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Ultimate Wars ー 才能なしの人生だった俺、宇宙の危機に人類の切り札として無双するー  作者: hanaXIII


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第八十九話 目の付け所

フィットルームの遮蔽空間の向こうで、静かに、しかし圧倒的な質量で解放された「ランクA」のフォース。

その桁違いのプレッシャーは、離れたデイルームにいるユウたちの肌をも容赦なく刺す。

フォースの扱いにまだ慣れていないシャクは、逃げ場のない強大な気配をダイレクトに浴びてしまい、その場に崩れ落ちるように震えが止まらなくなってしまう。

苦しむ仲間を目の前にして、ユウは自分にできる唯一の選択をしようとしていた。それが、すぐ目と鼻の先にいる飢えた獣たちに身を晒す、極めて危険な引き金になるとも知らずに――!

「シャク!! 大丈夫!?」

シャクは身体を丸めてガタガタと震えていた。

フォースを抑えていたため、身に纏うこともできず、ダイレクトにダークナイトの凄まじいフォースを感じてしまったのだった。

その理由を、シャクは途切れ途切れにユウに説明する。

「そ、そんな……俺はこのローブがあるから大丈夫なのか? それとも、まだ未熟だからそこまで感じ取れないだけなのかも……。」

ガシッ!

ユウは震えるシャクの身体を、両手で包み込むように抱きしめた。

「大丈夫、俺がいるから!」

「ゆ、ユウ!? あわわ……ユウ、ありがたいのですが、あなたのフォースが乱れています……。けど、ありがとう。」

(はわわ……これは、両方のフォースに耐えなければなりません! 耐えるのです! わたし!)

ユウの優しさと、遠くから響くダークナイトのプレッシャーの狭間で、シャクは必死に心を律しようとしていた。

◆

ブォン! ブォン!

青年は巧みにソードを振り回す。それはまるで、流麗なダンスを踊っているかのようだった。

「相変わらずの手捌きだねえ。よし! あたしのも試すか! さっき大都市で回収したところだし!」

パールも自身のフォースを解放して、ソードを荒々しく振り回す。女性ではあるが背は高く、そのスイングは豪快そのものだった。

「パール、軽く手合わせしよう。」

「はん! 軽く!? あたしは全力で行くよ! じゃないと、あんたはトレーニングにもなりゃしないからね! くれぐれもあたしの四肢を斬るんじゃないよ!?」

「ああ、承知した。いくぞ。」

ブォン! バシュ! バチバチ! ブォン!

二人のダークナイトによる模擬戦が始まった。

ピピピッ!!!

遠く離れた管制室でモニターを見つめるジョウ博士のメガネが、危険な数値を弾き出す。

(な、何というか数値、彼ら『ナンバー』らは桁違いの強さだ。まだユウたちには荷が重すぎるな……。)

◆

デイルームでは、シャクがまだ震え続けていた。

「どうしよう、シャクが辛そうだ。多分、半分は俺のフォースが乱れているせいだ。……よし! シャク、このローブを代わりに着てよ!」

ユウがローブを脱ごうとすると、シャクは驚愕して目を見開いた。

「そ、それはいけません! あそこにダークナイトがいるのです! 今ローブを取ったら、その瞬間に気配を気づかれる可能性があります!」

「だけど、シャクが辛そうだ。見てられないよ。大丈夫、もし何かあっても、ジョウ博士が何とか誤魔化してくれるさ!」

「そ、そんな悠長な……とにかく、それだけはダメです! あなたが今危険に晒されたら、この旅は、元も子もありません! ……うう!」

しかし、模擬戦の激しさが増し、ガラスの向こうからフォースの波動が伝わってくるたびに、シャクは痛ましそうに顔を歪めていた。

「これは、まだわたしが未熟なのです……。外にフォースを纏わずとも、姉は内へ纏うことができていました。わたしもそうならなければならないのです……。」

しかし、ユウはもう見ていられなかった。

シャクは冷や汗を流して、ついにはベンチに座っていることすら出来なくなっていた。ユウは、ひとまずシャクをベンチシートに横たえさせる。

(だめだ、このままじゃシャクの身体がもたない。このローブを一旦シャクに掛けて、俺は新しいやつを博士にもらいに行こう!)

