表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見捨てられた天使シアハは、魔王か救世主か  作者: さわよ
第一章 廃都市探索編
27/34

第二十六話 今日から

「あれ?」


 重たい体を起こして、眠たい目をこする。まだ、日が完全に出ていない時間に起きてしまった。薄暗く、湿った大地がうるさく見える。木々のざわめきも同じだ。ベースキャンプにするにはいい場所だけどね。だけど、昨日はいろいろあったから。まず帝国騎士に攫われてしまった。あの時に使われたのは何だったんだろうか。突然、読んでいた文字が急激に重なり続け、意識を喪失した。


 そしたら、急によくわからない馬車の中に突っ込まれたんだよね。そして、私がいま落ち込んでいるすべての元凶キメラが馬車を粉々にしてわたしごと吹き飛ばした。もし、馬車ではなくキメラの攻撃が私に直撃していたら、きっと粉々になっていただろうね。あと、キメラがいなかったら死んでいた可能性は高い。しかも、救国騎士団の皆には生きているかもわからないそんな奴を助けに行かないといけなくなってしまう。生きていなかったら骨折り損である。儲けすらないよ。


 私は昨日のことをもっと振り返るために昨日書いた日記を読むためにテントに戻ろうとした。テントの中には昨日書き残したであろう日記とその横にイヤリングと懐中時計が置いてあった。今、死んだ上に灰になったアネモネとガベーラントが私に残してくれたものの一つであり、彼らはもういないことの証明にもなってしまうだろう。見るたびに思い出す、しかし、忘れるよりはずっとましだろう。


 感傷に浸っている間に、時間がたったのかぽつぽつと人の声が聞こえてくる。残酷にも明日がある人には今日を最大限に生き抜かなければならない。私のお腹がぐーとなってしまう。仕方もない、昨日から何も食べていないのだから、それに昨日寝る前に泣きすぎて嫌になるほどに体がボロボロになる感覚を押し付けられるようなそんな日だった。


 「仕方ないかな。」


 私は、日記の続きを書き込むよりもご飯を食べることにしようかな。昨日のことはほとんどのことが書いてある。帝国のこと、キメラのこと、アネモネとガベーラントのこと、救国騎士団の探索部隊のこと、団長のこと、そのすべてを書いて、忘れないように昨日のことは一生背負い続ける覚悟が必要なのかもしれない。決してなくさないように、イヤリングを丁寧に耳につけて、懐中時計を握りしめて行く。


 「じゃあ行ってきます。」


 誰もいない空間にそう話しかける。もしかしたら、返事があるのかもしれないと考えて。




 あれからしばらくたった後、朝ごはんを食べ終わってこれから撤退しようとそう決められていた。あの時に死んだほとんどが探索組で戦闘組でもあった。そうすると後ろの医療組と物資輸送組だけが残ってしまう。それでは、灰生物の襲撃一つでここは陥落してしまうだろう。だから一度、戦力の補強をするためにも帰らなければならない。それに、一度キメラが出てきたところは二度出てくる可能性を否定できない。よって、私たちは帰らなければいけない。そんなことを考えていると後ろから声を掛けられる。


 「シアハさーん。」


 振り向くとすでに飛びつこうとしているルスベリー先輩が眼前に迫る。どう考えても避けられない。


 「ルスb、むぐぅ」


 包み込むように飛びついてきた。その抱擁は優しく、とても突っ込んできたとは思えない柔らかさだった。と、同時に目の前が真っ暗にされて何も見えない。暗闇というより、もはや苦しい領域になる。やんちゃな小学生みたいな元気さを持っていて昨日のことがまるでないかったかのような。それでも、優しさが残っているのは私を気遣ってだろうか。さすがに、苦しいので全力で抵抗する。


