第百九話 永久追放
セブンスターを揺るがした激闘は幕を閉じ、都市の講堂には各サイドの統治者や首脳陣が一堂に会していた。
議題は、今回の戦争の主犯であるヘマ総帥の処分。
提示されたのは「極刑」または実質的な死を意味する「永久追放」という、あまりにも重い二つの選択肢だった。
静まり返る場内で、真剣な眼差しで質問を重ねていたユウは、突如として周囲の誰もが絶句するような「ある提案」を口にする。
大ブーイングと騒然とする講堂の中、ユウが示した決意と、その裏で交わされていたアリスやヘマ総帥との秘密の約束とは――!?
はたしてヘマ総帥の運命と、ユウたちの新たなる旅路はどうなってしまうのか!?
「ユウ、此度の戦争、君たちには本当に助けられた。だが……」
「詳しく説明します。」
アリスが立ち上がり、講堂中央に歩いていく。
◆
昨夜。
アリスの元に指令が入る。
ユウたちの母船の区画には、居住スペースもあり、アリスは、屋上園庭で指示をききに出ていた。
「はい……はい……」
アリスはどこかないかと庭園をウロウロしていた。
ラボの周囲が見渡せる椅子へ腰掛ける。
「エージェントTが?……はい……わかりました。整い次第、救助へ向かいます……はい……彼も無事です……はい……フォースを少しずつ覚醒しています。」
「……………」
アリスは通信を終えて、ベンチの背にもたれかかり、空を見上げる。
「エージェントT……無事でいて……」
その時、ラムから通信が入る。
「アリス、周囲にひとがいます。」
「え!?うそ!?そ、そういうことは早く言ってよ!」
「すみません、すでに1stからの通信だったもので、割り込めませんでした。」
「そ、それにしても、どこ見ても、いないけど……」
ピピ……
「あそこです。」
アリスは振り向くがそこにはベンチの背しか見えない。
「え?誰も座ってないじゃない、どうしたのラム?」
「いえ、確かにいます。」
アリスは恐る恐るベンチに近づく。
「…………ああ、そういうことか……」
ピッ
アリスはあることをする。
「うが!?おわ!?」
ガバ!
そこにユウがいた。寝ていたらしく、アリスに鼻を摘まれて飛び起きる。
「あ、アリス!?びっくりした。息ができなかったよ!」
「まさか、ここで寝てたなんてね……聞こえた?」
「ん?何が?」
「ふふ、ならいいわ。」
「………1stからの指示か何か?」
ピク!
「え!?」
「いや、なんとなくそうじゃないかなと思ったんだ。」
(にしても、ピンポイントすぎる。これもフォース?……隠し事は無理そうね。
まあ、どのみち相談はしなきゃいけないし、ちょうどいいか。)
アリスは、1stからの指示をユウへ伝える。
「え!?仲間が捕まったの!?早く助けに行かないと!どこの星?」
「惑星エリシオス……」
「それって、どんな星?」
「あらゆる獣の住処、そして、情報によると、ダークナイトの支配者がいる。
また最近、よその星から、神の力を持つ存在が力を貸しているみたい。」
「ダークナイト……いろんなところに存在してる。仲間は無事なの?」
「命は……ただ、労働者として扱われてるって……いわゆる奴隷。」
「ひどい……早く助けに行かなきゃ!」
「安易に助けに行くと、危険が多いわ。その辺の判断は任せるって、1stから……」
「シャクやリスタもいるからか……ラボはあるの?」
「ラボはあるわ。星の内部にバレないように建設してる。もっとも、そこがバレそうになって、エージェントは庇って捕まったの。」
「ラボも命懸けか……もしそこへ行くなら、シャクやリスタはラボで待機しなきゃいけなくなるね。」
「そもそも、そこまで連れていくかどうかも考えないといけない。あまりに危険が多いわ。
今までの星のように、自然が味方してくれるとは限らない。
猛獣や奇獣がたくさんいる。とくに、知恵を持つタイプの獣がその星では上位にいて、ヒューマンは捕食対象なの。」
「げ!なら、俺は捕食対象じゃん!?」
