第百十三話 惑星エリシオス
セブンスターから宇宙へ飛び立ったアリスとユウ、そして別行動となるヘマ総帥の宇宙船。
不気味なリングが浮かび、重力も磁場も狂い咲く極限の環境――「惑星エリシオス」が眼前に姿を現す。
エージェントTの救出を狙うアリス、囚われた母の奪還を目指すヘマ総帥、そして危険極まりないビーストエリアで一人留守番を言い渡されたユウ。
それぞれが過酷なミッションへと足を踏み出す中、アリスが到着した潜入拠点で明かされたのは、彼女たちエージェントに秘められた真実だった。
そしてその頃、留守番中のユウに、早くも「あの危機」が迫り寄る――!?
はたしてユウは凶暴な珍獣たちの脅威から無事に生き延びることができるのか!?
二機の宇宙船は、ワープ通過後に通信を開始した。
「ヘマ、聞こえる?今から作戦を伝えるわ。」
アリスはヘマに作戦を伝えた。
「承知した。私がほぼ単独行動だが、よいのか?まずはお前たちの仲間を救い出すのが先ではないのか?」
「おそらく行き着く場所は近いと思う。だったら、お互いのミッションはお互いで責任を持ちましょう。その中で、共有したほうが良いことは共有し合う。これが最も効率がいいと思ったの。肉弾戦においても、フォースにおいても、わたしがあなたの足を引っ張ることに違いはないから。」
「なるほどな。このチップを喉につけた。
わたしが喉をやられない限りは通信はできるだろう。そちらの人工知能を通じて情報を伝える。」
「ええ、そうしてくれると助かるわ。あと、もしミッションが早く終われば互いにフォローし合うこと。では武運を。」
アリスはヘマと通信を切った。
「やっぱり別行動なんだね。それもそうか、裏切るかもわからない相手だもんね。それに、こちらのミッションに偏ると、ヘマのミッションに支障があったらいけないからか。」
「ええ、だったら情報を仕入れる役割に徹した方が互いに得だわ。これは大きなことよ。
ヘマは強いから。」
惑星エリシオスが見えた。
見た目はカラフルであり、星には輪のようなリングが複数あった。
「ここが、惑星エリシオス。落ち着かない見た目の星だなあ。」
「生態系は複雑で、この銀河の中でも過酷と言われている星。エージェントTは、生存できないことを前提で送り込まれたの。情報を集めるために。だけど、最近統治するものが現れたから、そうも言ってられないと判断した。回収しなきゃ、奴らに情報が漏れる可能性がある。」
「そ、そんなあ。純粋にその人を救いたいからじゃないのか……」
宇宙船は二手に分かれて星へ降りた。
ユウたちの宇宙船は明らかな山奥。ラムコピーから指示が入る。
「感知しました。重力が不安定なので、スーツのモードを調整してください。」
「わかったわ。ユウ、ここで大人しく……珍獣に気をつけて生き延びてね。またしばらく会えないけど、連絡するからね。」
アリスはアーマースーツの調整をして宇宙船を出ようとした。
「アリス!!気をつけて!絶対連絡してくれよ!?」
アリスはニコリと微笑んで、勢いよく飛んで森へ消えていった。
「……………………」
ユウは立ち尽くした。
宇宙船のスクリーンから風景を見る。
あたりは森に囲まれているが、空は赤い。
時々何か光っているようだった。
「雷かな?」
「ええ、それは雷と類似したもので間違いありません。」
「ラムコピー、珍獣がきたら早めに教えてね。怖くてたまらない。」
「現在、レーダーには100体程度の生物が感知されております。どれもこの宇宙船には気が付いていません。」
「げ!!100体!?は、早く逃げないと!!」
「安心してください。小さな個体もいます。この宇宙船と同等の大きさのものは10体ほど。そして、ユウより大きな個体は80体ほどです。」
「いやいや、俺よりほとんどデカいじゃん!!どう安心するんだよ!」
「失礼しました。ヘマとの戦闘データを見ると、このうち手こずるのは30体程度です。ほとんどの珍獣は制圧できるので、安心してください。」
「……………その30体がいっぺんにきたら?」
「その時は、逃げましょう。」
「…………………」
◆
ヘマ機も別の森に到着する。
「ふむ。デタラメな環境だな。フォースがなければ潰れてしまう。」
ヘマはフォースを纏って森を進んだ。
ギギャオーー!!
