第九話 最後にすることは
あの後帝都を滅ぼした後に、全人類を始末することに決めた。いや、必要なことだと割り切って一つ一つ潰していく。ヴェルツバイにもほかの国を担当させているから効率よく世界を崩壊させることができるはず。
「ここで最後かな。」
上空、地上から見たら私は豆粒にも満たないほどの上空から最後の狙撃を行う。一撃で葬り去る。きっとなにが起こったかわからないまま死んでいっただろう。だが、大丈夫だ。次の世界ではこんなことは起こらない。だからせめて、安らかに死んでくほしい。
「これで、全滅かな。」
周囲に生物を表すものは一切ない。地表は捲れて、荒れ地と化して、植物は枯れて今にも崩れ落ちそうになっている。文字通り、終末の時が来たかのようにこの世は終わりを告げていた。いや、私が終わりを告げたんだ。
あたり一面、何もない。ただ、荒野が広がるのみだった。そして、最後にあの場所に向かうとする。
しばらくの間飛行を続けていた。その間にも目に見える生物は消し炭にしていき、どんどんこの世界には生命体がなくなっていった。道中逃げ惑う人もいたが、それもすべて殺した。ちゃんと来世に向かわせてあげるためにも。
そうしてついたのは、これまた荒れた都市だった。焼け焦げた跡がひどく残っており、怪獣が暴れたかのように城壁は崩れ落ち、その城壁には草木が生い茂っていた。象徴的であった建物は崩れ落ち、そして廃墟と化した。そんな、栄光を称えた都市は一夜にして壊れたのだろう。
「旧救都、団長の故郷のようなものかな。」
ここに来たのはただ一つ、天窮剣を返しに来たのだ。この剣は現実改変を受け付けないある場所に保管されているはず。だって、この剣は私が作ったからね。ギミックの部分だけだけど。そう思うと私にも優秀な人が集まっていたなと感慨深く思ってしまう。でも、もうそれは帰ってこない。
「今なら過去の世界を呼び戻せるけど」
だけど、それはあまりに約束とかけ離れてしまうかもしれない。私が最後の助手と交わした約束が。彼女が死んでから私は研究に没頭するようになって、それでも助手が欲しくてヴェルツバイを作った。ヴェルツバイは私の誰にも理解されないような理論や装置について聞いてくれたし、身の回りのこともしてくれた。
だけど、一つ後悔がある。ヴェルツバイを人間にしてあげたかった。荒れていた精神から混合生物を作ってしまった。ヴェルツバイが人間だったら私はもっと心を持って人と接することができたのかもしれない。
今、私には選択肢が二つある。この世界を滅ぼして、再構築すること。これによって得られるのは私が灰生物に襲われていたところから世界が再び動き出すこと。だから、償いにならないかもしれないけど、今人を殺して、生物を殺して回っているのはそのためだ。生きている人間はこの世界から除外されるから。
そして、もう一つの選択肢は、残ったデータ化された人々を世界に組み込んで、今ある世界を崩壊させて、古代文明を復活させること。そうすれば、私は昔の同僚や友達、助手ちゃんと再会することができるだろう。
「私は...」
でも、すでに覚悟は決まっている。あの言葉に従って、そして、怨敵を打つためにも。
そんなことを考えながら私はすでに台座までついていた。相変わらずわかりやすいパスワードを打ち込み機械的な構造をした扉を開ける。その中には剣を突き刺すところがあり周囲は幾何学模様で埋め尽くされていた。
これがなければ現実改変の時に一緒に消えてしまう。だが、これさえあれば前世のことを引き継ぐことができるであろう。矛盾が発生しないためにも私はこの剣を戻しに来た。
「祈りを込めて、来世に暁をもたらさんと」
気休めに過ぎないかもしれないけど、いないかもしれない神に祈る。私は研究者という立場上あまり神を信仰してこなかった。だけど、研究を進めるにつれて神がいないと説明できないことが増えてきた。そして、ノームオイルの真意に気付いた時には。
すでに何もかもが手遅れだった。と、そんな陰鬱な気持ちに苛まれているところをヴェルツバイが後ろから話しかけてきた。
「探しましたよマスター。任務完了、生贄の準備は完了していますよ。」
「ありがとうヴェルツバイ。ちょっとさ話を聞いてほしいんだけどいいかな。」
「もちろんですとも、ああ、昔を思い出しますね。」
ヴェルツバイは両手を広げて歓迎するようにしていた。まあ、今世だとこれが初めてかもしれないからかな。
「ちょっと、辛い。でも、楽しかったそんな過去のお話だよ。」




