第四話 勧誘?
「ありがとうございました」
そう頭を下げながら部屋を出る。扉を閉めてから一度深呼吸をする。
確実に落ち着くためだ。
外に出て、ふと空を見上げてみるとすでに日は落ちている。もう夕飯の時間になっていた。
今日あったことが頭の中をめぐる。おそらく、今度遠征に行くことになるだろう。それだけは確実だった。
「は~、どうなるかな」
一言、つぶやいてしまう。これからの不安が胸をめぐる。確実なのは不定であることだけである。
考え続けても仕方ないので、一度食堂に行きご飯を食べて自室に戻ることにした。今日はここまでで明日に向けて頑張ろうと。
次の日、朝起きた時にはすでに、日が昇っており珍しく寝坊をしてしまっていた。
今日も所長のところに行かなければ、昨日の時にまた明日話そうといってしまった気がしたから。
今日は一層と晴れていてちょっと気分がよかった。
慌ただしく駆け巡っている研究員たちを目に見ながら所長のところに向かう。
いつも思うが、来るたびに前よりも忙しそうにしていて、この人たちにも休養が必要なんではって思う。私みたいになってしまうか、それとも自分の興味のみで動いている人もいるかもんね。
「失礼します。シアハです」
中に入ると所長一人で書類を片付けているところだった。書類は山のようにあって邪魔したかなと思っちゃった。
「おっと、来たかい。昨日の続き、と行きたいところだがちょっと詰まっていてね。手が回らないんだよ。」
しゃべりながら、書類をさばいているところから本当に切羽詰まった状態なんだろう。手伝えることあるかな。
「なにか手伝えることありますか」
「うーん、そうだねえ。...これかなぁ。」
そう言って、整頓された書類のところから一つ取り出した。一枚の紙。
渡された紙を読んでみるといろんな雑貨が書かれており、時々、専門性のある危ないものまで。
「これって、何ですか?個人的なものってわけでもないでしょうし」
「これねえ、備品の買い足しだね。まあ、日常的なものから専門性のある危険なものまで、危険なものは救国騎士団の制服を着ていれば何とかなるからね。」
救国騎士団の制服には複製できないようにバッチのような刺繡がされているから見分けがつきやすい。
それに、ノームオイル系統は一般の人からは忌避されやすい。近づかない人も多いだろう。だから、私のような人が来るとお店のひとびっくりしそう。
「まあ、緊急性は低いんだけど数日以内にはやってほしいことだし、だけどやる人がほとんどいないから放置されがちで、最終的にはお金出すからと言ってほかのところにやってもらうことが多いんだよね」
そう愚痴るようなしゃべり方で言い始める。確かに、ここの人たちが積極的に外に出るとは思えない。それもいろんなところに回るとなると。
「仕方ないですね、買い物が終わったころには話しできるくらいには机開けといてください」
「ありがとうだよ。ちょっと待ってね。お金がないはずだから事務の人からお金を受け取れるようにしとくし、買ってきたものを置く場所も指定した紙を書こうか。」
所長は白紙の紙にすらっと書いて、ハンコを押して渡してきた。
渡された紙だと適当過ぎないかなと思うけれどもこんなところで嘘つくわけもないしと。
「これ本当に使えるんですか?なんだか適当に思えるんですけど...」
「大丈夫だよ。その紙にあるハンコが本当のことが書かれていると証明しているし、前も同じことがあったからね。事務の人も慣れているよ」
そう話をしながら、書類をさばいている姿を見てすぐに行く必要がありそう。というか邪魔になると思うから。
「わかりましたよ。では、午後には戻ってきますね」
「頼んだよ」
忙しそうな所長を横目に、さらっと外に出る。
メモの内容を読みながら歩いていく。本当にペンが足りないみたいなものからノームオイル溶媒が足りないとか絶対ほかの人にやらせたらやばいでしょみたいなのが全然ある。
これ本当にいいのかなと思いながらい受付のところから事務の人に案内される。
案内されて話しかけてきたのは気のよさそうなおじいさんだった。
「おっと、もう来たのかい。というかこんな小さい子に任せて大丈夫かね」
「心配はいりませんよ。私、これでも所長くらい知識がありますから」
胸張ってそういう私を疑いの目で見てくるが、書類に書いてあるハンコを見て、仕方なく了承する感じになった。
「だが、あいつが言うならいいんだろう。ほれ、これがリストと金じゃ」
そう言って、さっき渡したリストとお金をくれた。結構はいいているように見えてびっくり。こんなするかな。
「そうそう、余ったのは持ち帰っていいぞい。いつもそうしているからな」
「それ、本当に許可取っているんですか?」
「何、許可出すのがこっちだから気にすんなって」
あきれに近い感情を抱きつつも、まあちょっともらえるお金が増えてラッキー程度に思っておこう。