 「あ、ああ!すいません、苦しかったですか」


 そう言って離してくれるが、手を握ったままで完全に話すつもりはないそうだった。心配するような目が私に焼き付いて離れなかった。


 「苦しかったですよ、ちょっといきなり過ぎますって」


 そう言って、否定をする。がしかし別にめっちゃいやってわけでもないから適度にね。きっと、私がもしかしたらふさぎこんでいるのかもしれないと思っていたのかもしれない。けれど、ふさぎ込んでいたらもうそれはどうしようもない。前に進むしかなくなったんだってあの時に思った。団長も、ルスベリー先輩も、きっと今までそういうことが起きてきたのだろう。誰かに見放されるか、見送るか。見放されるのもつらいだろうが、見送るのもつらいだろう。それに託されるときとかね。


 無粋にも私は今回のことでアネモネとガベーラントを殺したと思っている。あの時に、私が帝国に攫われていなければ、あの時に、キメラに抑制剤を刺していたら、そう考えが巡り、自分に責任を押し付けてしまう。いや、これで納得しないと崩壊してしまいそうで。


 「大丈夫ですよ。きっと誰も恨んでいませんって」


 「えぁ」


 その言葉に間抜けな声が出てしまう。まるで、心の中を見透かされたような感じがして仕方がない。実際、誰かにナイフを突きつけられているような感覚が昨日から抜けなかった。誰かがきっと恨んでいるのだろうと勝手にも思い込んでいたのか。


 「そんなわけないじゃないですか。だって、あの時にミスをしていなければガベーラントやアネモネ、他の隊員たちは死ぬことがなかったのかもしれないんですから。」


 「驕りですよ、それは。」


 その真剣な顔に私は怖気づいてしまう。何かがあったのか。それとも地雷を踏んだかのように私を見つめる。


 「あなただけではないんです。結果的にはシアハさんになるのかもしれないですがそんなことを言っていたらきりがないです」


 「すべてが自分で変えられるわけではないのですから。」


 「それは死者への冒涜になります。だから、自分を責めないでください。生きているのは私たちだけなんですから。あの時に、死んだ人の思いは私達にしか継ぐことができません。」


 そう言い建てて、最後に笑いながらこういう。


 「笑顔で、彼らを迎えられるようにそうしなきゃですよ」


 その言葉に強烈な、死んだ人への思いを感じ取った。そして、納得もした。確かにすべてが自分のせいではないし、それは他者の意思を無駄だと決めつけているに過ぎない。あまりに自己中心的な考えすぎる。だけれども、苦し紛れにも思える。


 「そうですね。確かにちょっと自己中心的な考え方だったかもしれません。けれどそうじゃないと足が止まってしまいそうに、なりそうなんです。」


 かなり、苦しい言い訳になってしまう。精神的に不安定になっているときに自分を納得させるだけの言い訳を自分に言い聞かせている。そんな状態じゃないと受け付けられない。あの事実が変えられないことに。


 「そうですね。前の私もそう思っていましたよ。自分が変えられなかったからだって。」


 「そうなんですか」


 ルスベリー先輩もそういうことを考えていた。いや、私のような時があったのか。どうしようもない暗闇にとらわれて、手足をもぎ取られたような感覚に。どこか遠くを見るように私に話しかけてきた。


 「ですけど、いつの日かあの時に全力を尽くしたそしてここまで運んできたことが運命であり、必然であったと。」


 「そして、これから起こることはすべて偶然で、でもちょっとの変化ですべてが変わってしまうと」


 「だから私たちはその時の一瞬の最善を尽くすしかないんですよ。」


 その言葉には絶望も、希望も何もなく。ただ、自分ができることの最善をすることがいつか未来を変えること。そう信じていないと出てこない言葉である。それに、残酷でもあり、楽観的でもある。

 振り向いたその背中に私はゆっくりと抱き着く。私のほうが背が低いから、首筋に頭を埋めるような形になってしまいいい匂いが漂う。


 「帰りましょう。そして、また今日から繋ぎましょっか」


 「うん」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