すことしかできなかった。
そんな中、一つの建物の残骸に近づき、その瓦礫を吹き飛ばす。昔の私では考えられないほどの力を持って吹き飛ばすことができる。これが、あの時にと思考が反芻されてしまうが、そんなこと考えても戻らないものは戻らない。
「団長の剣を返しに来たよ。」
そう言って、団長室があったところのさらに下に近未来的な、廃墟にはふさわしくない何かがあった。その扉を開け、中に入る。錆びついて、かなり重い扉だったのだがヴェルツバイに手伝ってもらって開けることに成功する。
「ここはいったいどこですかね。」
「ヴェルツバイ、ティクバの影響を受けない状況って何だと思う。」
「ノームオイルに干渉されないですかね。」
「そういうこと、これはノームオイルが全く効かない。昔作ったものだよ。本来は私の記憶を引き継ぐための剣を保管するためのものだったんだけどね。」
ちょっとしたことを話しながら中に入る。そこには剣を突き刺すための台座だけがあり、光がなくとても暗く、燃える剣をつきさせばきっといい景色になるだろう。
天窮剣を突き刺して私はそこから立ち去る。そして、最後の任務をするために、私たちはある場所に向かおうとする。




