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特殊2話 もしも side 団長グラジース

 「皆、集まってくれてありがとう」


 私がそう言い、各団員が反応を示す。その顔色はあまりいいものではない。青ざめるものもいれば、怒り心頭のように思える人もいる。まあ、所長の反応は当然として、ルスベリー先輩にかんしては救国都市陥落事件を引っ張っているように思える。あの惨劇によって今の救都ができたといっても過言でないから。あり得ないほどの人が灰生物となり、自身の手でその終わりを示さなければならなかったから。


 「今日集まってもらったのは事前に報告を受けていた、スタンピードについてだ。」


 真っ先に反応したのはドークス。手を挙げて、すぐにしゃべり始めた。


 「団長、それは裏付けがされていて、必ず救都に来ると確信があっての発言ですよね。」


 「それはもちろん、ここ救都に着いた時にはすでに偵察部隊を派遣して、進路がここなのは把握済みだ。」


 「そうですか....ありがとうございます」


 彼は一礼して、手に持っているバインダーとにらめっこしていた。彼が戦闘指揮をする前に事前情報を叩きこむこととどのように配置するかを事前に確認しているからだろう。私はそのまま話を続ける。


 「ここで話すことはもしもの話だ。最悪の場合を考える。」


 「それって、全滅ー。ですよね。」


 「もちろん」


 気軽く、丁寧な口調でしゃべりだしたのはルスベリーだった。彼女も今回のスタンピードに参戦するつもりで来ているし、させるつもりだ。だが、最悪の場合に備えて逃げてもらう羽目になるかもしれない。苦しい選択をさせてしまうが、今後のためを、と思うと仕方ないと納得するしかない。


 悩む、私にルスベリーも暗雲が立ち込めていることにうすうす気づいているだろう。戦闘すらさせてくれないかもと。現に10年前に起きた救都陥落事件ではルスベリーは逃げる側だった。


 「さて、最悪の場合は、私、ルスベリー、ラニウリ、ドークス、シアハが死に、民間人に大打撃を食らってしまうこと。そして、救都が維持、または復活が不可能になることだ。」


 「当然ですね。結界装置や、城壁を破壊された時が撤退時でしょうか」

 

 「おそらくそうなるだろう。」


 ドークスが言っていることが私たちの撤退ラインになる。ここさえ破られなければ、ハッピーな結末に終わるかもしれない。だが、現状では結界装置が致命的で壊れることがほとんど確定しているといっても過言でないだろう。ゆえに、結界装置なしでの防衛線になること間違いない。


 「そうですねえ。現在、結界装置は不安定。壊れる寸前であるかもしれません。そんなものに防衛の要を担わせるのはちょっと酷かと。」


 二つ目の意見を出したのは研究所長のアルヴェインだ。彼の言うこともおそらく正しい。壊れかけの防衛装置なんぞ使い物にならない可能性は十分にある。


 「ああ、そうだ。結界装置も不安定、城壁も完全に止まるとは限らない。ゆえに突破された時には、ここにいる皆だけでも逃げてほしい。」


 「それって!」


 真っ先に反応したのはルスベリー。驚きを隠せないようで、私の言葉が信じられないようだった。ドークスは予想していたのだろうあまり動揺はない。ラニウリは不安の表情が落ちず、常に慌てているように思える。鋭い視線を向けてくるアルヴェインも私の言葉には驚きを隠せないようだった。


 なんせ、みんな逃げて、犠牲は私だけでいいのだからと言っているようにしか見えない。ただ、もちろん理由がある。


 「質問だ。団長、それは本気でここを焦土にする覚悟で戦い、すべてを灰に帰すためか。」


 「もちろん、ドークスはさすがにわかるか。」


 「何年ここで働いて、団長の能力を知ってきたと思っているんですか当然ですよ。」


 彼が言ったように、私の能力はあまりに広範囲に及んでしまい、ここ救都では全力を出すことができない。もし、出してしまったらここにいる全員と民間人と団員全部を巻き込んで灰にしてしまうだろう。それほど、命を懸けた能力の開放は強いということだ。