「そうなるわ……でも、今は違うと思うけど、元々の素材は地球人だから、彼らにとっては捕食対象かもね。
シャクやリスタは、フォースに精通してるからどう転ぶかわからない。見た目はヒューマン系だから、危険がないとは言い切れない。」
「アリス!」
そこに、シャクとリスタが現れた。
「わたしたちなら大丈夫!危なそうならちゃんとラボで隠れてるから!」
「聞いていたの?」
「ごめんね。途中から聞こえたんだ。わたし、お留守番なんて、嫌だよ。」
リスタは泣きそうになる。
アリスは困り顔になる。
「ふう……わかったわ。じゃあ、みんなで行きましょう。ただし、わたしとユウは先行、シャクとリスタは、母船や準備が出来次第、後から追いかけてきて。」
みな納得した。
その後、ユウは一人である場所にいく。
「ほう、何の用だ?わたしを笑いにきたのか?」
「違う……話をしにきたんだ。」
「話?」
「あなたの家族のことさ。」
「聞いてどうする……わたしはおそらく永久追放か、死刑だ。」
「それなんだけど……ヘマ総帥……どうせ永久追放されるなら……俺たちとくる?」
「ふ、もちろんダメに決まって……って、なにぃ!?……お前たちと!?」
「ああ、どうせ永久追放になるなら、俺たちに力を貸してくれないか?なんなら、逃亡する母船も手配する。」
「あまりにもぶっ飛んでいる。常識ではありえん。手を貸すとは、いったいなんなのだ?」
「惑星エリシオス……」
!?
「俺たちはそこに行かなくてはいけない……そこは……」
「獣たちの住処……か。」
「え!?」
「その星はもちろん知っている。ダークナイトの一人がそこを統治しているからな。」
「…………どれだけ危険な場所かも知っている、ということか?」
「そういうことだ。」
「そうか……なら、無理には誘えない。ごめん、中途半端なこと言って。じゃあ、俺は戻るよ。」
「ま、待て!!」
ユウは振り返る。
「本当なんだな?協力すれば、母船もくれると。」
「ああ、掛け合うことはできる。」
「いいだろう……、協力する。」
「どうして?危険があるのに?」
「わたしの母は……そこに捕らえられている。」
!?
「え!?じゃあ……」
「目的地は、同じということだ。」
「一時的に共闘だな。」
「ん?共闘?わたしはお前たちの指示に従うのが条件だろう?」
「何言ってんだ!母親を助け出したいんだろ!?」
「な!?おまえ、俺の事情も含めるのか!?俺はお前たちに……」
「今回人の死者は出てない。一部の森の生き物たちは被害を受けただろうけど……わざとだろ?あえて、無人機で制圧できるようにしたのは」
「……………俺は、本気で制圧しようとしたんだぞ?」
「協力してくれるなら、その時は仲間さ。」
ヘマ総帥は下を向き、必死で耐えていた。
「後は、アリスたちをなんとか説得してみる。」
そう伝えて、ユウはヘマ総帥の元から去った。
◆
「アリス……ちょっと聞いてほしいことがある。」
アリスはまだ庭園にいた。
「どうしたの?なんだか、スッキリした顔ね?」
「アリス……ヘマ総帥を、惑星エリシオスへ連れて行こう!」
「え!?」
第百九話 完
第百九話をお読みいただき、本当にありがとうございました!
1stからの救助要請で明かされた新たな目的地「惑星エリシオス」!
捕らわれた仲間エージェントTの救出、知恵を持つ猛獣たちが支配する極限の環境、そして奴隷として囚われているヘマ総帥の母……。
かつて刃を交えた宿敵・ヘマ総帥の本心と優しさを見抜き、「協力してくれるなら仲間さ」と手を差し伸べるユウの真っ直ぐな想いに胸が熱くなりましたね!
首脳陣の前でヘマ総帥の引き渡し(永久追放の利用)を提案したユウとアリス。
はたして首脳陣はこの突拍子もない提案を受け入れるのか!?そして危険に満ちた「惑星エリシオス」への旅立ちはどうなるのか!?
怒濤の新章開幕となる第百十話も、どうぞご期待ください!
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