「わかりました。では、行ってきます」
「おうよ、気をつけてな」
おじいさんにそう言われながら研究棟を出る。さて、まずはどこから行こうか。決めてあるのは日用品のような危なくないものからかな。
そう思いながら、久々に市場に出ると思いつつ、歩みを進めていた。
あいもかわらず、活気のあるように見える市場はいつ見てもきれいに思える。みんな、それぞれやることをやって頑張っているのだろうからね。
それにしても、買う場所はいろんなところにあるからちょっと迷ってしまう。
「ごめんくださーい」
そう言いながらいろんなお店に入って、いろんなものを買った。文房具から食器?、トイレットペーパーまで、ていうかこれがなかったら大変すぎるものが結構ある。
「一度、持ち帰るか。」
人ごみの中でぼそりとつぶやく。こんなの誰も聞いていないだろうけれどね。早く、行かないと午後になってしまう。それに、ご飯を食べる時間が無くなったら泣いちゃう。
「うっ、意外と重い」
重い荷物を運び、なるべく早くと思ったが途中で力尽きて三十分ほどその辺で座り込んでいた。疲れるもんは仕方ないって。
そんなことを思いながら、座りつくしていたところにある一人の男性が近づいてきた。
一応、警戒するに越したことはない。が、なぜか正装で、しかも迷うことなくこっちに向かってくる。
より一層警戒することをやめない。ただ、私が持っている物資を奪いに来たとかではなさそうだった。
普段は使わない、隠し持っているナイフを取り出す準備といざというときに逃げれるように荷物を地面に置く。
奴はある程度の距離のところで一度止まり話始めた。
「おっと、そんなに警戒しないでもいいじゃないですか。わたくし、ヴェルツバイと申します。ただの商人ですよ。そんなに害することはないですって。」
「本当に?何が目的だ。」
私は警戒態勢を解かずにずっと奴がいつ動き出すかをうかがっている。こいつ害することはないとか言いながらかなりの強さがあると見込める。そんな人が不用意に近づいてくるの怖すぎ。
「おっと、お急ぎでしたか。では、簡潔に。シアハさん。わたくしたちが所属する、新道教会に来ませんか。」
「何それ、絶対変なことしてるでしょ」
「そんなに恐れなくてもいいですよ。いいでしょう。わたくしたちはこの世界を救うために身を粉にして働いているんですよ。ほら、灰生物の駆除とか」
両手を広げながらご高説するように話し始めている。その目は必ず、こちらに向けられながらだ。
いつ逃げるかを考えながらあいつの話を聞く。ここまですがすがしいほどに怪しいと何かを見落としている気がしてならない。
「それにですよ。シアハさんも一番気づいているはずです。ノームオイルがいかに人類を害しているか。それによった遺物の処理ができていないことが。」
「それは........」
確かにそうだと納得してしまう。だが、ここから離れることはないと決めているのに、奴の言葉に惑わされる。聞けば聞くほどに、心を惹かれるような何かがある。
「おかしい」
そう、つぶやいた時に、救世主が現れる。後ろから女性の声が聞こえて、現実に引き戻された。
「シアハさーん。そこで何しているんですかー。」
大きな声で話しかけてきたのはルスベリー先輩だった。思わず、振り返って確認してしまい。一瞬奴から目を話してしまった。
しまったと思ったときにはすでに遅く、あの刹那で逃げられてしまった。
「何していたんですか」
「えと、信じてくれるかわからないですけどなんかヴェルツバイって名乗る変な人に勧誘されていました。」
正直に答えても、さっきまで話していたやつが周りに見当たらない変なことを言っているように聞こえてしまうだろう。
「えーっと。救国騎士団の人を勧誘するのはいけないことだと周知の事実なんです。だけど、そういうことをしてきたってことは”敵”である可能性が高いです。どんな奴ですか。まだいますか」
「それが、ルスベリー先輩のほうを向いた時にはすでにいなくて」
「ますます意味が分かりませんね。その人とは少しお話する必要がありそうですね」
その言葉を言っているルスベリー先輩の顔が相当怖かった。何処か遠くを見ているというか殺意にこもった目だった。正直に言うとかなり怖い。
「あ、すいませんでした。怖かったですか。」
切り返すようにすぐに笑顔になって話しかけてくれる。正直こっちのほうが怖くなくてうれしい。
「大丈夫ですよ、あいつが気になりますけれど」
「そっちは私が調べておきますから、これ研究棟のおつかいの荷物ですよね。一緒に運びましょうか」
返事を聞く前にすでに、小分けにされている荷物の片方を持っていた。これだと全部持ちそうだったからすぐに片方をもって、ルスベリー先輩の後ろをついていく。
それにしても、あいつ何がしたかったんだろうか。ノームオイルの精製と灰生物について詳しそうだったし。




