第八十五話 宇宙船の改良
トウ姫の破天荒なサプライズにより、無事にシャクを迎えて宇宙へと飛び立ったユウたち。
次なる目的地「セブンスター」での宇宙船改良に向け、一同は祝杯を挙げる。しかし、AIのラムからもたらされたのは、七つの星を揺るがす全面戦争の危機と、宿敵ダークナイトの潜伏情報だった。
一刻の猶予も許されない緊迫した状況の中、ユウは決意を新たにする。だが、そんな緊迫した夜の裏で、ユウの「安息のバスタイム」を脅かす最大のハプニングが再び幕を開けようとしていた――!
「では、あらためて、シャク! わたしたちの船へようこそ!」
「ありがとう、みんな。こんな日が来るなんて、想像もしていなかった。ずっと星の中で暮らしていくものと思っていましたから。」
四人は食事をしながら乾杯した。あらためてシャクの仲間入りを祝う。
「ところで、次はセブンスターとお伺いしましたが……。」
「うん! この宇宙船のラボはすごく特殊なの。だから、宇宙船を改良しなくちゃいけなくて!」
「そう。元々この宇宙船はセブンスターで発注したものだから、話は早いわ。」
「アリス、もうセブンスターのラボには連絡が取れてるの?」
「それについては、わたしから……。」
「え、誰!?」
「ラムです。」
「ああ、ラム! そうか、機器はすべてラムと繋がっているのね?」
「その通り〜。だから、わからないことがあったらラムも含めて聞いていいからね。」
「ラム、ラボからはどんな連絡がきているの?」
リスタは真剣な表情で尋ねる。
「宇宙船の改良は快く応じてくれました。ただ……。」
四人の間に沈黙が流れる。
「現在、七つの星で抗争が起こりつつあるとのことです。七つの星のうち、一つの星が『セブンスターの統一』を計画している様子です。これまでは各星々がそれぞれ機械の開発に対して他の星との外交に力を入れており、互いに補い合うという形でしたが、それを武力で統一しようという流れになってきているとラボから情報が入りました。」
「せっかく上手くいっていたのに、なぜだろう。」
「セブンスターには様々な生命体がいるわ。なら、野心を抱く者がいてもおかしくない、ということよ。」
「もう一つ。セブンスターの星には時折、ダークナイトも潜伏していますので、十分に注意が必要です。」
「え!? 彼らも!?」
ユウは食事の手が止まる。
「そうです。彼らの持つソードは、精密な機器で出来ています。そのため、時折オリジナルを発注するために滞在しているのです。」
「もし遭遇したら、気をつけないといけないね。けど、何もしなければ、向こうから襲ってくることはないんでしょう?」
アリスも一旦、手を止める。
「ええ、むやみやたらに攻撃してくることはないわ。むしろ彼らはどこに潜んでいるかわからない。上手く街に溶け込んでいるものもいる。でも、大抵はローブを纏っているから、警戒はできるわ。」
そこでシャクが話に入る。
「フォースでもわかるわ。そして、わたしたちのフォースも向こうに感知されるから、気をつけないといけない。わたしとリスタはある程度、制御のコツがわかっているけれど、ユウは……。」
「まだ不完全……だから俺が奴らに感付かれる危険が高い、ということか。」
「しかし、フォースの高い種族もいます。なので、むやみに襲われることはないでしょう。ただ、目をつけられる可能性はありますね。」
「嫌だなあ……プライベートでも、やんちゃな子や、やばい人たちに目をつけられたことなんてないのに……。」
「で、でも、今のユウならダークナイトたちとも戦えるんじゃない?」
リスタは励ますように言う。
「いえ、かなり危険よ。シャクもそう思うでしょう?」
「はい……かれらのフォースの熟練度は姉をも凌ぐ可能性があります。だから、姉も捕まりましたし、心してと言ったのです。」
「で、できる限り目立たないようにしよう……。」
「そうね。もし奴らがいたら、ラボで大人しくしているのがいいかもね。ラボにも協力してもらいましょう。ラム、念のためラボへ報告しておいてくれる?」
「かしこまりました。」
シャクとアリスは深刻な顔をしている。
「まさか、ダークナイトだけではなく、星の間でも争いが……。」
「巻き込まれないようにしなきゃ。まずは辿り着いてから、ラボの博士たちに状況を聞いてみるわ。」
食事の後、シャクの部屋を案内して回る。宇宙船は広いため、何十人もが暮らせるような構造になっていた。
ユウは食事の後、風呂に入ろうとしていた。
(さっきまでみんな外にいたし、絶対に大丈夫!)
