第三話 皇帝
「あれ、ここは」
なんだかいつもとは違う天井を見ている。無駄に豪華に見えて、絶対に救都にはないと確信した。そして、ぼんやりとした思考が現実に引き戻されていく。そうだ、私は帝国に来ていたんだった。今日は、皇帝に謁見しに行く日だった。しゃっきとしなければと思い洗面所に向かう。
「あれ?こんなに背あったけ?」
昔見た自分と、今見た自分があまりにも違う。天使の輪っかや羽はあまり変わっていないが前よりも大人びてきて、身長も伸びていると思う。後、団長に近づいているのかなと感じてしまう。団長の真似をしようとポーズをとってみるが身長が如何せんたんない。誰にも見られていないから恥ずかしくないもんね。
「シアハさん。朝からどうしたんでしょうか。ラニウリさんに見てもらいますか。」
「うひゃぁ!!!!!!!!」
後ろからの声に驚きすぎてこけた。背中の痛みと恥ずかしさで死にそうになりながら振り向く。絶対にいないはずのルスベリー先輩がなぜかここにいる。おかしい、だって鍵かけたもん。絶対にかけたはず。それに、ここは帝国が招待したホテル。セキュリティは万全なはずなのに。
「どうやって入ってきたんですか。鍵は!」
まるで当然のような態度でルスベリー先輩が話始める。
「そりゃあもちろん。ちょちょいと鍵開けをして入りましたよ。ていうか声かけたじゃないですか。入っていいですかーって」
「そんなん聞こえるかー!というかせめて返事を聞いてから入ってくださいよ。」
だが、ルスベリー先輩がいきなり真剣な顔でこちらを見て話し始める。いきなり豹変した雰囲気に思わず身構えてしまう。
「返事がないから心配できたんですよ。まあ、元気にしててよかったです。」
「むう、そういわれると何も言い返さないです」
「まあ、気にしないでください。それより、下でご飯を食べましょうきっとおいしい朝ごはんが私たちを待っていますから。」
ルスベリー先輩はそういって去ってしまった。嵐のように私をかき乱していき去る姿は傍若無人さが表れていた。それとともに、今日起こることがちょっと軽くなった気分で私は下の階に行くことにした。
一人で無駄に豪華なエレベーターに乗って下に向かう。これほど高層なのはなぜなんだろうと思うが、やはり権威にたどり着く。そんなこと考えながら私はすぐにみんなのもとに向かうべく食堂に行くことにした。
食堂は意外にも人であふれており、どこにみんながいるかが分かりずらかった。みんな高貴そうな服を着ており私たちも例外ではなかった。着慣れない服に、慣れない場所で一人なのはちょっと不安になってしまうのだが、なんとかルスベリー先輩だけを見つけることができた。
あの人だけ場違いすぎる服装で平然としていて、四つの料理が並んでいる場所に一人ぽつんといてなんだかさみしそうにしていたから駆け足で寄る。
そうするとルスベリー先輩はにこやかな顔で出迎えてくれて私もちょっとほっとした。剣を持ち出して、一人で仮想敵国に来ていないからある程度は安心している。だけれど、ここはあのキメラをけしかけてきた帝国だ。当然、一枚岩でないことは承知している。だけれども不信感から不安になるのは仕方ない。
「シアハさんやっと来ましたね。ほかの二人も早く来てくださいよ。ご飯冷めちゃいますよ。」
ちょっと悲しそうにぽつんと待っていた彼女はすぐに笑顔に変わり、しゃべり始める。
「遅いですよ、二人とも、さあ早く食べましょうよ。」
振り向くとドレス姿のラニウリさんとタキシードを着たドークスさんが来ていた。その晴れ姿のような服装は夫婦であるように見えてしまう。
「ルスベリー、着替えはどうした」
「そんなの後にしましょうよ。ちゃんと持ってきましたから」
「ならいいんだが...」
不満があるようにそう呟きながらも席に座る。ラニウリさんはあまりルスベリー先輩の服装については触れようとしなかった。むしろ、安心しているようにも見えた。
みんなが席に座った後にご飯を一緒に食べ始めた。その時のことはあまり覚えていないかな。なんだか、緊張しちゃって、それで気づいたら皇帝のための豪壮な城に通されていた。
堅牢そうで、重厚な扉を通って、中に入る。中に入ってもすぐにはつかないそうで、ちゃんと防壁としての役割を持っているとのらしく、ここが最後の砦になると言われた。案内してくれているのは近衛騎士団を名乗っていたのだが、帝国騎士団と何が違うのだろうか。
だが、それを聞いてここで争いに巻き込まれるくらいなら言わないほうがいいだろう。それに、ラニウリさんとドークスさんを戦闘になった時に無傷で連れて帰るのはとても難しい。それとなく会話をして謁見所にまで連れていかれた。
「これは...」
つい言葉に漏らしてしまうほどにはこれほどまでに金銀で出来た巨大な空間は見たことがない。それに、道を作るようにさっきまで案内してくれていた近衛騎士団の人たちが微動だにせず立っている。これほどまでに、帝国は余裕があるはずなのになぜ私たちに、と思ったが専門分野の話をするのかなあと思いながら指示にしたがう。
「それでは皆様、本日はお招きした立場です。そのままの姿勢で大丈夫ですよ。」
隣にいた案内人はそう言ってくれる。まあ、言葉通りでいいのかなと思って本当にそのままにしてしまう。が、ルスベリー先輩たちに強制的に跪いてしまう。さすがに、無礼をするわけにはいかないのか。
「静粛に!総員敬礼!」
案内人の人がそういうと、周りの近衛騎士団員たちは全員ビシッと敬礼をして動かなくなる。その後、玉座の後ろから皇帝らしき人物がお出まししてくる。その姿は、威厳ある老人にも、疲れ果てた老人にも、どちらにも見えるように今の帝国を表しているようだった。
「ご苦労。はるばる遠征苦労を掛ける。我々帝国はそなたを歓迎しよう。」
ちょっと、返事に困るけれど
「はい。お招きいただき、誠にありがとうございます。微力ながら、お力になれますよう努めさせていただきます。」
顔を見るにまあ悪くない返答だったのだろう。周りの兵士たちも特に気に留めることはなさそうだった。
「うむ、互いに時間はないだろう。単刀直入に言おう。ノードを完治することはできるか。」




