第八十六話 セブンスターへ
かつてない緊迫感と謎に包まれたまま、宇宙船は次なる目的地へ向けてワープを起動する。
光の線が収束した先に広がっていたのは、地球の物理法則では到底説明のつかない、驚異的な天体構造を持つ未知の領域。星々が異常なまでの近距離で自転し合うその中心で、一際異彩を放つ眩い光がユウたちを迎える。
これまでの常識がすべて覆る壮大な銀河の洗礼に、圧倒される一同。そして宇宙船が未知の星の防衛線を抜け、その内部へと降下を始めた時、ユウたちの目の前には息を呑むほどに美しく、どこまでも冷徹な「未知の文明」の姿が広がっていた――!
「というわけで、セブンスターにはどのみち行くことになりました。」
アリスは昨日ユウと話し合った結論を、皆に伝えた。
「そうですか。わかりました。わたしはひとまずユウのそばにいます。フォースの感知と、ユウのフォースの波を把握しながら行動しますね。」
「わたしは、ひとまずラボの研究員さんたちと情報交換するね!」
「うん、わたしもリスタとラボメンバーとのやり取りが主になるから、少しだけ別行動になるかも。でも、みんな、くれぐれも気をつけてね。念のため、ユウはいつも通り、ラムのコピーも付けておいてね。」
「わかった。今回はあまり役に立ちそうにないけど、気をつけます。」
ユウは少しかしこまる。
(今回ばかりは無茶はできないな……みんなを危険な目に遭わせるわけにはいかない!)
「じゃあ、一気に近くまで移動するね! ラム!」
「承知しました。ワープ、起動。」
ラムの応答と共に、操縦室の周辺モニターあたり一面が鮮烈な光の線へと変わる。空間を歪め、ログのある座標へと一気に躍進する。
ピタッ。
宇宙船の加速が緩やかになり、目的の星の近海で停止した。
「みんな! 前を見て!」
リスタが興奮気味にはしゃぐ。
「あ、あれが、セブンスター……本当に、星たちの距離が近い!」
「あっちも見て! すごく光る星が!」
「な、なんだあれは!? た、太陽!? いや、それよりも凄い光だ!」
「この辺りは、あの光る星を中心に成り立っているの。セブンスターは、あの七つの星の拒否感を絶妙に保ちながら自転もしているわ。ふふ。地球じゃ考えられないよね、ユウ?」
「まったく原理がわからない……。まあそうか、俺は物理学者でも天文学者でもないから、見たままを受け入れるしかないし、聞いても理屈なんてわからないや……。しかも、俺がいた地球なんて、誰かが作り出した環境に過ぎないんだよね? なら、なおのこと理解するなんて無理だ……。」
「だね。世界はこんなにも広い。まだまだ知らない星も、たくさんあるってこと。」
リスタもシャクも、新鮮な反応を示している。彼女たちもまた、自分の生まれ育った星のことしか知らなかったからだ。
「ラボとの通信が確保できました。これより、セブンスター、スターサイド7へ向かいます。」
ラムのアナウンスの後、宇宙船が滑り出す。他の星々の重力圏をなぞるようにぐるりと回りながら、スターサイド7へと進路を取った。
「色んな色の星があるんだな。やっぱり星によって環境が全然違うのかな。」
「ええ、大きさや環境は異なることがほとんどね。元々どんなふうに星として形成されたかにもよるけれど。機械を基本とする領土はほんの一部だったりするし、大抵は自然と共存している感じよ。ただ、スターサイド7に関しては陸地が多いから、一番『機械都市』って感じね。」
「さすが、アリスは詳しいね。7以外の星にも行ったことがあるの?」
「チラッとね。それこそ、研修期間に少し訪れただけ。ラボが7にあるから、ほとんどはそこでの研修だったけれど。」
(やっぱりエージェントになるには研修プログラムがあるのか……。まあそうか、星を跨いで任務をこなすんだ、トレーニングや研修はみっちりやらないと、エージェントとしての任務を遂行できないよね。アリス……どんな努力をしてきたんだろう。)
今は随分と表情が明るくなったが、出会った頃はもっと無機質なイメージだった。その最初の印象が、今でも強く残っている。
「じゃあ、着陸するよ! 安心して。移動中にみんなの言語ラーニングは終えているはずだから、この星の人とも自然に話せるわ。むしろ多言語をラーニングしているから、ある程度は理解できるはずよ。」
