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第四話 事変

「うむ、互いに時間はないだろう。単刀直入に言おう。ノードを完治することはできるか。」


 痛いところを突かれた気がする。ここ数年は研究できていなかったが、ノードを治すことを今、言われても不可能としか言えない。そんなに簡単に治療ができるのなら、救国騎士団なんてものはできていないのだから。ノームオイルで起こる利益と不利益が不利益に傾き始めた時代で、その不利益を今すぐに消せるかと言われても無理としか言えない。


 「恐れながら、現時点では不可能かと存じます。」


 「ふむ、やはりか。それは金銭的な支援で解決するか?」


 「いいえ、我々の技術的な、研究不足による問題です。」


 「そうか。」


 皇帝はやはり知っているのだろう。ノードの治療法がまだ確立していないことに、それに完治したという報告すらない。だから、わざわざ、私たち専門家を呼んでまで誰の治療をしたいのかが気になるところではあるが、そこまで行くと内政干渉になりかねない。


 「申し訳ございません。我々ではお力になれそうにありません。」


 「承知した。だが、ノードの研究によって完治できることを諦めるにはいかないのだ。」


 難しい顔をしながらも、鋭くこちらを見つめる。おそらく、技術提供が欲しいのだろう。抑制剤の作り方でもなんでも。


 「抑制剤のレシピをとは言わない。余が望むのは帝国と救国との共同研究を望む。」


 「恐れ多いですが、我々にはメリットが感じられません。」


 「さよう、よって、帝国は救国に対して金銭的な支援を行う。その代わりに、帝国の研究を手伝うことでどうじゃ。」


 私は一瞬ドークスさんとルスベリー先輩のほうを見て、アイコンタクトを行う。二人とも険しい顔をしているが、これでいいだろう。


 「それならば喜んで。こちらからもよろしくお願いいたします。」


 一瞬の笑顔と険しい顔をしてからすぐに話し出す。


 「よし、では謁見はここまでとしよう。ここからの話は互いの外交官同士で行おうではないか。」


 「わかりました。では、我々はここまでで」

 

 そう言って、私たちはここから出ようとする。だが、その時に感じたのは視線。それも、殺意だった。一瞬身構えるのだが、誰が放ったかすらわからない。それに、殺意を向けられたのは私ではなく。ラニウリさんだった。猶更、よくわからない。


 そんな疑念を抱きながらも、私たちはホテルへと向かうのだった。


 「だぁーあ、疲れましたよ。」


 「しゃべりすらしてないだろ。」


 「まあまあ、あそこにいるだけで疲れるから。」


 城を出るや否やすぐに体を伸ばしながらそういうルスベリー先輩に睨むようにドークスさんが横を歩いている。みんなの背中を見ながらふと、振り返って城のほうを見てしまう。私はあれでよかったのだろうかと内省するのだが、もっとも利益をもたらすのはこれだと思ったから気にすることもない。


 それよりも、ホテルに戻った後は一度休憩をしてから貴族との食事があるとかいうハードスケジュールになっている。気の減り方が半端でないがそれでもやらねばならないと思いつつ一度ホテルまで戻る。


 すぐに私たちは着替えて、招待された場所まで向かうことになった。休憩なんてものはなく、とっとと動かなければならない。今回のことを断ることもできたのだが、ラニウリさんから言ったほうが救国はどちらの勢力にも加担できると意思表示ができるからとのことで行くことになっている。


 さっきまでの道とは違い、高そうな豪邸が立ち並び、過剰なまでに舗装された道に街頭と、最初に入ってきたところとは大間違いな場所だった。


 「救国とは違いすぎますね。こんなにきれいにしても一撃で壊れるってのに」


 「物騒だよルスベリーちゃん。ここで変なこと言ったらどこか怖いところに連れていかれちゃうかもよ」


 「大丈夫ですよ。私を捕まえようなんて、それこそ団長くらいですから」


 そんな軽口をたたきながら明らかに庶民がいることのない場所に緊張を浮かべながらもなんとか無事にたどり着くことができた。


 緊張する手を握り、ほどく。深呼吸をして、平常を保ちいざいかんとしようとした。そうしたときに門番みたいな人が近づいた。


 「失礼します。あなた方が救国騎士団代表でよろしいですか。」


 「はい、これが招待状です。」


 そう言って、手紙を彼に渡す。丁寧に彼はそれが偽装されたものではないかをチェックして、安心したのか笑顔でこちらを見て渡してくる。


 「はい、確認が取れました。それではどうぞ。」


 そう言って、中に通される。そこでは、様々な人が礼服を着て、片手にグラスを持って話しているところだった。どうやら、招待されたのは私達だけではないようだった。


 「うわー、人多いですね。はぐれないように手でもつなぎましょうか」


 「ちょっとそれはさすがに...」


 ルスベリー先輩がナチュラルに手をつなぎに来るのだが、さすがに子供にしか見えない。ただでさえ伸びたという身長は小さいというのに、身長差がある女性と手をつないでいたらただの子供にしか見えないではないか。


 「くれぐれも、気安くグラスの中身を飲む出ない。死ぬかもしれないということを気に留めとけ」


 「そうだね。」


 ドークスさんの言う通り、毒にも気を付けないといけない。気を張る必要なことが多すぎで頭が混乱しそうになる。


 「シアハちゃん、ちゃんと周りの人との挨拶も大事だよ。」


 「そうだよね。」


 ざっと見渡す限り、20人はいるのではないかと思ってしまう。全員に声を掛けるわけにはいかないけどそれでもかなりの数になってしまう。そんなあわただしい、パーティーを終えて、私はホテルに帰らされるのだった。


 自室に戻り、独り言をつぶやく。


 「疲れた。」


 あの後、覚えきれないほどの人たちに話しかけられて、もう無理、みたいなところになるまでになったが、何とかラニウリさんが捌てくれた。あれほど、社交界で人と話すのが慣れているのはうんと思ったが。それよりも、助けてくれたのがありがたかった。


 「明日は、いい日になるといいな」



 そう思いながら寝についた。



 私が起きたのは、どたばたとした足音に、怒号、悲鳴、そんな2年前に聞いたあの時だった。最初は悪夢でも見たのかと思ったのだが、伝達兵がやってきて現実を知った。


 「報告!Drラニウリが誘拐、それにつられてルスベリー先輩偵察隊長が突撃、救都に襲撃があったという報告を受けて、ドークス指揮官が離脱しました。今すぐにご判断を。」

ごめんなさい!!!OWしてました。すいません。

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