「シャク! 俺は今から新しいローブをもらいに行くよ! だから、これ着てて大丈夫だからね!」

「ああ!? いけない! 取ってはダメです!」

ファサ……。

ユウが脱いだローブをシャクの身体に掛けると、遮断機能のおかげで、途端にシャクの呼吸は落ち着きを取り戻した。しかし、シャクは焦燥に駆られていた。

「は、早く新しいローブを! 気づかれてしまいます!」

「うん、今から取りに行ってくる。少し待っててね。」

◆

その時――。

ピクッ。

「ストップだ、パール!」

青年が鋭い声を上げ、構えを解いた。

「あ? なんだい!? これからエンジンがかかってくる頃なのにさあ!」

「何か感じないか?」

「んー? いや……ああ、なんか微かだけど、近くにフォースを発してるやつがいるねぇ。だけど、こりゃあ纏うというか、ダダ漏れなんじゃないのかい? 獣の類とかだと思うよ?」

「こんな場所に獣がいるか?」

「…………確かに。じゃあ、このお粗末なフォースは、人?」

「かもしれない。パールはあまり探知が得意ではなかったな。俺が探る。」

青年は目を閉じ、意識を研ぎ澄ませた。

フィットルームの外でその様子を見ていたジョウ博士は、心臓が跳ね上がるのを感じた。

(な、何だ?! いきなり模擬戦をやめて、まさか!?)

博士はそれとなく悟られないよう、ユウたちのいるデイルームの方をガラス越しに見る。

すると、ちょうどユウが自身のローブを脱いで、横になるシャクに被せているところだった。

(い、いかん!!! なんてことだ! シャクはフォースに当てられていたのか!? これは私の失態だ……シャクの分も最初からローブを渡しておくべきだった!)

その時、青年のダークナイトが、博士と同じ方向を見据えて細い指を差した。

「あれだ。あの二人のどちらかだ。」

(やはり勘付かれたか! 目の付け所もピタリだ……いかん! 私が上手く誤魔化さねば!)

青年は静かに歩み寄り、ジョウ博士を呼んだ。

「博士……。」

「はい、何でしょう? ソードがあまり手に馴染まなかったのですか?」

「いや、ソードは申し分ない、完璧だ。そうじゃない。実は気になることがあるんだ。あそこにいる奴らは何者だ?」

青年はユウたちのいる部屋を顎で示した。

ジョウ博士はその先に視線を向け、それから困ったように向き直る。

「彼らですか……。」

ジョウ博士が言いづらそうにしていると、すかさずパールが横から詰め寄ってきた。

「あん? あんた、あたしらを誰だと思ってんの!? さっさと誰だか言いなよ!?」

「やめろ、パール!! ――そうだな、顧客の情報は皆平等に管理されているのがここのルールだったな。すまなかった、ジョウ博士。」

青年がパールを制し、静かに引き下がる。

「ええ、その通りです。申し訳ございません。」

ジョウ博士がホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、青年はさらに言葉を続けた。

「なら、一つお願いがある。もし良かったら……そうだな……あの二人を……いや、彼を、ここに連れてきてくれないか? 何か、感じるんだよ。」

「そ、それは……。」

(そ、そうきたか! くっ……どうする!)

ジョウ博士の背中に、冷たい汗が伝わった。


第八十九話 完

第八十九話をお読みいただきありがとうございました!

シャクを助けるために迷わずローブを差し出したユウの優しさが、結果としてダークナンバーの青年の鋭すぎる探知能力に引っかかってしまうという、一瞬の油断も許されない凄まじいサスペンス展開にハラハラが止まりません!

「顧客の情報は平等」というラボの規律を逆手に取りつつも、静かに、しかし断れない威圧感で「彼をここに連れてきてくれないか?」と要求する青年の底知れなさ……! この絶体絶命の状況で、ジョウ博士がどのような機転を利かせるのか、次回が気になって仕方がありません。

ユウとダークナンバーの想定外すぎる接触は避けて通れないのか? そして守られたシャクは動けるのか――!?

続きが猛烈に気になる方、この緊迫した心理戦を応援したい方は、ぜひブックマークや評価、感想コメントをお願いいたします!皆様の応援が、次の熱い展開を紡ぐ最大の励みになります。

現在開催中のコンテストへの貴重な応援投票も、引き続きどうぞよろしくお願いいたします!

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