第八十一話 最終出勤
ネビル、ラボ、フェアリーリングによる協定が無事に結ばれ、ユウもまたネビル都市での「最後の仕事」を終えた。
フェアリーリングの王宮で開かれる、仲間たちとの束の間の歓送迎会。
和やかな宴の中で、アリスの口から「三日後の旅立ち」と、次なる目的地「セブンスター」が告げられる。
しかし、その席で明かされたトウ姫のもう一つの正体、そして夜のテラスでシャクに告げられた衝撃の真実が、物語をさらなる未知なる展開へと導いていく――。
「よし、これで最後の仕事は終わり! お世話になりました!」
「うむ、本当に惜しいが、宇宙の命運はユウにかかっておる。もし危なくなったら、いつでもここへ逃げてこい。それまで我々も力をつけておく。」
「ありがとうございます!」
ネビルスタッフ、そしてユウは敬礼をして、フェアリーリングへ戻った。
フェビルは父親の引っ越しも兼ねて、休みをもらっている。
◆
「お! ユウが帰ってきた! おかえりー!」
リスタが笑顔で手を振る。
(相変わらず可愛いな。)
「ただいま。もうみんなは集まってる?」
「うん! みんないるよ! 行こう!」
王宮の中へ入る。そこにはアリス、シャク、そしてフェビルもいた。
「妾を待たすなど、どの身分じゃ、ユウよ?」
「すみませんトウ姫様、皆へ挨拶をしていました…………ぷ!」
トウとユウは同時に吹き出す。
「あははは! もうこのくだりは定番じゃのう〜、毎回真面目に返してくるのが、もうツボでたまらんわい!」
「俺もですよ〜、なんでいつも同じこと言ってくるんですか? 時間には間に合ってるのに。」
すっかり仲良くなった二人。トウもユウを認めている証拠だった。
「ま、お前は妾の胸を揉んだんじゃからのう、すっかり仲良くなったもんじゃ!」
「えええええええ‼︎」
一同がパニックになる!
「ちょ、トウ姫様、誤解を招くような言い方はよしてください! わざとじゃないんですから!」
「すまんすまん! みなの反応が見たくてついな! 安心せい、修行時の不可抗力じゃ!」
……………
一同は静まり返る。
そこで、アリスが口を開く。ちょうど食事の準備が出来ていた。
「みんな、食べながら聞いて……次の行き先は、セブンスターのスターサイド7に行くわ。そこで船を改良する。三日後、旅立つことにしたわ。」
シャクとフェビルは少し寂しそうな反応をする。
「お、おう! そうか! 頑張れよユウ! 俺はお前のこと、忘れないぜ!」
フェビルはお酒を一気飲みして泣いていた。
「お、おい、あまり酔うなよ? ぷぷ、お前らしいな。」
「ユウ、アリス、リスタ、本当にありがとう。姉を救い、星を一つにしてくれた。わたし一人では絶対に無理だった……感謝しています。」
「仲間なんだから、こんなにかしこまらないでよシャク! 俺たちは自分たちの意思でここにきたんだ。みんなには色々なことを教わった、感謝なら俺の方だよ。」
シャクは口元を押さえて泣いていた。
一人で姫という立場を背負っていたこと、姉の救出、すべてが重圧のもと生きていた。
「シャクよ。これからは妾がおる。お前はもう姫ではない。自由じゃからな。」
「え? じ、自由……?」
「そうじゃ、自由じゃ。何か不服か?」
「あ、いえ、その……いきなり自由と言われても、どうすれば……」
「どうもこうもないわい、好きなように生きたらいい。いつ起きてもよい、いつ寝てもよい、どこで、何をしてもよい。最高じゃろう?」
「そ、それはそうだけど……」
「まあ、そういうことじゃ。どう生きていくかは自分でよく考えたらいい。今までフェアリーリングを任せていたからのう。」
みんな温かくシャクを見守った。
「ところで……いつになったら気がつくんじゃ、アリスよ? 妾はずっと待っておるのに。」
「へ? なんのこと? 気づく?」
「仕方ないのう。ほれ。」
トウは髪を縛り、眼鏡をかける。
「あ! ああああああ! トウ姫って、あのトウ博士だったのーー!!? え!? 何が何だか……」
「本当に忘れられたかと思ったわい! 何日もおるのに気が付かんとは!」
「ま、まさか……第二アースを出て行ってから、一度も……故郷に帰るって……それがここだったのね。」
「あの頃のお前はこーんな小さかったのう〜、足元にしがみついてきて可愛かったわい〜、こんなレディになりおって!」
「トウ博士ー‼︎」
