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特殊1話 希望と絶望と怨念 sideシアハ

 「シアハ、これはさすがに無理だ。」


 「えー、行けるって、」


 「どう考えてぶっこわれるに決まっているだろう。」


 私の目の前で剣の設計図とその中に埋め込むアーティファクトを批評しているのが昔から私の研究所で働いているエイタンだった。彼はあまりしゃべらないけど、剣を作るとなるとかなりの饒舌になってくれる。お父さんほどに年が離れているのだが、そこも頼りがいがあってよかった。


 「じゃあさ、ここをこうしたらさエネルギー効率が良くなってどうにかならないかな」


 「む、これならできるが相当な時間がかかる待ちな。」


 難しい顔をしながら設計図とにらめっこしている。懐かしいよ。彼のおかげで作れたものは数知れない。


 「ありがとうね。」


 「気にするな。」


 そう言って照れているようにも見える。頼られてうれしいんだろうなーって感じだった。


 そんな仕事の会話をしていた後に、私は自分の研究室に戻る。そうすると、ちょっと怒ったような私の助手だったメイールが佇んでいた。なぜ怒らせたのかは私には覚えがなくて、ちょっとなんて言い訳するかを考えていた。


 「ちょっと所長!言い訳を考えていますね。また、ご飯食べてなかったですし、それにこんなに散らかして片づけますから手伝ってくださいよ。」


 「はいはーい。今からやりますよ。」


 「殴りますわよ。」


 「ああ!やるから、ちょっとそんなにぷんぷん怒らないで。」


 メイールは私の身の回りの世話をしてくれながら、助手としても優秀だったな。


 ”それは私と比べるとどれほど違いますかね”


 ”何嫉妬してるの?大丈夫。君は私の最高傑作だから気にしなくていいって”


 ヴェルツバイも嫉妬するようなプログラムしたかなと思ってしまうけれど、なんだか人間的になってきてうれしく思う。環境さえあればヴェルツバイを人間に帰ることもできるんだけどな。


 そんなことを口ずさみながら再び話を戻す。


 当時の私の部屋と言ったらさ、死ぬほど汚かったんだよね。あちこちに研究資料や参考文献が散らばっていて、とても足の踏み場がないほどだったんだよ。そんなさ、だらしない私を叱ってくれたのは彼女だけだったな。


 そうして、仕事を終わった後は、ちょっとだけお酒を飲むことが趣味で時たま彼女と飲んでいた。


 「久しぶり、ミリアム。」


 「久しぶりですね。シアハさん。元気にしてましたか。ちょっとお酒弱めたほうがいいですかね。」


 「そんなことないよ。久々に会ったんだしさ。ちゃんと飲みたいなって。」


 いつも、私の家に彼女は来て、お酒を持ってきてくれていたな。昔、それこそ子供のころからの友達で、いつも互いの話を聞いたり、相談に乗ったり、そんな感じで気楽に接することができる数少ない友達だった。


 涙があふれて止まらない。あの時は、ずっと楽しく、明日の未来に期待して生きていた。きっと明日こそいい日になる。明日にも期待できる。今日頑張っただけ、それだけ明日のためにも、いつかこの腐った世界が元に戻ると信じてやまなかった。


 ”泣かないでくださいマスター”


 ”泣いてないって、でも”


 本来なら、こんなことにはならずに本当に世界を再構築していたと思っている。私は、人の悪意を舐めていたから。だから、あんなことになってしまった。人々は一つの結末にたどり着き、私たちは終わりの始まりにたどり着く。


 「え、王国が宣戦布告をしてきた?」


 「そうです!シアハさん。今すぐここから逃げましょう。」


 「メイール、そんな急に言われても研究資料やあの実験の結果が分からないからさ。そんなに急ぐこともないと思うんだけど。」


 メイールがあの時は必死に私のことを心配して、今すぐにでも都市から逃げさせようとしてきたなあ。実際、王国が戦争を仕掛けてきたのは私の研究にかかわってくる。もっと言うと、戦争の常識を変えかねなかったから。ある生物を兵器転用することで。


 「そんなこと言っている場合じゃなんです。王国はきっとシアハさんを狙ってますから。確実に始末しに来ますよ。」


 「確かに、それは困るね。」


 「ですよね。帝都に逃げますよ、こんなところにいたら死んでしまいます。」


 「だけど、ちょっとだけ完成したのを起動したいかなあって」


 その時の私は申し訳なさそうに言っていた気がするな。メイールの心配はわかっていたけど、あれを置いて逃げるわけにはいかない。そうだった。


 「すぐ終わりますか?」


 「大丈夫だよすぐ終わるって。」


 そう言って向かったのがヴェルツバイが寝ている場所だった。最初の造物、それこそがヴェルツバイだった。そして最後の造物でもあったはずだった。


 「さて、メディカルチェック完了、異常はないね。よし、起き上がれ。」


 地下研究室にあった培養器から一つの生命体が生れ落ちる。


 ”ここでマスターが私にヴェルツバイと名付けてくれましたね。”


 ”そうだね、今思えばここで粘ればよかったと思っているけど。”


 そうして、起きたばかりのヴェルツバイを連れて行きながら私たちは帝都に向かおうとしていた。その時に、私たちがある程度いた都市から離れた時に、その轟音が響き渡る。


 「嘘でしょ!」


 そう、現世帝都に落ちたノード爆弾とは違う、本物のノード爆弾だった。それは各国で禁止にされている本来なら絶対に使用してはいけないものとされていたその爆弾が使われたのだ。なんで禁止にされているかというと、使われたその一帯は人間が住むに値しない灰生物だらけの地獄と化すからだ。


 この時に、友人を二人失った。まさしく一瞬の出来事で一歩逃げ遅れていたら私もそうなっていただろう。王国はそれほど本気であると当時の私は思っていたんだ。


 失意の中、私たちは帝都についた。もちろん顔パスで通れるほどには有名だったから歓迎をされて、一時、帝国の直属のところに配備されていた。それが、地獄に向かう最後の出来事だった。


 その後は、メイールが私の身の回りの手伝いをしてくれて、ヴェルツバイが起動し終わり、本格的に助手として使い始めた時だった。


 ”ここで約束したこと。転生しても覚えているとは思わなかったよ”


 ”当然ですよ。あれがマスターの最後の命令でしたから”


 そう、あの時。ヴェルツバイにもしも私が死んだときのことを命令したときだった。普段から変な轟音とかする研究棟だったがある時、おかしなことが起きた。私が一人で研究室にいるときになぜか皇帝直属の近衛騎士がやってきた。


 「シアハさん。あなたにはノード爆弾を作った疑いがあります。」


 あり得ないことを言って、中に入ってきた。

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