第五十九話 フェビル
病床の母を救うために働く快活な男・フェビル。
理不尽な奴隷環境の中でも光を失わない彼に、ユウはかつての仲間の面影を重ねます。
しかし、そんな二人を嘲笑うかのように現れる、絵に描いたような悪役の影。
ユウの静かな怒りが、炭鉱の空気を一変させます
「フェビル、それだけで足りるのか?」
「おうよ!うちは貧乏だからな!これだけで十分だ!」
「子沢山なのか……尊敬するよ。」
「ちがーう!俺はまだ独身だ!家で、かーちゃんが寝込んでるんだ!だから、俺が働くんだ!」
「なら、なおのこと偉いよ。ほら、これはお菓子だけど、腹の足しにしてくれ。」
「お、おまえ、いい奴だなあ!サンキュー!」
「……………」
(フェビルは悪いやつじゃ無さそうだ。このお菓子……味がクセになって、いつも携帯するようになったな。
さて……どんなことに作用するかわからないが、数日フェビルの働きを見てればわかるか。とはいえ、多分明日には俺たちは引っ越すんだけどね。
奴隷……こんな純粋なやつが?……どこへ行っても、あるんだな、こんな理不尽なことが。)
「うおおお!ユウにお菓子をもらったから、なんだか力がみなぎってくるぞー!」
フェビルは早々に休憩を終わらせて、作業に取り掛かる。
先ほどよりも鉱石を積み上げる量が増えている気がした。
(…………気のせいか?脳筋タイプは一時的に強くなるイメージだが。さっきの倍は積み上げてるぞ……)
ダダダダダ!
「うおおお!ダッシュ力もみなぎってくるぞー!」
(いやいや、そんな即効性あるんか?んなバカな……)
「よっしゃ!なんか知らないが、力がみなぎるぞ!この調子でいけば一週間くらいで終わりそうだ!
しかし、なぜか腹が減る!さっき食べたばかりなのに、なぜだ?」
「………フェビル……俺はもうお腹いっぱいだ。
よければ、このお菓子、もっと食べるといい。」
「本当か??サンキュー!!ようし!早くこの奴隷エリアから、なんとしても抜けるぞ!ちゃんとした治療を、受けさせるんだ!」
(家族のために、こいつは頑張ってるのか。
なんか、憎めないやつだな。)
「さてと、俺もいくか。」
巨大トロッコを弾きながら、作業をする。
夕方。
ついに、あと一往復でユウは一山達成するところだ。
「あれれー?そこの奴隷くんー。なんでこんなに早く終わってるのかなぁ?
あ、他のやつにやらせてズルしたのかなあ?」
「俺はしてませんよ?このトロッコで運んだんです。」
「信じられないな〜、よし!こいつのところに、もう一山追加しろ!」
(………はぁ………どこにでもいるよな、絵に描いたような悪役って。)
「おい!テメェ!そいつはズルしてねえぞ?!
俺がこの目で見てた!」
(フェビル??おいおい、お前まで目をつけられるぞ?)
「あん?なんだキサマ。ネビル?いや、ヒューマン?
お前も、量を増やしてやろうか?かーちゃんがいつまでも治療受けられないなあ?」
「んぐ!くそう……」
ピク。
ユウは少しイラッとした。
そんなビリつきが、監視員にも伝わり、ユウに睨まれて動けないでいる。
(なんだこいつらは、いっそのこと気絶させてやろうかな。仕事の邪魔だ。そして、人の弱みに漬け込む。……俺が一番嫌いなタイプだ。
あー……どうしようかなー)
ビリビリビリ
「な、なんだ…う、動けん……動いたら、とんでもないことがおこるような……こ、こいつの仕業か?こ、こんなことして、ただ済むと思って……」
(あ?なんだ?どうなるんだ?今ここで俺をやるのか?なら、返り討ちにしてやる。
早くフェビルを解放しろ。
そして、いちいち罰を与えるな。)
ユウはイラついてつい、心で本音をぶつけていた。
すると、監視員は驚きの行動に出た。
「す、すみませんでした。どうか、殺さないでください。」
そう言って、去っていった。
フェビルは何が起こったのかわからず、唖然としている。
「ん??なんでアイツ、素直になったんだ?
心の中ではズタズタにしてたが……ま、まさか、それが伝わったのか?
まあ、なんにせよ。これで作業に戻れるな。」
「うおおい?!ど、どうしちまったんだ?あのゴミクズ野郎は?!
これじゃ、まるでおとぎ話の、ナイトそのものじゃねえかー?!」
(めっちゃ口悪いな……フェビルも相当イラついてたのか。まあ、その気持ちは共感するよ。)
「さあ!今日の分はやってしまおう!いくぞ、フェビル!」
「おうよー!すぐに追いついてやるぜー!
いよっしゃあーー!今度はこれならどうだ!
力がみなぎるぜー!」
(な!?なにぃ!?こ、こんなことって……)
第五十九話 完
第五十九話をお読みいただきありがとうございました!
ついにユウの「圧」が表面化し、監視員を戦慄させましたね。そしてラスト、フェビルの身に起きた異変……彼の才能が開花するのか、次回の展開も見逃せません!
この物語を面白いと感じていただけましたら、ぜひブックマークや評価、感想・コメントをお寄せください。皆様の一言が、執筆の大きなエネルギーになります!
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