ガバッ! ガシャーン‼︎
「待て! 食事がひっくり返っておる‼︎」
アリスは幼少期、ラボの博士たちが親代わりだった。トウはラボメンバーとしてこの星を離れ、研究の手助けをするために同行していたのだ。
アリスは人目も気にせずに甘えた。行き先を告げ、各々自由となった。三日後に備えて準備をしてまわる。
◆
夜。
ユウとアリスはまたテラスにいた。リスタは自室でスヤスヤ寝ている。
「トウ姫様が、アリスの育ての博士の一人だったとはね。びっくりしたよ。」
「本当にびっくりした。でも、思い返したら思い当たることがたくさんあるの。わたしが勉強をサボったり抜け出したりしても、絶対にトウにはバレてた。これ、フォースの力だよね?」
「ぷぷ、うん! そうだね、トウ姫様レベルになると、近くで何しててもすぐに感知されちゃうからね!」
「必死で掻い潜ろうとしてたのに〜、無駄だったんだ〜、あははは! いい思い出。いなくなってからは寂しかったなあ……でも、こうしてまた会えた。頑張って生きてて良かったよ。」
「……アリス……」
(きっと、アリスは過酷な訓練を受けてきたんだ。生きてて良かったって……何度も苦しい思いをしたに違いない……)
「あと三日、お互いに思い残すことがないように過ごそう!」
「うん! ありがとう、ユウ!」
◆
別の時間帯。シャクもテラスへ来ていた。星を見上げて考え込んでいる。
(姉様……わたしはどうすれば、何をすればよいのでしょうか……)
「眠れぬのか?」
「姉様!?」
「悩んでおるみたいじゃのう。役割が急に無くなったから無理もない。じゃが、妾はもう十分に外の世界を見てきた。今度はお前の番じゃ。」
「しかし、わたしには目的が……姉様のように具体的にしたいことがないのです。」
「ならば、お前のことを少し話そう……もう気がついているかも知れぬが、お前と妾とは血が繋がっておらぬ。なぜだかわかるか?」
「…………やはり、そうだったのね……いえ、理由は知りません。」
「お前はのう……神の血を引く子じゃ。」
「神?……話が飛躍していて、想像がつかない……」
「神……それは周りがそう呼んでいるに過ぎん。しかし、それ相応の力を持つ存在なのだ。神と呼ばれる種族がこの銀河のどこかにおる。じゃが、それを観測したものはわずか……お前はその神々の中の一人の末裔。リスタと同じ、血は薄いが、先祖返りの状態じゃ。」
「末裔……」
「そして、お前が気にかけておった少年、あれは神々の直系じゃ、おそらくな。」
「ということは、アークとわたしは繋がりが……」
「同じ血を引く者同士、感知しやすかったのだろう。どうじゃ? お前は自分自身のことも今まで知らんかった。じゃが、外に出ればいろんなことが待っておる。それを知りたいとは思わぬか?」
「確かに、どこか……姉様とは違うなとは思ってた。見た目ではなく根本の違和感。神々……そうだったのですか……」
「まあ、あくまで推測とフォースの感知のみで言うとるに過ぎん。それに、お前は生命や植物を好いておろう? 昔、本を書きたいと言っておったではないか?」
「確かに、自然は好き。でも、姉様と、この民と離れて暮らすなど、想像もつかない……」
「まあ、妾が言えるのはこの程度じゃ。どんな道を選んでも、それはお前の人生。じっくり考えるのじゃな。」
そう言ってトウは去っていった。
(やはり、わたしはクリプタの民ではなかったのですね……では、わたしはいったい何なのですか……ダメ……頭の中がぐちゃぐちゃ……)
結局、シャクはモヤモヤしたまま次の日を迎えるのだった。
神々とは、そしてアークとの因果は……。シャクはどんな道を選ぶのか。
第八十一話 完
第八十一話をお読みいただきありがとうございました!
前半のユウとトウ姫の定番の掛け合いからの「胸のハプニング」暴露での大騒ぎにはクスッとさせられましたが、中盤でのアリスとトウ博士の感動的な再会には胸が熱くなりました。アリスの子供時代の思い出が、まさかフォースの力で監視されていたためだったとは微笑ましいですね。
しかし、ラストでシャクに告げられた「神の血の末裔」という衝撃の事実。アークとの繋がりや自分のルーツに激しく葛藤するシャクは、一体どのような答えを出すのでしょうか?
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