第二十三話 絶望
遅れて申し訳ございませんでした。素直に言うとポケモンが面白すぎましたね。
「あ、れ。しんだはずじゃあ」
呂律の回らないほどに意識が朦朧としており、だんだんと現状を把握してくる。周りを見ると馬車の中のおかげで生きていることを理解した。周りは致命的なダメージを受けているが奇跡的に私だけ残ることが出来ていたと思う。それにしては、ケガが少なくて、まだ動けると思ってしまう。
「そとにでなきゃ」
外の状況を把握しようと、岩でふさがれた隙間を抜けようとする。細身の私ならいけるだろうと思い実行する。
「ちょっと狭いかも」
腰を岩に挟まれて、上半身だけ外に出ている形になっている。もう少し頑張れば抜けることが出来そうで、ほっそい腕に力を入れて抜けようとする。
「よいっしょっと」
外に出れて、改めて周りを見るとさっきのは岩ではなくて家の破片であることが分かった。さらにひどいのが周りが壊滅していていることだった。家は壊れて、礼拝堂のようなランドマークも壊されている。瓦礫の山が築かれており、破壊者は相当暴れていることがわかる。
考えを巡らせているときに、一つ大きな破砕音が聞こえた。奴は大体、馬車が来たほうにいるらしい。音の聞こえた方向とボコボコした地面の馬車の痕跡からそう思った。周囲は鉄筋コンクリートを破壊した跡。足を踏み外したら串刺しにされそうなほどに危険な足場を乗り越えて道を歩き始める。
案外血は出ていなく、難なく目的の場所に向かうことが出来そうだった。間違いなく、謎の生物と帝国か救国かどちらかが戦っているに違いない。それだけでもなんとか確認したかった。もっと言えば、おそらく救国騎士団が戦っていると思っている。
スパイのごとく、少数精鋭で来ているだろう。そんな奴らにあれほどの威力を出せる生物に打ち勝てないと思っているから。
私が歩く道はとても明るかった。空から届く、洞窟でも照らせるほどに強い何かによって。
しばらく歩いた後に、少し瓦礫の山があった。比較的に上りやすそうで、見渡すにはちょうどいいと思い近づく。瓦礫と言っても、岩の集まりのようになっていてほとんど崩れる心配がなさそうだった。
「いた!」
目の前に広がるのは数十人ででかい肉塊のような化け物に立ち向かう救国騎士団たちだった。ルスベリー先輩、ガベーラント、アネモネ。全員が役割をはたしていてちゃんと追い詰めることが出来ていそうに見えた。だが、私は奴を知っている。おそらく、灰生物の集合体であるキメラであろう。奴は取り込んだ灰生物のもとの性質をもち、人を取り込んだ時に唯一ノームレゾナンスを行使することが出来る。もし、奴が知性を持ち、私たちをもてあそんでいたら。押し込んでいると思い込んでいる私たちに漬け込む余地がある。育ち切ったキメラはほとんどの場合にノームレゾナンスを行使してくる。そして奴は育っているだろう。
奴を止めるには、圧倒的な火力でノームレゾナンスを行使される前に粉砕するか。それか、弱いノームレゾナンスであることを祈るか。今はもっていないがノーム技術を妨害する装置によってそもそも発動させないか。奴がノームレゾナンスを発動した時点で全力で回避することが推奨されるほどに厄介な存在。
私の荷物に突き刺す系のノームレゾナンス阻止装置がある。だから、私のバックがあればなんとかなるのだがどこかにないかとさらに視野を広げて周囲を見渡す。
そうすると、帝国騎士団の死体が見つかった。明らかにキメラに殺されていることがわかる。人ができないほどに四肢が曲がっており、頭がつぶれている。吐き気を催すほどの悲惨さだったが、誘拐したのも彼らだろうと思い彼らには運がなかったと思うほかない。死んだものを生き返らせることはできない。だから、救国騎士団のみんなは誰も死んでほしくないのだ。奴が、私の奇策に気づく前に。
バックは見つかった。けれども、キメラの背後。しかも、瓦礫が数枚あり取りづらそうだった。ひとまず、救国騎士団のみんなに知らせないと。
