第十二話 研究所へレッツゴー
部屋から退出した後、扉を開けたらガベーラントとアネモネが静かに待っていた。アネモネのほうは当然であるように振る舞っていたがガベーラントのほうは暇そうにしていた。手振りで早く出ようと伝えてきたから早めに外に出ることにした。
すでに日は上っており、太陽が眩しい。二人とも、制服を着ていて準備万端に見える。アネモネとガベーラントはこちらを向いて、話始める。
「では、シアハさん。昨日の続きをしましょうか。今日は研究所から行きましょうか。」
「俺らだと滅多に行けない場所なんだけどな。」
「そうなんだ。なんの研究をしているの。」
普通に考えれば、医療関係か...。あ、そういえば、ノードの研究をしているのではないだろうか。アネモネの話からノードをどうにかしようと模索していると考えられる。ただ、ノードは抑制することはできるけど完治することは難しいと思われる。それに、抑制剤もあまり量産できるようなものではないし。
「そうですわね。ノードの研究をしていることは周知の事実なのですが、他にもノームオイルの活用方法からノームオイルが何でできているかなど様々ですわ。」
「詳しい話はそこに行けばわかるから早く行こうぜ。俺には何もわからんからな」
悩むようなアネモネに対して、割り切っているようなガベーラント。二人とも、自分が何ができるかと何をしたいかが纏まっているのかな。ガベーラントからしたらノードが解明されようが結局のところ自分自身で人を助けられるかにかかっているのかも。そうすると私が出来るのはこの記憶のない知識だけの頭脳を持って誰かの役に立つことくらいなのかもしれない。
「そうだね。早く行こうか。案内頼んだよ。」
「もちろんですわ。」
「あ、ちょっとだけ待ってほしい。」
二人を止めて、話を始めようとする。二人ともこちらを向いたことを確認してから話し始める。不思議そうにしているが大したことを話すつもりはないよ。
「あのね。私、救国騎士団に入ることが決まったんだ。団長にも、認めてもらったからこれで本当に仲間になったね!」
二人とも驚いたように見えたと同時に納得しているようにも思えた。救国騎士団に入ることは彼らからしたらもしかしたら確定していると思っていたのではないか。
「ええ、改めて。救国騎士団にようこそ。私たちは歓迎しますわ。」
「歓迎するぜ。これで俺もセンパイってやつか?」
「まだ、どこに所属するか決まってませんの。早計ですわ。」
胸を張って、自慢するように話しているガベーラント。それに、呆れるように見えているアネモネ。これからはこの景色をたくさん見ているのだろうか。それとも、新たな人たちが来て彼のように先輩になってと思いを馳せる。
「ま、そういうことだ。はよ行こうぜ。」
「まあ、そうですわね。行きましょうか。ついてきてください。」
そう言って二人についていく、何気ない会話をしながら。
「ついたー!」
アネモネとガベーラントに連れられて、着いたのは無骨な建物に研究所と看板がついただけの建物だった。なんというか、近づきがたい建物で不気味な雰囲気が漂っていた。近づいていくと入口に人がたっていることが見えた。
「ようこそ、最後の天才さん。我々は君を歓迎するよ。」
「「最後の天才?」」
「困惑するのも無理はないか。」
最後の天才は私のことかな。無駄に多い知識があり、それが圧倒的な発想力と問題解決能力に貢献している。それにしても、アネモネもガベーラントも知らないのかな。それか、公国のことは知っているけどどんな人が天才と呼ばれていたのかは知らかったのかもしれない。
「困惑するのも無理はない。公国は徹底的に隠していたからな。救国騎士団の中でも知っている人は微小だろう。」
「じゃあ、なんであなたは知っているのですか。」
「それはな....」
ためるように黙ってこちらを見ている。顔に見えるどや顔が妙にむかつくがすぐに解消されることになる。
「私は、救国騎士団研究所所長。アルヴェインだ。事情は団長から聞いているさ。」
「あなたが研究所を仕切っているの?」
「もちろんだとも、まあ立ち話もなんだ中に入ろうじゃないか。」
彼はエスコートするように私たちを案内してくれた。古臭い扉を開けて、中に入るとそこにはいつものようにエントランスがあって、受付の人がいてと割と普通よりなのかなと印象を受ける。
その後、所長について行き、研究所内を歩き続ける。道中、何やら奇声みたいな声が聞こえたり、爆発音が聞こえたりとかなりのカオスだったのだった。けれど、所長曰く、「ここだとあんまり気にしなくてもいいぞ。いつものことだから。」と言っていた。それと、小声で爆破の奴は懲罰だなと恐ろしいことが聞こえたけど、聞こえないことにした。
そんなことしつつ案内されたのはノード研究室と書かれたところだった。
「ようこそ、ここはノードと言われる病気やノームオイルの活用とその安全対策など様々ことを専門としたところだね。プロテア、いるかい?」
「はーい」
呼ばれて、書類の山や実験器具がたくさん置いてあるところから少し奥のほうにいる女性の方が這い出てきた。膝までありそうな白衣に、手袋をして、顔全体を覆えそうな防護マスクをつけた人が出てきた。
「なんでしょーか、所長サマ。今忙しんですが。」
「重要なことだからちゃんとしなさい。君も会いたかったシアハさんが来ているのだから。」
「ま!!!!!!」
驚いて足から崩れそうになっている。それほどに私に会いたいとは前はどんな人だったのか想像がつかないんだけど。というか前にここにいたことでもあるのかな。
「あの、もしかして私ここに来たことありますか?」
「そんなことはないといえる。けれど、君が残した輝かしい功績は私たちのところまで届いているから。先駆者に挨拶をってところだね。」
「そうっす。シアハさん。私はプロテア。ここでノームオイル、ノードなどを専攻しています。会えて光栄です。」
敬礼するかのように挨拶をしてくれる。それほどまでに、前は研究者としての活躍があったと思われる。それも、一介としてではなく、大きな功績を残せるほどの人物であると思う。だが、今の私にはそう言われる資格はないと思っている。なんせ、記憶を無くしてしまっているから。過去のことは他人のように思えてしまう。
「挨拶ありがとね。知っているかもしれないけど、私はシアハ。ちょうど今日、救国騎士団に正式に入ることになったよ。」
「まじっすか。てことはもしかして研究所に来てくれるんですか。」
「あはは...それはまだわかんないかな。」
「まあ、そうっすよね。でも、私は待っているのでぜひこちらに来て一緒に研究しましょうよ。」
期待に満ちたまなざしは今の私には眩しかった。ぐいぐい来られてちょっと困っているところを所長が助け舟を出すようにプロテアさんを止めてくれた。所長に抵抗するように暴れようとしていたが、さすがに周りに書類に危ないものが入っている瓶、それに実験器具などがあって断念していた。




