第七十八話 何か一つでも
アリスとの間に、もどかしくも温かい変化が訪れた夜。
しかし、迫り来る宇宙の危機を前に、ユウは自分の力不足を痛感していた。
「何か一つでも技術を体得したい」
その強い想いを胸に、ユウは再びトウ姫へと直談判し、新たな修行へと身を投じる。
地球の民にとって未知なる領域――「浮遊」と「引き寄せ」の特訓が、いま始まる!
翌日。
「なんじゃユウ?妾に何か用か?」
「トウ姫様、会談までまだ数日あります。俺に、何か稽古をつけてください!」
「また稽古?」
トウは少し考える。
「お前はもう覚醒した。お前のフォースの性質を見る限りでは、戦闘系に特化しているようにも感じる。ならば、それ相応の使い手に学んだ方が近道じゃ。変に癖をつけてもいかんからのう。」
「そ、そんなぁ。せっかくここにいるのに、何も体得できないなんて……リスタは色々できるようになったのに、俺は……」
トウはため息をつく。
「リスタはもともとここの血が濃かったんじゃ。だから教えやすかったしリンクもしやすかった、ただそれだけのことじゃ。戦闘には向かん。」
「でも、浮遊や物を動かすのは、戦闘でも使えるんじゃ……」
「あんな程度じゃあ、逆に危険じゃ。最低限のオプションみたいなもの。本人もそれをしっかり自覚しておる。」
ユウは項垂れる。
「ううう、何か、なんでもいいから……」
トウはまたため息をつく。
「そうじゃのう。ちなみに、今の望みはなんじゃ?これができるようになりたいとか、具体的にはあるのか?」
「フォースがいったいどのくらいのことが可能か、俺にはわかりません。ですが、リスタがやったように、空を飛んだり、物を引き寄せたりできることはわかったので、それらはできるようになりたいです!」
トウは困り顔でまたため息をついた。
「仕方がないのう。なら、基礎だけじゃぞ?それ以上は使い手に習い、戦闘と一緒に鍛錬するんじゃ。」
「あ、ありがとうございます!」
さっそくトウとの修行が再開した。
ダダ漏れ状態のフォースを仕舞い込み、集中モードで解放する。まだダダ漏れではあるが、ここまではスムーズになった。今度は、外郭を捉え、自分の身体を浮かせたり、物を動かしたりする修行に入った。
◆
数日が経過した。
スー。
ユウは少しだけ浮くことができるようになっていた。
「やったー!!ついに!ついに夢が一つかなったぞ!どうですか、トウ姫様!!」
「フン、流石に飲み込みが早いのう。褒めてやろう。」
ユウは着地して大はしゃぎしていた。
地球の民にとって、空を飛ぶことは漫画やSFの世界のもの。それをできるようになった時の喜びはとてつもなかった。ユウはたまらずトウに抱きつく。
ガシ!
「ありがとうございます、トウ姫様!」
「ちょ!?な, にをしておるーー!!離さんかー!そ、そして、ちゃんと制御もせんかー!」
トウの顔は真っ赤になっている。
ユウは我に返った。
「あ!ああ!すみません!つい嬉しさのあまり!」
「よ、よい。それほどまでに浮遊が嬉しかったのかのう。」
(なんということじゃ。妾に寄ってくる羽虫どもには嫌悪しかなかったが、ユウには嫌な気持ちになっとらん!)
「あと、物を引き寄せるのはこうですか?」
グン!
トウの横に置いてあるグラスをユウは引き寄せた。かなりスムーズだ。
「ほう、密かに練習しておったのか。それは何より……お、おい!待て!よせ!」
グーン!
「あ!しまった!わあー!」
ドガ!
ユウはトウまで引き寄せてしまった。
「お、おのれユウ、こんな辱めを!」
「わあ!ごめんなさいー!」
トウの胸がユウの顔面を覆い尽くしていた。
「わ、わざとじゃないんです!ごめんなさいー!」
「フン……そんくらいでキャーキャー言うと思ったか?ほれ、妾は魅力的じゃろう?」
「え?あ、はい。とても美人だと思います。」
ピク。
トウは怒り顔になった。
「なんじゃー!そのそっけない態度はー!もう知らん!後は自分でなんとかせい!」
「え、えええ、なんで!?そ、そうか、恥ずかしかったんですね!?すみません!この通りです!許してください!」
「そうじゃないわいーー!」
(羽虫どもはすぐ妾の魅了にかかっておったのに、なんじゃ!ユウのやつめ、胸まで触ったくせに顔色一つ変えんとは!失礼な奴じゃ!)
「ところで……前から気になっていたのですが、その'戦闘と一緒に教えてもらえ'と言っていた使い手は、どこに行けば会えるのですか?」
トウは振り向いて真剣な顔になる。
「そうじゃな……妾から言ったことじゃ、教えてやろう……ひとひとまずそこに座れ。」
修行をある程度終えたユウ。その先の道、いったいどんな道が待っているのか。
第七十八話 完
第七十七話をお読みいただきありがとうございました!
ついに「浮遊」と「引き寄せ」をマスターしたユウ。地球人としてのピュアな大喜びから、トウ姫を巻き込むまさかのハプニングまで、ユウの天然っぷりと無自覚な強さが光る回でした。トウ姫の乙女心(?)を完全にスルーするユウの鉄壁さも流石ですね!
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