 「団長!能力開放はダメって、前にも言いましたよね。」


 「だが、何もできずに死ぬよりはましだ」


 「それでもですよ、次使ったら今度こそ死ぬかもしれないんです。やめてください!」


 ラニウリが珍しく大きく反発してくる。私が無双するほどの力を開放したときにあり得ないほどの寿命が削れる。その行為じたいが死に向かうようなものだから。


 「さて、ここまでは決定事項だ。どんな意思でも私の決定を覆すことはない」


 頑固のように強い言葉で意見を曲げないことを言うと、全員があきらめるようになった。ここまで言うとなると相当の覚悟があり、決して止めることができるわけないからな。静かに本題に入るのに時間がかかってしまった。


 「さて、本題だ。私が死んだ後に救国騎士団を継ぐ人間、ひいては私の剣が使える人間だ。」


 「ここにいる誰も、団長の剣は使えませんよー。」


 「それが問題だ。」


 私が使っている剣こそ、この救国騎士団の長である証であり、旧救国でも絶対的なものとして扱われていた。それこそ、王と同じほどにな。神聖なものとして扱われていた。


 「”天より遣える神の剣”なんて誰にも構造が分からない真の古代遺物と言っていいでしょう。」


 「少なくとも、今いる団員に使える人はいないな。」


 アルヴェインのいった、天より遣える神の剣と言われているほどの強さで、ドークスが言っているように扱える人間がほとんどこの世にいない。だってこれは


 「知っていると思うが。」


 そう言って、私は結界を解く。認識を阻害していたはずの結界をだ。その結果、現れたのは3対の羽と光輪であった。天使である証である。

 

 「ここにいる皆には話そう。剣の起動条件はただ一つ、天使であるかどうかそれだけだ。」


 私は阻害をもう一度発動させてもとに戻る。ここ、救国騎士団にいる天使は私含めて二人だけだ。その意味はきっと皆に伝わっているだろう。


 「つまり、団長以外に使えるのはシアハさんだけってことですか。」


 「そうなる、この剣にはすべてが詰まっている。だから、使えるかどうかが非常に大事なことである。」


 「それって酷ですよ。」


 小さく、つぶやいたのはラニウリだった。それは承知しているが、どうしてもシアハにここを継がせたいと思う理由があるからな。


 「ちょっとした戯言だと思って聞いてほしい。」


 座っている椅子の背もたれに寄りかかり、話始める。


 「小さい頃はな、何も変哲のないただの少女だった。しかも、公国の村の少女だった。もちろん遊び相手もいたさある女の子だった」


 その言葉にみんなが驚く、最初から救国に生まれて、救国育ちだとだれもがおもっていたからだ。私はそのまま話始める。


 「自然に満ち溢れていて、なんの不自由もなく、両親に愛されて、村の人々と遊び、親の家業を継ぐはずだった。遊び相手になってくれたその子も同じだった。幸せそうに見えた。」


 自然と言葉が重くなる。それとともに皆の表情が暗くなる。なんせ、それがそのまま続けばこんなところにもいないし、帝国によって滅ぼされていたからもう存在すらしないだろう。


 「だが、転機が訪れた。帝国か王国か、はたまた救国だったのか。今になってはわからないが、村を襲ってきた騎士団がいた。」


 「奴らは家を焼き、畑を荒らし、人を殺してはもてあそび、物を略奪していった。女性の尊厳が失われることもあった。」


 「まさしく、地獄の風景にふさわしく、その時に私はある女の子を隠して、村の象徴であったあの剣を取った。」


 「その後はすべてを滅ぼして、私一人になってしまった。あの女の子が生き残っているかを探したがどこにも見当たらず途方に暮れていたところを救国に拾われたってところだった。」


 すべてを聞いて、その後にすぐに質問が飛んできた。


 「もしかして、そのある女の子って」


 ドークスの質問はいつも鋭い。おそらく予想していた通りだろう。


 「そうだ、ここにいるシアハだ。どうしてこのタイミングで、と運命を呪ったよ。村を襲ったやつを倒した後に一緒にと思っていたからな。」


 「そのあとは聞いたことがあるかもしれない。救国に拾われて、あとはそのままだ。」


 懐かしむように、窓から空を見上げる。もう、何年も前のことだし、シアハが生きているとは思わなかった。だから、初めて会った時に言葉が詰まった。


 「救国に習い、剣の所有者を団長とする。もし、私が死んだらシアハを頼む。」


 表情がこわばり、無茶を言っているのがわかる。だが、それでもいいのだ。まさか私がバトンを投げる側になるなんて、救国に入ったばっかの私には到底想像もできなかっただろう。

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