そう思い、救国騎士団の後ろに向かいだした。その間も、救国騎士団のみんなはキメラを抑えており、いつ消耗負けやノームレゾナンスを行使されて負けるかわからなかった。
「え!シアハさん!」
ありえないほど遠いはずなのにすさまじい観察眼によってあちらに駆け出す私を見抜くルスベリー先輩には驚くほかない。けれど、それを見逃すキメラでもない。互いに近づこうとするルスベリー先輩と私を止めるがごとく、全力で体当たりしに来るキメラ。当然、私にあたった場合、即死する。ルスベリー先輩もまともにあたれば例外はない。けれど、それを例外にしない人がいる。
「させないぜ、任せなって。」
ガベーラントの戦鎚によって奴の攻撃ははじき返される。よく見るとオーラのようなものを纏い、自身を強化していることがわかる。唸るように引き下がり、睨み付けるように間合いを取る。打撃に弱いのか、ガベーラントの攻撃が怖いのだろう。その間にも、ほかの隊員の攻撃は止まらない。
「生きててよかったです。ですが...」
生きていてよかったという感傷に浸るには余裕のない状況だと、ほかの人も思っているだろう。ただ、戦うにしても、互いに殺し切る手段がないように見える。だが、隠し持っている可能性は否めないのである。奴がノームレゾナンスを放ったその時に、壊滅する可能性は否めない。
「ルスベリー先輩!」
奴に切りかかろうとするルスベリー先輩を止めて、決めた作戦を話そうとする。私の想定では、奴はガベーラントの戦鎚を最も意識しているはず。だから、ガベーラントによって奴を後退させるか、横にどけるか。それをすればいいのでは。懸念としては受けてきた時に、バックごと消えてしまうこと。それか、私が取りに行くか.....。
近くに来てくれたルスベリー先輩に作戦を話そうとするが、包囲網を作って、バックのところに走ったほうが現実的になりそうと思った。
「ルスベリー先輩。奴はキメラだと思います。」
「そうですね。シアハさん。早く決着をつけなければなりませんね」
「そうなんですけど、」
近くで話をして、了承を得る。私が走りこむのは包囲が完全に終わった後に外周を走るようにとのこと。できれば、私がといいそうな顔だったが正面で抑えられる人や側面からの攻撃が十分な人があまりいない。もともと、これほど強いキメラを瞬殺するには、団長に頼るほかないほどに戦力が乏しい救国騎士団だったから必然だった。
「みんな!キメラを囲んで決めるよ。」
キメラが言語理解をしている可能性を考慮して、包囲よって殺害しようとしているように見せかけた。盾兵や後方支援がゆっくりと奴の行動範囲を狭めていく。最も、範囲を狭めているのはガベーラントとルスベリー先輩だった。ガベーラントはその火力で防御を必至であり、ルスベリー先輩は剣にノームレゾナンスを付与することによって一定の火力を出そうとしている。だが、決め手に欠けるうえに回り込んでいるときに気づいたのだが。やつは無意識にノームレゾナンスを使用している。薄い膜のように物理とレゾナンスどちらも軽減している。やはり、これを決めずに奴が暴走したときに致命傷間違いなしだった。
「あとちょっと。」
視線を釘づけにされた奴はこちらに気づくことなく私のバックを回収できた。これで、万が一のために持ってきた抑制弾がよく効く。そう思って、奴に打ち込もうとしたとき。
「え?」
野生の勘か、それとも包囲している人たちからの視線を読み取ったのか。わからないが、こちらに気づいた。しかも恐ろしいほど早くこちらに向かってくる。その、速度は誰よりも早く、気づいたルスベリー先輩がこちらに向かうよりも早く、そして奴の触手が私に命中しそうになったと思った。
だが、奴はなぞの行動をとった。なぜか、私の地面を攻撃してきた。命中すれば殺せるはずなのに。狙いはただ一つ、崩落だった。
「嘘でしょ!」
私が、立っている地面は崩れ落ち、周りのがれきとともに落ちていく。最後に見えた景色はルスベリー先輩がこちらに向かうのと落ちるのを確認していたキメラだった。




