第七話 真理
そろそろ、救都につくはずなんだけど、あまりにも静かだった。本来なら戦闘音が聞こえてもおかしくないのにと、この丘を登り切ったらもうすぐ救都に着くといったところで私の目に着いたのは全壊した救都だった。
さらに、そこで暴れていたのは前回も救都を破壊した造物だった。あの忌々しい奴だった。
「え...」
今から奴に挑んだとしても殺せるかは怪しい。団長ですら、相打ちが限界だったから。そんな悩みに悩んでいたところ、目の前から人影らしき何かが近づいてきた。もしかしたら、逃げ延びた人なのかもしれないと思いすぐさま近づこうとする。
「あんたは...」
「やっと来ましたか。舞台を整えるのに相当時間がかかりましたね。」
そう言いながら来たのは、人よりも数周りほど大きい、人間のような何かが人の言葉をしゃべりながらこちらに向かってくるところだった。
「あんた誰、返答次第では殺すよ。」
「そんなマスター物騒ですね。でも、転生しても変わらないのはいいことですよ。申し遅れましたね。わたくし、ヴェルツバイと言います。」
「マスター?」
奴が言ったのは”マスター”と、その言葉はいろいろあるが今回のはきっと主であると思う。だが、あの崩落した救都から生還していることと明らかに人間でないのにもかかわらず、人の言葉をしゃべっていること。
明らかに怪しい。どう考えても、救都を陥落させたキメラの一味としか思えない。
「おやおや、忘れてしまいましたか。仕方ありませんね、転生すると記憶が消されてしまうと言っていましたからね。」
奴はそう言って、ある剣を取り出す。その剣は青白く光っており、その剣の容貌はまがまがしくも、美しかった。その剣を私が立っている地面の目の前に突き刺した。そして、語り始めた。
「マスターの遺言に、記憶がなくなった時、この剣を私の目の前に置いといてくださいと。その剣はこの世を統べることが可能なほどに強力な能力を持っていますよ。もちろん、これを作ったのはあなたですから。きっと手に取っただけで使い方を思い出すでしょう。」
「それで、あの救都から逃げ出したあなたには信用というものが一切なんだけどさ。私を納得させられるだけの証拠はあるの?」
マスターが確実に私を指していること。そして、奴の言葉が真実だとすると私には前世があるように感じる。そして、世界を統べる剣を昔の私が作ったとされているけど、明らかにかかわっているのがノームオイルだろう。それも、根本的なところにかかわってくるものだ。
「素直じゃないところも変わりませんね。そうですね、一つ上げるとするならば、ノームオイルを使って作られた高度な技術力ですかね。」
「それが、なんの証明にもならないでしょ。」
「そうでもありません。あなたが見てきたノームオイルをもとにした装置は古代文明からしたらおもちゃに近いでしょう。だが、その天才性をもってすればこの剣が明らかに違うことが話明かるでしょう。なんせ、今世の天才と言われているあなたならばね。」
奴の言葉は信用できないが、自分の知識や勘は廃れていないと思っている。そう思い、その剣をじっくりと観察してみる。ついでに、天窮剣を構えた状態で。
「確かに、これほどの装置は見たことないですね。」
「興味がわいてきましたか。どうぞいつでも手に取ってどうぞ」
これほど興味深いものを目の前にして、手に取らないということはあり得ないだろう。そう思って、ゆっくりと震える手を抑えながらその剣を取る。
「*とてつもない頭痛による発狂*」
ありえないほどの頭痛の後に、流れ込んでくる情報の嵐。なぜ、この剣を作ったのか、なぜ転生する必要があったのか、今世の目的も、そしてその目的があまりにも残酷で最悪の選択になってしまうことに吐き気が止まらない。
「思い出してくれましたか。マスターの目的は、この世の生物を滅ぼしつくして世界を再構築することですから。」
「それはそれは、記憶を取り戻したとしても心苦しいでしょう。」
「なので私は、明確な敵を作ったのですよ。」
両手に剣を持ちながら奴を睨み付ける。ああ、そういうことだったんだね。古代都市に来た時にキメラが来たこと、もう一度古代都市に行ったときに造物が来たこと、帝国に行くことなんてないと思っていた時に招待がきたこと、すべて、こいつが、私が悔いなく世界を滅ぼすために仕組んだ。
「ヴェルツバイ。」
「なんでしょうかマスター。」
「着いてきて、私があなたを滅ぼす前に、そして。命令通りに動いてくれてありがとう。」
「恐縮でございます」
こいつにこの命令をしたのは間違いなく私である。そうして、この世界を犠牲にしてでも、古代文明の人々が復活することを望んでいた。だけど、そう簡単にはいかなかったんだ。
「ねえ、ヴェルツバイ。私を殺したのは王だった?」
「ええ、そうですよ。その後私にぼこぼこにされましたけどね。」
「そっか。」
随分と昔のことだった。禁足地と言われいるノームオイルによる謎の生命体が暴れてしまい。各国での戦争によって爆増していたころに私は生まれた。そして、ノームオイルを使って、世界を変えるほどの天才ともてはやされた。
私は頼られるだけ、それにこたえようと頑張った。それはそれはたくさん頑張った。でも、それでも世界の縮小と侵略は止まらなかった。どう頑張っても人類は滅ぶ運命にあったのだ。
最後に、私はある装置を作った。すべてを書き換える世界の根幹に干渉してすべてを元に戻そうとした。
そして、天使であった私は転生することを知っていたからある剣に記憶を込めていつ死んでもいいようにと考えた。
だが、自由に世界を書き換えられる、これに目がくらんだ人間によって私は。
「思い出しましたか。それとも、古代文明を復活させるつもりですか。」
「どちらでもない。一度、まだ仲間が生きている。手伝え」
「ええわかりましたよ。そうしても...まあ行きましょうか。」




