第六話 崩壊
「嘘...」
そこには城で案内してくれた人が血まみれで立っており、その足元には大量の帝国騎士団の死体と
その中にルスベリー先輩がいた。
「ああ、君もか、皇帝陛下は恵まれていたんだね。」
皇帝陛下?、こいつがここにいることがおかしい。本来ならこの騒動を止める側に回る人間なはずなのに。奴は構えたまま背後の建物を守るように佇んでいた。かなりの時間ここにいたのだろう。その周りには大量の死体が並んでいた。それに、城であった時とは全く違う服装をしており、まるで裏切りをしたかのようにも見える。
今すぐにでも奴を殺したい気持ちを抑えて、しゃべり始める。
「お前は、帝国騎士団団長じゃないのか。仲間の死体だらけだよ。」
すると、奴は驚いたようにこちらを見つめている。
「もしかして、何も知らないのか。まあ、当然か。」
「何が言いたい。」
震える唇を止めるように、震える手を止めるように、そんな私を見透かすように、奴は衝撃のことを言い始めた。
「君たちの仲間の一人、ラニウリ・アナスタシア・エルディアーナ様こそ真の皇帝陛下であり、高貴なる血筋の御方である。君たちにはもったいないほどだよ。」
「は?」
「知らなければ驚くのも無理はないだろう。神に等しき存在が今までは気楽に接していたとなればなおさらだ。」
十数秒ほど固まるほどに衝撃を受ける。つまりだ、私が城で会った皇帝は偽物であり、簒奪者であると。そして、ラニウリさんこそ、真の皇帝にふさわしい血族であり、今回の争いの根源は私たちが帝国に来たことによって本物が帰ってきたから今こそ奮起するときと真皇帝派に思い込ませてしまい、その結果ありとあらゆる悲劇が起こり始めたってこと。
考えても仕方がない。ひとまずルスベリー先輩が生きていることにかけて奴をどかさなければ。ラニウリさんはひとまずは安全だろう。傀儡にするとしても生きていることが大事であるから。
「ねえ、騎士団長さん。そこにいる茶髪の女性を返してくれないかな。そうするなら今すぐに君と戦わないと約束しよう。」
そうすると、彼はにっこりと笑い。屋敷にいる部下にルスベリー先輩を持っていくように命じていた。その間も私をずっと見ていて、警戒しているのは間違いなかった。
「ああ、そうだ。君の剣についてはある程度知っている。もし、私を殺して、皇帝陛下を奪いたければ。死ぬ気で来なさいな。私は死んでもここで止めるだろうから。」
殺気に押されて少し後ずさる。その顔と覚悟に満ちた立ち姿が周囲と合わさって修羅のように見える。必ずここですべてを守ろうとする騎士の姿だった。信念と覚悟を持ったものを殺すのは気に乗らないけれど、彼が敵として立ちふさがる限り私は彼を殺さなければならない。
「わかったよ。覚悟しておいてね。私は必ずあなたを殺しに向かうから。」
「やはり、いい覚悟だ。今からでも私たちのもとで暮らさないか。皇帝陛下とともに、人類を救うために、」
手を差し伸べるように、提案をしてくる。すごくいい提案だと思う。実際に、記憶がなかったら私は靡いていただろう。だが、心がそれを否定している。
「嫌だね。あなたは騎士として成熟しているし、ラニウリさんも必ず助かるだろう。でも、ルスベリー先輩を殺したあなたを憎む心と救国騎士団団長としての私があなたを許さない。」
「そうかい。じゃあ、次は殺し合いかな。私はここで皇帝陛下を守り続ける。だから、逃げるなんて心配はいらない。必ず君も打倒して、栄光を取り戻すよ。」
真剣な目は覚悟とともに私に伝わる。死なないといいな。だって、必ず私が殺したいと思った人は生まれて初めてかもしれない。彼の部下がルスベリー先輩を持ってくる。何よりびっくりしたのが彼らが武装をしていないことだ。さすがに、剣すら持っていない人間を殺めるわけにはいかない。それか、抵抗が無駄とわかっているからなのか。
ルスベリー先輩を抱きかかえる。その身体は冷たく、そして寝ているような顔だった。医学の知識が私を追い詰めていく。もし、寝ているだけなら今すぐに飛び起きて笑いかけてくれるようなそんな、
気持ちをぐっと抑えて、ここから去ろうとする。最後に一言言わなければならないことがあるなと思う。
「死なないでね。あなたを殺すのはこの救国騎士団団長だから。」
「ああ、楽しみに待っているよ。君が最後に抵抗する人間かもしれないからね。」
「ふん」
涙を流す気持ちを抑えながら帝国を去る。せめて、ルスベリー先輩が寝る場所は救都であってほしいから。その思いで必死に救都に向かう。きっと、ドークスさんがみんなを率いて抑えてくれているはずと思いながらもはせ参じることが送れたのに罪悪感がぬぐえない。
「きっとみんなが抑えてくれているはずだから、結界外の敵を撃滅して中に入りたいかな」
思わず、独り言をつぶやいてしまうほどに私の心は追い詰められていた。めったにそんなこと言わないはずなのに。
そろそろ、救都につくはずなんだけど、あまりにも静かだった。本来なら戦闘音が聞こえてもおかしくないのにと、この丘を登り切ったらもうすぐ救都に着くといったところで私の目に着いたのは全壊した救都だった。
さらに、そこで暴れていたのは前回も救都を破壊した造物だった。あの忌々しい奴だった。