シャー!
扉を勢いよく開ける。しかし、脱衣所には誰もいない。
(よし! いや、問題はこの後だ! 大浴場に誰もいないかだ! 俺はフォースがおかしいらしいから、変に探知もできない! この前までは気配を感じられていたけど、今は意図的に制御しなきゃいけないんだ!)
ガバ!
大浴場への扉を開けるが、誰もいない。
(よし! 今日はハプニング無しだ!)
素早く身体を洗い、いざ浴槽に入ろうとしたその時だった。
「ユウ、至急操縦室までお願いします。」
ラムからのアナウンスだった。
(………………)
ユウは着替えて操縦室へ到着した。
「お待たせしました。」
「ユウ? どうしたの? そんな暗い顔して?」
「いや、別に。大丈夫だよ。どうしたの?」
ユウは少し不貞腐れていた。大浴場でのんびりできると思っていたからだ。
「ラボから通信が入ったの……ダークナイトは今、セブンスターに来ているって……。」
ユウは一気に目が覚める。不貞腐れている場合ではなかった。
「じゃ、じゃあ、セブンスターへ行く時期をズラす、ということ?」
アリスは首を横に振る。
「いいえ、ラボからもう一つ……。あと少しで、スターサイド1(セブンスター第一惑星)から、一回目の警告攻撃が発動するらしいの。だから、宇宙船を改良するには、本格的な戦争が始まる前に、ラボのあるスターサイド7に降り立ち、ラボ内へ行く必要があるの。じゃないと、戦争が始まったら、いつ終わるのかわからない。いえ、ラボが無事かもわからないわ。そうなれば、宇宙船は不完全なまま、そのうち飛ぶこともできなくなる。」
アリスとユウはしばらく沈黙する。しかし、ユウの答えは決まっていた。
「アリス、行こう。どのみち宇宙船を直せるのはここしかないんだよね? なら、もう行くしかないよ。ダークナイトは、ラボにかくまってもらって、やり過ごそう。」
そんな簡単に上手くいくとは思えないような、真っ直ぐな提案。しかし、それしか選択肢がないのも事実だった。アリスはしばらく沈黙したが、すぐに顔を上げる。
「そうね、明日、みんなに報告して、すぐに向かうわ。」
そう言って、二人はそれぞれの部屋に戻った。
ユウは自室で考えていた。もしダークナイトに見つかり、みんなが危険な目にあったら、守り切れるだろうかと。
「いかん! 考え出したら眠れん! よし、ひとっ風呂行くか。さすがにもうみんな寝ただろう。」
浴室には誰もいない。
(ふう。だよな。よし、さっき入れなかったから、今度こそ。)
ガラガラッ。
扉が開くと、ユウは固まった。
「お? ユウ、また偶然ねえ。」
「もしかして、シャクがいるから狙って来たの?」
「ご、ごめんなさい、ユウ。またあなたの入浴を邪魔して! すぐに出るから!」
「あ! シャク! 前! 前を隠して!!」
「あ!!」
バシャバシャ! ドボーーン!
「ふう。危なかったねえ、シャク! ユウに見られるところだった……あれ? ユウがいない?」
ウイーン……。
ユウは、脱衣所横の部屋のマッサージチェアに座っていた。
(ふぅ。まあ、こんなことだろうと思ったよ。フォースは抑えているが、なんだろう、少し先が見えた気がしたよ。シャクが湯から上がる前に対応できたとはね……って、俺はいつになったら安心して風呂に入れるんだーーー!!)
第八十五話 完
第八十五話をお読みいただきありがとうございました!
ついに語られた次なる舞台「セブンスター」の過酷な情勢。武力統一を目論む勢力の台頭に、最高峰の技術を誇るラボの危機、そして街に溶け込むダークナイトの影……。一刻を争うシリアスな展開にハラハラさせられましたね!
しかし、そんな重い空気を一瞬で吹き飛ばすのが、我らがユウのお風呂ハプニング。ラムのアナウンスでの強制中断からの、深夜のリベンジ入浴で見事な(?)撃沈っぷり。シャクのウブな反応と、ユウの魂の絶叫には笑わずにはいられませんでした!
果たしてユウたちは警告攻撃が始まる前にスターサイド7へ無事に着陸できるのか、そしてユウが安心して湯船に浸かれる日は来るのか……!?
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