第六十五話 親
トウ姫のスパルタ指導のもと、着実に「テレパシー」の感覚を掴み始めるユウ。
脳を直接刺激される過酷な修行の合間、ユウはフェビル、アリスと共に穏やかな昼休憩を過ごします。
そこで明かされたのは、底抜けに明るい相棒・フェビルの意外すぎる出生の秘密。
「赤いネビル人」というキーワードが、平和な都市生活の裏側に潜む巨大な運命の歯車を回し始めます
あれから、毎日トウ姫とユウの修行は続いている。
『だいぶ慣れてきたようじゃな。そろそろ次のフェーズにいくとしよう。
今、頭に刺さっとる感覚、それは正しい感覚じゃ、今度は、その違和感を、押し返してみろ。』
『え?押し返す?イメージしづらいなあ。』
『そのままじゃ、刺さっとるイメージをまずしてみぃ。その刺さったものを掴んで引き抜く感じじゃ。想像でいいからやってみぃ。』
『こ、こんな感じかなあ……んんんんん。』
『?! お、そうじゃそうじゃ、いいぞ!そのまま、妾の方へそれを届けてこい。妾の額のあたりじゃ。』
『んんんんんん……こ、こんな感じですか?』
プツン。
「ぶはー!も、もうダメだ。」
『休憩じゃ。外で休んでこい。』
捕虜の部屋から出ると、ネビル人のスタッフが立っていた。
「お、おい!大丈夫か?すごい汗だぞ?!」
捕獲室前の兵士はユウに水を差し出す。
「あ、ありがとうございます。」
(この人も、優しい。みんな基本は優しいんだよな。)
「やっぱりフォースか?噂には聞いていたが、あんまり無茶するなよ?そうだ、ここは見ておいてやるから、早めに昼休憩いってくるといい。」
ユウは早めに休憩に入る。
休憩室は、捕獲室のすぐそこだ。
休憩室には誰にもいない。
ユウは近くの椅子に腰掛けて、リスタの弁当を食べる。
「誰かの弁当なんて、ばあちゃん以来か?ここ数日毎日リスタに作ってもらってる。
地球のみんなは元気にしてるだろうか……」
しばらくすると、ファビルとアリスがやってきた。
「おお!ユウ!今日は早かったんだな!
今日は新入りも一緒だ!っても、お前ら知り合いなんだろ??アリスから聞いたぜ!」
ファビルは少し離れてジュースを買いに行く。
「今日はご一緒しようかと思ってね。大丈夫、フェビルには、宇宙を旅していて、お金が貯まったらまた次の星へ行くってことだけしか伝えてないから。」
「ま、まあ、嘘ではないよね。さすがアリス。しかも、それで納得するのも笑えるけど。」
「今日は俺の奢りだ!飲め!」
「ありがとうファビル。ところで、おかあさんの様子はどうだ?」
「ああ、ちゃんと医者に診てもらえて、今は回復してるぜ!回復してきて肌艶も良くなってよお!するとどうだ?うちのかあちゃん、意外と美人だったんだ!今までやつれてたから、気が付かなかったぜ!耳もよう、なんかこうピンと尖って、まるでお伽話の妖精みたいな見た目だな!」
?!
二人は目を開いて驚く。
(まさか、ファビルの母親は、フェアリーリングの人?)
「お父さんは、たしか、ネビルの人だっけ?」
「ああ!かあちゃんはそう言ってたな!
赤色のネビル人だそうだ。」
?!
(おいおい、それって、一般のネビルじゃないんじゃないのか?
フェビル、実はサラブレッドだったのか。)
「俺はほぼ、かあちゃん寄りだが、体格と、どこかしらに鱗みたいな箇所もあるから、そこがとおちゃん似って感じだろうな!
ユウの親はどんな感じなんだ?!」
「俺は、産まれてすぐに施設に預けられたから、親はいないんだ。それから、高齢の里親に引き取られて、大きくなるまで祖父母に育ててもらったんだ。」
「そうか!すまねえ!いらんことを聞いちまったな!」
「いや、大丈夫だ。むしろ、それで良かったと感謝してる。ファビル、今のうちに、親孝行しとけよ?」
「おうよー!お前のおかげで、今はたくさん飯も食わせてやれてる!感謝してるぜ!」
「ファビルが頑張ったんだよ。さすが天才!」
「おおお!俺は天才!さあ!昼からも頑張るぞ!」
(くす。頑張るって言っても、モニターと睨めっこだけどね。)
アリスはクスクス笑っていた。
三人は休憩後に持ち場に戻る。
◆
『さあ、続きをやるぞ。押し返すのはだいぶ出来てきたみたいだな。
じゃあ、今度は何もないところから、自分の頭の中から針を出して、妾の額に突き刺すイメージでこい。』
(よし!!やっと次のステップだ!早くテレパシーを覚えるぞー!)
第六十五話 完
第六十五話をお読みいただきありがとうございました!
ユウの過去と、フェビルの驚くべき血筋。二人の対照的な背景が描かれ、物語に一気に深みが増しましたね。トウ姫の言う「赤いネビル人」が何を意味するのか……。
そして修行はいよいよ、自ら発信する段階へ!
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