第五十二話 本質
今回は「本質」。
見えているものと、見えていないもの。
そして、本人すら気づいていない“奥の奥”のお話です。
シリアス?ギャグ?
どっちもあります。
たぶん両方です。
それでは、第五十二話をどうぞ!
「ふう……やっとみんな上がった……これで、一人でゆっくりできそうだ……」
ユウは一人で天井を見つめる。
(リスタもアリスも、もう宇宙船での生活で、俺に対する羞恥心はほとんどなくなっている……これは、いいんだろうか……)
神殿のとあるバルコニー。
シャクは椅子に腰掛けて、複数の光る星々を見ている。
ふと、思い出したかのように、両手で顔を覆う。
その姿を、アリスとリスタは眺めていた。
「シャク?どうしたの?」
「あ、いえ、なんでもありません……」
「お風呂にユウが入ってきたから、びっくりしたの??ごめんね!わたしたちはもう当たり前になってたから。」
「あ、当たり前なのですか??……な、なんと恐ろしい……」
「ん?恐ろしい?」
「あ、いえ、すみません。わたしは、今まで異性と接することがほとんどなかったので……」
「むむむ〜、本当にそれだけかな?
シャク……なにか隠してない?」
「うん、確かに何か他にあるように思うんだ!
違ってたらごめんね!」
(ふ、二人とも、なんて鋭いの!テレパシーもリンクも使えないはずなのに……こ、これが、異性と接した経験の差なのね!)
「……か、観念しました。
実は……ユウは……とても特殊な人だなと、わたしのテレパシーの範囲にきてから、ずっと感じていました。
なので、何度も何度もリンクを図り、常に本質を覗く作業をしていたところ、あることが分かったのです……」
すると、またシャクの顔が赤くなる。両手で顔を塞ぎ、首を横に振っている。
「ど、どうしたの?!なんでそんなに赤くなるの?!……ま、まさか、ユウの本質って……」
リスタも赤くなりはじめた。
アリスはすかさず空気を打破する。
「つまり!ユウは、ド変態ってことなの‼︎?」
シャクは言葉を失い、顔を隠している。
それを見てリスタもますます想像してしまい、赤くなる。
「気になるなあ〜、どういうことか、教えてくれると助かるなあ〜」
アリスが意地悪そうにシャクに問いかける。
シャクの肩を、ツンツンと押すと、ビクっとして震えている。顔はもう"ゆでだこ"のように真っ赤だ。
「は、はい……ド変態という表現が適切かは分かりませんが……彼の本質……今はまだ眠っていますが……あまりにもギャップがありすぎて……わたしも驚いています。」
リスタもアリスも赤くなりながらまた質問する。
「うんうん、で?その真相って、なあに?」
「ゆ、ユウは…………お、女の子に……」
「うん!うん!」
「モテたいと、心底思っています………それも、かなり強く……もう、尋常じゃないくらいに……言葉では、うまく伝わらないですが……その……色欲のフォースが、強くて……恥ずかしくなるくらいこちらが、その……欲情的な気持ちにさせられてしまうのです」
シャクはまた顔を手で覆う。
………………
「えええええ‼︎‼︎」
二人は驚く。
「ゆ、ユウってそんなこと考えてたんだ!意外だった……てっきり純粋な人なのかと……タイガと同レベルかあ……」
「そ、そ、そんな風には、見えないけど……」
二人とも、顔が真っ赤になる。
「い、いえ!勘違いをしてはいけません!
今のユウは、本当に健全です!
本当に、人の役に立ちたいと思っております!
そして、友達を大切にすることも!
そこに芯があり、今のユウがあるのです!
そこだけは、イメージを変えてはなりません!……ただ……」
「根っこの部分に、モテたいという想いも眠っている。ということで、いいのね?」
「はい。シンプルに言えばそうです。
健全な男性ですが、その……強すぎます。
よほど今まで押さえつけてきたのか。なんなのかはわかりません。」
「ユウ……ユウは、地球のときは、もっと背が低かった。顔も今より整ってなくて。
そういうの、諦めてる感じがした。自分に自信も無くて、謙虚で。
だから、蓋をしてるのかなあ。」
「そんなことがあったんだ……たしかに、最近少し変わってきたなとは思ったけど、そうか……今のユウは、身体面の覚醒で、少し変わったから、昔は違う姿をしていたのか……」
「ええ……ユウの生活していた地球は、人にできることにさほど差はなかったの。
だから、どこで差を作るかというと、見た目、経済力。これらは露骨なほどに顕著だった。
様々な種族を見ていたわたしにとっては、見た目なんてただの個性。
でも、地球人はほとんど同じ見た目であるにも関わらず、差別化したがる。
ユウは、その美的感覚から大きく外れていた……ただ、それだけのこと。
けど、ユウにとっては重い差別だったと思う。
自分に蓋をするには申し分ない理由だった。」
「ユウは、辛い思いをしてきたの?」
「それは、わからない。
今のは、わたしが思う地球人の分析だから……ユウが自信がないのはおそらくそこからかなって思ったの。実際に、昔の映像でも、異性からの視線に関しては、もう諦めてるような素ぶりに見えたわ。」
「………でも、ユウは、お仕事できて、すごく頼り甲斐があるよ?わたしのプレゼンの時も、すごく勉強になるアドバイスくれたし。」
「持って生まれたもの以外では、ユウは相当努力したと思う。それは……昔の彼の映像からも分かる。
"こんな自分でも、人の役に立つぞ"っていう意志がね。」
アリスは光の輪を二人の頭へ置く。
その映像を脳内ビジョンで再生した。
二人の目には、涙が溢れる。
タイガやミナミとの思い出。その日々の努力がそこにあった。
外は程よい温度だが、そっと冷たい風が流れた。
「……こうして、今のユウがある。でも……それは異性に対する希望を、根っこから諦めさせてたの……でも……ユウは、ultimate遺伝子を持ってた。
これは、偶然なのかな?」
「きっと、ユウだから覚醒したのかもしれないね!」
シャクはそっと微笑む。
(その人の本質を見たからといって、一概にイメージを持つのはダメ……もっと修行しなきゃ。)
少しの沈黙の後、リスタが口を開く。
「でもさあ……もし、ユウが、自信をつけちゃったら、どうなるのかな?」
……………
「………あ………た、確かに……」
第五十二話 完
お読みいただき、ありがとうございます!
シャクの能力で、ついにユウの「根っこの部分」がバレてしまいました。クールなアリスやリスタまでもが赤面してしまう展開、書いていて非常に楽しかったです。ユウの自信のなさの裏側には、過去の葛藤があったのですね。
皆様の応援のおかげで、連日ランキングの熱い場所で戦わせていただいております。本当にありがとうございます!
皆様からのブクマや評価、コメントが、毎日の更新の何よりの原動力です。ぜひ今後とも、ユウたちの行く末を見守ってください!
私のもう一つの作品**『Another Life 〜現実が詰んだので、フルダイブVRで人生やり直します〜』(N0377LN)**も並行して執筆中です。
こちらはSFとはまた違った、現代のリアルな人間模様を描いています。少し趣の違う物語を楽しみたい方は、ぜひのぞいてみてください!
それでは、次回もお楽しみに!




