第五話 暴走
「、!わかったよ。ありがとう。今から私もルスベリー先輩のところに行くよ。そのほかの人は救都を優先して。当然、人命優先だよ」
「わかりました!武運を祈ります。」
「うん、お願いね。」
伝令兵を救都に、いや、ほとんどの戦力を救都に戻すように言った。現状を把握する。まず、ラニウリさんが帝国に誘拐されて、それに応じてルスベリー先輩が突撃しに行った。それと同時に、救都から襲撃の報告が上がって、それに応じてドークスさんが向かった。それに合わせて私は人員を送り込んでおいたから今すぐにでもルスベリー先輩を連れ戻さなければいけない。
さすがに、他国で剣を抜くわけにはいかない。それこそ、宣戦布告と変わらないからね。ただ、帝国がなぜ、ラニウリさんを誘拐したのかは一切わからない。それに、帝国側が脅しに来るようなこともない。あったら報告に上がるだろうから。
「ひとまず、動かなきゃ」
そう思い、一応剣を取り、服を着替えて、準備を整える。ホテルの人には申し訳ないけどいろいろ無視してすぐさま外に出る。そうすると今まで見てきたものとは全く違う景色だった。
「なにこれ...」
本来ならば、かなりきれいに舗装された道に街灯があって、さらに様々な建物が立ち並んでいるはずなのだが、道を塞いでいるのは帝国騎士団とは違う人たち、それに、戦闘の跡がひどい。
あちこちに血が飛び散り、放置された死体からは吐き気を催す匂いがする。すでに、争いがあったのは確実だろう。それに、ルスベリー先輩がやったとは限らない。何よりも、帝国騎士団ではない何かしらの武装集団であることがわかる。それによく観察してみると、何かの紋章のようなものを腕に巻いている。識別するための何かであるようで、かつ、帝国騎士団との見間違いを防ぐためだろう。
「さすがに私も狙われるかな。」
そう思って、奴らにはばれないように動かなければならない。だが、ルスベリー先輩がどこに向かったのかがわからないから一人くらい捕まえて聞き出してみるのもありかもしれない。剣を扱えるようになってからは大体の敵に負けることがなくなってきた。それにいざというときは能力を開放してすべてを消し炭にすればいいからね。
そんな雑な考えのもと、ひとまず話が通じるかを確認するために、道を塞いでいるやつらに話しかけに行く。警戒はしているようだが、私が明らかに帝国騎士団ではないためすぐに攻撃してくることあなさそうだった。
「そこのお前、ここから先は通行止めだ。関わらないことを推奨する。まあ、あんたが一般人の時だけだがな」
奴らの中の一人がそう言いながら武器を構える。どうやら道理の通じない猿ではなさそうだった。少なくとも、一般人まで巻き込んで、すべてを破壊しようとしている賊のようではなさそうだった。おそらく、反乱かな。反乱軍のように政権を奪おうとしているやつが民を攻撃しだしたらそれこそ反感を買って更なる反乱が巻き起こるだろう。それはわきまえているようだった。もちろん、私の推測だけどね。
「これはご丁寧に、私は救国騎士団団長シアハ。私の仲間がこの辺にいるとの報告を受けて探している何か知らないかな。」
そのままの挨拶をしてみると奴らには警戒するような素振りを見せて、少し話をした後にこちらに話しかける。
「失礼。少なくともこの辺りは封鎖をしていまして、あなたの言う”仲間”は通されていないでしょう。」
「これはどうも、一つ聞きたいことがあるのだが、我々の仲間が帝国に誘拐されたと聞いたのですがもしかすると帝国騎士団がかかわっているのですか。」
明らかな嘘をつく。帝国騎士団の死体があるにもかかわらず、私たちの仲間が帝国騎士団に誘拐されていると知っていたらこいつらが知らないほうがおかしい。それか、情報統制をされているかの二択に絞れる。どちらにせよ、敵であることは間違いなさそうだ。
奴らは嬉々としてしゃべり始める。
「ええ!もちろんですとも、奴らは市民に危害を加えるだけでなく、皇帝の座を奪おうとする野蛮人ですからな。」
「へえ、それだけ知っているのに私たちの仲間が誘拐されたことを知らないんだ。もしさ、帝国騎士団に誘拐されていると知ったらあなたたちは我々に恩を売る機会になる。それにもかかわらず、何も知らないとは。説明できるかな。」
奴らは私の言葉に応じるようにしゃべらなくなる。そして、戦闘態勢に入り、その瞬間にこいつらが敵であることの確証が持てた。
「くそが、そこまで伝わっているとは。だが、あなたを通すわけにはいきません。ここを通りたければ殺すことをお勧めしますよ。それでも、私たちは退くことはできないのです。」
「そっか。」
一言そう呟いた後に、天穹剣の能力を開放する。その熱波で奴らを退けるほどに燃え盛っている。徐々に周りの地面を溶かし始め、周りの建物に火が付き始める。燃えているわけではないが、熱が伝播するように火が燃え移る。
苦しそうにしているやつらに私はゆっくりと近づく。
「どう?真実を話す気にはなったかな。」
睨むような視線で返事をされる。仕方がないか。そう思いながら奴らの周りを燃やしていく。だんだんと酸素がなくなってきたのかゆっくりと一人、また一人と倒れていき、そうして全員が倒れる。
「殺してはないはず」
火を消した後に倒れている一人に手を当ててみる。脈があるからさすがに死んでいないだろうと思い封鎖区域に入る。封鎖されているだけあってか、それほど汚された跡がないし、戦闘跡もない。
中心に向かえばなにかしら情報が手に入るだろうと中央に向かって走り続ける。
道中、封鎖していたやつと同じ服装と武器をもった奴らを見かけるが、炎を纏っている状態の私に近づくことはかなわない。だんだんと、人が増えてきたところで一つの大きな建物を見た時に私は絶望のあまりに剣を手放しそうになった。
「嘘...」
そこには城で案内してくれた人が血まみれで立っており、その足元には大量の帝国騎士団の死体と、
その中にルスベリー先輩がいた。