星の大気圏を抜けて内部に入ると、そこには圧倒的な機械都市が広がっていた。辺りを見渡しても、視界を埋め尽くすのはすべて金属とガラスの建造物。その合間を、無数の飛行車がせわしなく飛び交っていた。
「す、すごい……。これが機械都市……辺り一面、建物だらけだ。」
宇宙船は都市の上空を静かに浮遊しながら、ラボの座標へと向かう。
「あ、ここからは何も無い陸地だ。」
密集していた都市がふっと途切れ、しばらく平坦な地平が続いた。
「わあ! 海もある! この辺は地球と似てるなあ。」
「見た目はね。でも、中身は全然違うわよ。自然の摂理そのものが地球とは異なるの。地球は色々な生命体がごちゃごちゃし過ぎているし、足りなさすぎるものもある……あれはあれで絶妙なバランスだけど、この星は地球に比べるとシンプルよ。」
「じゃあ、海に見えるものも、海とは言えないのか。」
「ええ、水源地帯と呼ばれているわ。見て、波が見えないでしょう?」
「確かに……大きな水たまり、ということか。じゃあ、雨は降るということだね?」
「ふふ。色々気になるみたいね。それもまた概念や構造が異なるわ。」
「なんだか、色々細かく知ろうとすると、頭が混乱してくるなあ……。」
「ニューラやクリプタは割と地球に環境が近かったからね。星たちを渡ることで、ユウの知る世界が広がってきているという証拠よ。」
「うん。あんまり深く考えるのはやめよう。自分に何か影響があるとき以外は……。」
「ユウ、顔が疲れてるよ! 大丈夫?」
リスタが心配そうにユウの顔を覗き込んできた。
「ありがとう、リスタ。今更だけど、常識が上書きされるって、すごいエネルギーを使うんだなあって……。」
「大丈夫! わたしたちも同じだから! 何かあったら一緒に勉強しようね!」
リスタは満面の笑顔でユウを励ました。
(か、可愛い……。こんな若い子だって前向きに考えてるんだ、俺ももっとシンプルに考えよう!)
パチン!
ユウは気合を入れるように、自分の頬を両手で叩いた。
「よっしゃ! もうごちゃごちゃ考えるのは止めた! とりあえず、これまで通り自分のやるべきことだけに集中しよう!」
「そうね。でもユウ、この星ではあんまり頑張り過ぎないでね?」
「あ、そうでした。気をつけます。」
そのやり取りを聞いて、四人はどっと笑った。
水源地帯を越えると、宇宙船は再び陸地へと到達する。
すると、先ほどとは比較にならないほど、さらに巨大な建造物と巨大都市が姿を現した。建物の一つ一つが規格外に大きく、その材質も光沢を放つ未知の合金で美しく並んでいる。空中には幾重もの光やネオンが走り、電光掲示板や巨大なホログラムがそこかしこで明滅していた。
「こ、これはすごい……! さっきより遥かに近代的だ! いったいどんなところなんだ、セブンスターのラボは!」
第八十六話 完
第八十六話をお読みいただきありがとうございました!
ついに新章「セブンスター編」へ突入です!ワープによる圧倒的な宇宙の移動描写から、物理法則を超えた七つの星の全貌、そして地球とはまったく異なる「水源地帯」の概念など、SFならではの壮大な世界観が一気に広がりましたね。
未知の常識の連続に頭を抱えつつも、リスタの可愛すぎる笑顔に救われて気合を入れ直すユウ。そしてアリスの過去の努力に思いを馳せるなど、仲間たちの絆もより深く描写されていて胸が熱くなります。しかし、最後に現れた超近代的な超巨大都市……この光の街のどこかに、あのダークナイトが潜んでいると思うと、一瞬たりとも油断はできません!
次なる舞台、セブンスターのラボで一体どのような出会いと宇宙船の改良が待っているのか!?
続きが気になる方、ユウたちの新たな冒険を応援したい方は、ぜひブックマークや評価、感想コメントをお願いいたします!皆様の一言が、次の激動の展開を紡ぐ最大の励みになります。
現在開催中のコンテストへの熱い応援投票も、引き続きよろしくお願いいたします!
また、もう一つの世界で展開する人生やり直しファンタジー**『Another Life 〜現実が詰んだので、フルダイブVRで人生やり直します〜』(N0377LN)**も大好評連載中です。本作『Ultimate Wars』での超近代都市を巡るスリリングな旅路とあわせて、こちらのVR世界でのドラマチックな冒険もぜひチェックしてみてくださいね!




