第六十三話 しれっと
救出へのカウントダウンが始まります。
ユウが提案したのは、正面突破ではなく、権限を逆手に取った「しれっと」抜け出す大胆な潜入作戦。
ネビル軍の「実力主義」を味方につけ、ついに重要捕虜――トウ姫の監視という、作戦遂行に最適なポジションを手に入れます。
しかし、そこで触れたのは、敵であるはずの軍人たちが持つ意外な「情」。
複雑な想いを抱えつつ、ユウは運命の監獄へと足を踏み入れます。
「とりあえず、明日、監視の人数をみてくるよ。
もし、俺一人で監視できそうなら、カメラさえどうにかできたら、多分抜け出せると思う。」
「そんなあっさりと?」
「ああ、これを使うんだ。」
ユウは、首元のリングを指差す。
「これで見た目を変える。そして、服も変えたら、簡単に抜けられるね。手錠を破壊しないといけないんだけど、これ、もし俺に権限があったら、しれっと外して出ていけるね。」
「カメラが戻ったらどうするの?もしかして、そこからダッシュ?」
「いや、監視室前の兵士を、フェビルにして、一芝居打ってもらう。脳筋だから、細かい作戦は無理だ。悪いけど、気絶させて、捕虜になってもらう。」
「え?ファビル、かわいそうだね!」
「しかし、怪しまれずに過ごすにはこれしかない。気絶してたらさすがに咎められないだろう………多分。」
「俺は、脱出しても、次の日も仕事には行く。
なんだか、ネビルのこと、もっと知る必要があると思うんだ。
だから、救出したら、シャクとリスタは一旦フェアリーリングへ戻ってね。」
「なるほどね。内部に潜入し続けて、今度は、中から暴いていくのね。
ユウ、なかなかやるわね。エージェントみたいになってきた。」
「ひとまず、捕虜の救出が最優先で、真相を暴くのは、その後かな。まだ、確認しないといけないことが多いけど、こんな感じでどうかな?」
「いいわ、必要なら情報が入り次第、また作戦会議をしましょう。
リスタ、周辺の様子はどう?」
「うん。みんないい人ばかり。思っていたのと全然違って戸惑ってる。
当初は、逃げる時に、身の回りの処理をどうしようとは思ったけど、ここまでゆったりしてる環境なら、しばらく潜伏して出入りしていても、安全そう。」
(そうなんだよ。思いのほか都市内部は平和なんだ。侵略しようとしてるやつらとは思えないほどに。)
◆
「今日からお前の持ち場はここだ。
この中の捕虜を監視してもらう。
もし、身体に異変があれば報告するように。」
「捕虜は、どこか病気なんですか?」
「いや違う。異変があるのはお前の方だ。捕虜は、フォースエネルギーとかいう目に見えぬ力を使いこなすらしい。
これまでのお前の働きをみて、もし万が一の時に、耐えられるのはお前しかいないと、上は判断した。」
「わかりました。ちなみに、わたしの装備や、権限はどこまででしょうか?もしもに備えて、ある程度の権限を与えてくれるとありがたいのですが。
あと、ここの扉の見張りもそうですが、たまに見にこられる方が、もし手錠や檻などのキーを持っており、その、フォース?で操られる可能性はないでしょうか?」
ユウは、"備える"ことを強調し、それとなく権限を主張してみる。
「なるほど、やはり、お前は他の連中と違い、優秀なようだな。
装備はこれだ。
手錠や檻、電気刺激関連は、このデバイスでコントロールできる。
お前がピンチになったら、すぐにコントロールしてかまわない。」
(これは好都合だ!楽に手錠を外せるぞ!よし、もう一芝居。)
「あと……ちょっといいですか?」
ユウは、兵士長へ耳打ちをする。
「………お前、意外とやばいやつだな。……そうだな。あからさまなことは上には止められている。もしするなら、毎日機器のチェック時間があり、全ての監視システムを一旦止める時間がある。捕虜の排泄や清拭も、その時間で行うことになっているのだ。やるならその時にしろ。いいか、相手はヤバいやつだ。くれぐれも、お前たちがやられるなよ?
仲間を失うのは嫌だからな。」
(なんか、軍人だけど、俺たち部下を割と思ってくれてるなあ。んー……ほんとにここの人たちは、悪い奴らなのか?)
「わかりました。気をつけて監視を行います!」
そして、ファビルはなんと、見張りではなく別の場所への配置であった。
その場所は、なんと監視室。
(結果オーライだけど、これは好転するんじゃないか?ちょっと考えるとするか。
その間、トウ姫となんとかコミュニケーションをとる方法を探さなきゃ。
シャクに橋渡ししてもらうのなると、負担が大きいんじゃないかなあ。)
「おう!ユウ!俺は監視塔の監視室に決まったぜ!お前は捕虜の監視だろ?!
いやあ、お前と出会って出世しまくりだぜ!
監視を止める昼休憩には、そっちにいくからよ!また昼飯一緒に食おうぜ!」
「おめでとうフェビル、うん、一緒に昼飯食おう。」
(なんか、憎めないやつだなあ。
さあ、俺の方は準備整ったし、帰って報告するかな。)
ユウは、監視室前の見張りに挨拶をして、退勤した。
何気に、ユウはここのスタッフらから、一目置かれていた。礼儀正しい上に、戦闘力も高い。
上層部の間では、しれっと幹部候補に名前が挙がっていたのだった。
第六十三話 完
第六十三話をお読みいただきありがとうございました!
ユウの優秀さが裏目に出る(?)どころか、トントン拍子に幹部候補にまで登り詰めてしまう展開には驚きですね。フェビルの監視室配属という幸運も重なり、準備は万端。
いよいよ次回、トウ姫との対面……彼女は何を語るのでしょうか?
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