第六十七話 解放?
トウ姫のスパルタ指導のもと、テレパシーの特訓を続けるユウ。
しかし、強引にこじ開けられた深層心理の扉の先には、ユウ自身も知らなかった「巨大な何か」が眠っていました。
真面目で誠実なユウの心に封印されていたものとは一体……。
『よ、よろしくお願いします!』
トウは、スーッと息を吸い、集中する。
…………ピーン………
ここは、ユウの潜在意識の中。
トウは、無事にチャンネルを合わせることに成功する。
意識内のイメージの中ではあるが、自分自身も肉体を持ってその中にいるイメージだ。
ユウの潜在意識を探ると、巨大な箱のようなものが見えてくる。
(………とりあえず、"フォース"に関してはこれじゃな。妾ができるのは、この蓋を解放することだけ。他は、また"別の何か"じゃ。
さて、覚悟を決めて、やるかのう。)
ギイ……
トウの目の前に光が溢れてくる。それを浴びてしまい、へたり込みそうになるトウ。
「んぐ!なんちゅうフォースじゃ……ああ……!
いかん!……踏ん張るんじゃ!
シャクはおそらくこの段階ですぐに止めただろう!あやつはピュアすぎる!
よし!もう少しで………!」
ピカッ!!
溢れた光は、そこら中に広がり、トウは飲み込まれた。
あたり一面光の中。
(な、なんという感覚……こりゃいかん……気持ちいい……じゃない!!ここからが本番だ!
ええい!核は!ユウはどこじゃー!)
トウは顔を真っ赤にしてユウを探す。
身体も震えていて、立つのがやっと。
(どこじゃー!どこじゃー!ううう……気を抜くと、おかしくなりそうじゃー!)
しばらく進むと、何かを発見する。
(おや?あれは……ユウか?………小さい頃の姿かのう?……しかし、なんと禍々しいものを纏っとるんじゃ、まるで闇……。アンバランスすぎるわい。)
トウはゆっくり近づく。
すると、ドス黒いオーラを纏った、小さなユウがトウに気がつく。
「お、お姉さん、誰?」
(は、話しかけてきおった!こんなはっきり実態があるやつは今までおらんかった!)
「妾は、トウ。フェアリーリングの元姫じゃ。」
「………ああ、トウ、姫、様。うん、なんとなく、ユウの記憶にあるね。」
「お、おぬしは、ユウではないのか?」
「合ってるよ。僕もユウ。だけど、ユウの一部。そんな感じ。不思議だけど。
ずっと、ここでじっとしてたんだ。
いつか、誰かが僕を迎えにきてくれるって、ずーっと願ってる。地球で、一人、そして、今も一人、蓋を揺らす人はいるんだ。
けど、ユウがすぐにロックしちゃう……だから、僕はずっと一人なんだ。
僕は、出てきちゃダメみたいなんだ。」
(………なるほど、ユウは意図的にセーブしているというわけか。
自信のなさか?シャクとのチャネリングで、以前の記憶は読ませてもらったが。
おそらく、地球での不遇が、この結果を招いたのであろう。
さて、ユウと関わって浅い妾が、どこまでこれを解き放てるか……)
「お姉さんは、どうしてここに来れたの?
人が訪ねてきたのは、初めてだから、びっくりしたよ。
しかも、とても美人で、妖艶だね。」
褒められた瞬間、トウの全身にフォースが纏わりつき、突き抜けた。
ガク。
トウは顔を真っ赤にして、ぺたんと膝をつく。
「う、くっ!」
(い、いかん!な、なんて心地よいんじゃ!こいつに褒められると、天にも昇る喜びを感じる!
これが、色欲のフォース……ここまでの力……お、恐ろしい…シャクが恐ろしいと言ったのは、あながち間違いでは無かったのう……)
「わ、妾は、お前を助けにきた。
ここから出るんじゃ。」
「え?僕、ここから出てもいいの?けど、これを見て……この黒いのが、とても重たいんだ。動けないんだよ。」
トウは、ゆっくり近づいて、ユウの両肩を掴む。
ビリビリビリビリ!
フォースがトウの全身に伝わる。トウの顔はもう真っ赤を通り越している。
(うううう、ユウめー!無事に抜け出せたら、覚えておれー!!)
そのまま、トウは、小さなユウを抱きしめた。
カッ!
「う、うあああ!はあああう!ぐ!意識を保て!」
シュワー!
黒いモヤが少しずつ薄れていく。トウは、フォースを自分へ流し込み、解き放っている。
(後少しじゃー!!)
カッ!!
その瞬間、光が爆発し、二人とも飲み込まれた。
パッ
ユウの意識から、テレパシーが途切れた。
「あ、あれ……なんで、俺、泣いてるんだ?
そして、この安心感は……なんだか、すごく落ち着く。頭がすごく軽い……」
ユウはハッとして、トウを見る。
すると、トウはぐったりして横たわっていた。
『トウ姫様!!』
ユウはごく自然にテレパシーで語りかけていた。
ビクー!
トウは、身体をびくつかせて、身体を起こし、ユウをじっと見た。
「………はぁ、はぁ……」
顔は赤く、息も荒い。マラソンを走り終えたかのような見た目だ。
『ぶ、無事に、お前のフォースは、解放できた……と、思う……な、何か異変はあるか?』
『意識がなかったところから、急に目が覚めて……すると。なぜか俺、泣いてました。
けど、すごくスッキリしているというか。
なんというか、何でもできそうというか。
よくわからないんですけど、何かを理解した時の、あの感覚に近いです。』
『なら、成功じゃ……ふん、手こずらせおって……今日はもう妾は無理じゃ……また明日にしよう。』
『ありがとうございます、トウ姫様!なんだかよくわからないけど、救われた気持ちになったんです。
また、明日、よろしくお願いします!』
ユウは退勤した。
出来事は一瞬だが、時間にして数時間が経過していた。
(いかん、今日はもうあいつを直視できん。そして、疲れた……妾はもう寝る……)
◆
「お、お、おかえりなさい、ユウ。
ぶ、無事に終わったみたいね。」
シャクが顔を真っ赤にしている。
「ただいま。うん、トウ姫様から聞いたの?
そうなんだ、何だか不思議な感覚だけど、スッキリしたような感じなんだ。本当に感謝してる。」
ユウの雰囲気は少し変化した。
アリスはよくわからない様子であったが、シャクとリスタはこの日、終始顔が赤かった。
そう。ユウはフォースを解放し、今は垂れ流しの状態にある。
二人はフォースを感じ取れるので、なんとなく違いがわかるのだった。
『姉さん!明日から制御を教えてください!でないと、こちらがもちません!』
『わーとるわ!今日だけ休ませい!
や、やばかったんじゃぞ?少しは労われ……』
『ど、どんな感じでした?その……』
『ん〜?自分で繋いで、確かめてみぃ。気絶しても知らんぞ?クックック』
『あーん!もう!姉さんの意地悪ー!』
こうして無事に?ユウはフォースを覚醒したのだった。
第六十七話 完
第六十七話をお読みいただきありがとうございました!
ユウの封印が解け、ついに能力が開花……と思いきや、まさかの「副作用」に赤面するヒロインたちが可愛らしい回となりました。ユウ本人が一番自覚がない、というのがまた面白いですよね。
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