虫のような生物が襲いかかる。
ピタ。
ヘマは手を向けてフォースで生物の動きを止める。
ス。
再び手を戻して、生物は動けるようになる。
途端に生物は慌てて去っていった。
「ふん。単細胞では無さそうだな。この星は弱肉強食。強い個体には逆らわず、逃げることのできるものは生き延びる。」
この一連のやり取りは、周囲の生物にも探知されていた。ヘマはぬるりと都市へ潜入するのだった。
◆
一方その頃。
「エージェントS!!いや、アリス!!よくきた!」
「ポーケン博士。お久しぶりです。」
「話は後だ!さあ、中で装備を選んでくれ!!」
アリスはラボへ到着し、早急に準備を整えた。
「そのまま聞いてくれ!都市内部に我々が抑えた部屋がある。そこを拠点に動いてくれ!
食料も全てそこにある!
アルティメットの青年はどうした?」
「ビーストエリアでお留守番です。」
アリスは半笑いで答えた。
「な!?お留守番!?あそこは危険だが大丈夫なのか!?」
「ラムコピーもついてます。多分大丈夫。」
「多分……君たちらしくない返答だなあ。まあ、君が言うなら信じよう。我々はエージェントの指示で動くからな。」
「そんなこと言わないでください。立場上、エージェントは上位ですが、私たちにとってラボの人たちは家族です。」
アリスは装備を整えて準備完了した。
「エージェントTからの通信が途絶えたのはこのあたり。」
「………マップを見る限り、確実に捕まってるわね。あの強いTが……捕まるなんて。」
「それなんだ。ここ何百年もこんなことは無かった。だが……」
「奴らね?」
「その通り。一人はダークナイト。しかし、もう一人は解析困難なんだ。どうも、大昔からこの星にいるらしいんだが、本格的に動き出したのは、ある異星人がきた時期からだ。」
「ある異星人?」
「そのものは1stの初期メンバーがデータを取り、そのまま1stのラボへ持ち帰って研究したそうだ。こちらにその資料は残っていない。となると、かなり強い個体の可能性がある。」
「それがきてから、闇の存在も動き出した。今、銀河で動きがあることと、関係しているのかしら。」
「データ分析によると、可能性は高そうだ。」
「悪いものじゃなければいいけど。」
「さすがにそれはなんとも言えん。しかしながら、アリス。名前まで付いて、前と雰囲気も変わったな?人間ぽくなった。」
「本当に?ふふ、それは嬉しいわ。」
「それだよ、笑顔だ。君たちはほとんど笑わない。だが、君やTは特別な個体だった。喜怒哀楽をきちんと受け継いでいる。」
「地球で過ごしたおかげかもしれません。再創生された地球の民は、脆くて短い命だけれど、みんな情緒があって、面白かったわ。」
「向こうのラボは見つかったか?」
「いえ、何百年かいましたが、一度も通信する事はありませんでした。地球にもラボはあるのでしょうか?わたしも見つけ出す事はできませんでした。」
「ふむ……あるとは言われているが、アリスでも見つけられなかったか……やはり、始まりの土地……かなり厳重になっているのかもしれん。」
「さて、もういくわ博士。Tが待ってる。」
「ああ、頼んだぞアリス!」
◆
「……………それにしても暇だなあ。ライトソードでも鍛錬しようかなあ。」
ユウはフォースを解放した。
ブォン。
アークからもらったソードは、白になっていた。
「ん?前は赤だったような……ま、いっか。」
ピピー!!
「ん?何?」
「ユウ、逃げてください。あなたより大きい個体が近づいて来ます。」
「え!えええ!!さっそくきたのー!?や、やばい!!早く逃げなきゃ!!」
第百十三話 完
第百十三話をお読みいただき、本当にありがとうございました!
色鮮やかで不気味なリングを持つ過酷な星「惑星エリシオス」に降り立ったユウ、アリス、ヘマ総帥!
フォースを難なく操りぬるりと都市へ消えたヘマ総帥、そしてポーケン博士のラボで装備を整えエージェントTの救出へ向かうアリス。
アリスの口から語られた「再創生された地球の民」や「地球のラボ」に関する深い考察も、今後の物語の大きな鍵となりそうですね!
そして、ビーストエリアで留守番中のユウは、ライトソードの色が「赤から白」へと変化していることに気づいた矢先、巨大な珍獣の接近で大パニック!?
逃げるしかないユウの運命や、アリスたちの救出劇の行方が描かれる第百十四話も、どうぞご期待ください!
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