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第二話 無駄ではないのかも

話を切るように所長はしゃべり始める。気にしていないと言いつつちょっと気にしているような口調で。


「結界について話をしようじゃないか」


 そういうと、場の空気が変わるのが肌から感じる。ピリッとするような雰囲気になり、さっきまで陽気だったプロテアさんも一気に真剣な感じになった。それもそう、この問題が解決しない限り、安寧が崩れ去る可能性を否定できないからだ。


 「シアハには情報共有として話すが、まずは結界が崩壊するのはすでに確定している」


 「そう...ですか」


 「非情だが、確定している。」


 対抗策を思いつかなければ何ともならないということか。今までは結界のおかげで灰生物およびキメラなどの外にいる危険な生命体から逃れることが出来ていた。ゆえに、巨大でどんな生物でも見つけられるほどに大きいものを作り出すことに成功している。


 「直すことを諦めたのですか」

 

 直すことができるなら、今すぐにでもやっているだろう。ダメもとで聞いてみるが、所長の暗い顔によってそれは否定されてしまう。そこにフォローを掛けるようにプロテアさんが話し出した。

 

 「そうですよ。まあ、下手に触って今すぐに壊れたら最悪ですし」


 「それはそうですけど」


 うつむいてしまうのも仕方がない。現状打つ手がないのだから、それこそ結界を張っている古代文明が残した装置を作るか、直すか。それが出来なければ何万人の被害がでるかがわからない。もちろん、救国騎士団として、その庇護下にいる人を守るのは役目ではある。けれど、人では届かないところがあるのは重々承知している。私も、プロテアさんも暗い顔が張り付いて取れない。黙っていた所長がしゃべりだす。まるで、言いたくないかのように。


 「いい知らせかはわからない。だが、おそらく君たちが行った古代都市に埋まっている可能性がある」


 その言葉の衝撃に驚きを隠せない。だって、あれほど探したのに何もなく、ほんとはあの遠征は何の意味もなかったのではないかと思っていたところだった。本当に、大きなことに目を向けすぎて何かを見落としていると思わなかったのだろうか。所長は驚いた私を置いてさらにしゃべり始める。


 「おそらく、キメラの出現からあの場所にはキメラしかいなかったということになる」


 「そうですね、灰生物の合体した生物ですから周囲の生物すべてを飲み込むやつなんでそうですね」


 言っていることは正しい。キメラの生態は、灰生物の進化の過程で最終的に飲み込んだ生物の数だけ変体する余地と強さを持っている。人間を取り込んだ時が最悪であり、本当に致命的になる可能性がある。それを体現するのが、遠征中にあったキメラであるということ。これがどうかかわってくるのかがわからない。


「報告でしか聞いていないのだが、もともとこの結界は灰生物を防ぐものだと記載されていた。」


「キメラは対象外だったということですか」


「そう捉えてもいいだろう。」


「でも、キメラって今のこの都市の結界で防げるといわれていますじゃないですか。何か変ですか。」


 話の先が見えない。キメラがいるから、もしかしたら結界があるのかもしれないということなのか、その装置自体が存在するのかはたまた設計図か。途中から聞いていたプロテアさんが話し始める。何かの資料を取ってきたようだった。


「所長~。言われた資料取ってきましたよ」


「助かる。次は時間通りに来てほしい」


「ちゃんと話が始まったあたりには取りましたって、そんな細かいこと気にしないでくださいよ」


 時間通りに行動するのは普通ではとは思うのだが、まあ細かいことかと思うから言葉を飲み込んで話を聞く。


「これを見てくれ、灰生物とキメラの決定的な違いと結界の研究についてだ。」


 灰生物とキメラの決定的な違いはただ一つ、生命体が一つか複数か。キメラは生物の集合体のような存在で殺しても分裂するとかがざらにある。それが、ノームオイルによって結合して混ざり合った結果なんか変な生物が爆誕したって感じなんだよね。だから、厳密には生物の群れが一つになっているみたいな感じ。


「汚染の進捗度について」


 研究はどれだけのノームオイルに侵されても大丈夫かが書かれている。もしかしてだけど、あれってノームオイルによって作られている?それにしてもかけらも感じられない。だが、もしそうなら作りがわかるかもしれない。たとえ、壊れていたとしても。


「ノームオイルでできているかもしれないですか。」


「そうだ、ありえないと思うだろう。」


「そりゃそうっす。私たちからはただの燃料としか思えないですから」


 私たちの周りのエネルギーは大体ノームオイルからできている。あれすごい燃えやすいものだからね。まあ、そのままだとあんまり燃えなかったり、いろいろ不便なものなんだけどね。ただ、固定概念は払拭することが難しい。


「ノームレゾナンスを行う燃料として、それとエネルギーとして燃やすものとして」


「そうですよね。だけど、もし、ノームオイルが別の性質を持っているとしたら」


「そりゃすごいことになりますけど、どうやって確認するんすか」


 プロテアさんの言っていることは本当にそうである。確認するために結界装置を壊したら本末転倒過ぎる。それに、一瞬で平穏を崩しかねない。ただの仮説のためにだ。


「それでだ、話を戻して、灰生物とキメラ決定的な違いは何だと思う」


 その問いに答えるには私には決定的な知識はない。だけど、おそらくだがノームオイルの濃度ではないかと思う。集合している生物だからそう考えるのは普通だと思う。


 「考えていることはいろいろあるだろう。ただ、一つ言えることはノームオイルの濃度になる」


 「集合しているからそこにあるノームオイルの濃度が上がっている」


 「それでだ。君たちの遠征部隊が回収した崩壊した建物から回収された資料について。」


 そう言って所長は私に複製された資料を渡してくれた。中に書いてあることはとても奇妙だった。まず、キメラが違う名称で書かれており、”進化体についてと”。進化体とは何なのかとは文脈からノームオイルであることはわかるが何から進化したかは書いてない。まるで既知のものであるように。


 「これって、昔はキメラがいなかったてことですか」


 「違うね。続きに、」


 そう言って続きを見てみると驚きのことが書いてあった。それは、ノームオイルの圧縮による、ノームレゾナンスの変化について。基本的にはあまり汎用性を持たせることが難しいノームレゾナンスだが、ノームオイルを圧縮することで現実に干渉し始める。それが、結界装置の正体だった。

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