第百一話 わずかな覚醒
強敵・ヘマ総帥の「ダークホープ」との凄絶な死闘を経て、深い眠りについていたユウ。
スターサイド2の落城という危機的状況の中、眠りの中で己の潜在意識である「色欲のフォース」と対話を果たしたユウは、ついに目を覚ます。
目覚めた彼の瞳からは以前のような迷いや焦りが消え去り、どこか澄み渡った静かな落ち着きをたたえていた。
急加速する敵の侵攻に対し、打倒・ヘマ総帥を目指して決意を固めるユウとシャク。
出撃前の特訓を前にして、雰囲気が一変したユウが口にした「その前に……ひとつだけいい?」という言葉の真意とは――!
「俺、眠ってる間に、俺に会ったんだ。」
?
周囲はポカンとする。
そこに、シャクだけが反応した。
「自分の中にいるフォースと対話したのですね?」
「んー、多分。向こうもそう言ってた。何人もいて、その中でも抑圧された子供の俺がいたんだ。
トウ姫様のおかげで、抑圧も軽くなって、そのせいで、フォースが出せるようになった。
けど、コントロールは今ひとつピンときてなかった。」
みんなは黙って話を聞いていた。
「でも、対話してから、なんかこうスッキリしたというか、自分のことを理解したからかな?
なんか、今は、ほぼコントロールしていないんだけど、どうかな?フォースは漏れ出てる?」
シャクとリスタは顔を合わせる。
「いえ、全く。ユウがコントロールしているのかと思いました。」
「うん、ドキドキしない。え?コントロールしてないの?」
「そうなんだ。あれ以来、通常時は何も意識してないんだ。だから、シャクとの特訓の時に、今度は解放する部分をコントロールしないといけないかも……また、迷惑かけるかもしれない。」
「大丈夫です。相手を倒すには、それ相当のフォースが必要です。
わたしは大丈夫。ユウ、特訓にいきましょう。
こうしている間にも、侵攻は進んでいるかもしれない。」
そうして二人は特訓場所に向かった。
アリスとリスタはそれを見送る。
「わたしたち、こんなときどうすればいいのかな?」
リスタは困ったように話しかけた。
「わたしたちは二人を信じよう。あとは、ここが戦場にならないように、博士たちと協力して備えることかな。」
「う、うん!そうだね!」
「マザー、最低限の備え程度なら、協力してもらえるのかな?」
「もちろんです。この都市やラボはスターセブンでも屈指の都市。
ここが負ければわたしも危ういですから。
装備はもう生成しています。」
「わたしたちも備えよう!」
◆
訓練場。
「これが新しい試作機。俺のイメージするものに更に近くなってる!」
ユウはさっそく乗り込んでみる。
シャクと通信を開始。
「ユウ!フォースを解放して、機体を動かしてみて。この前も、おそらくその要領で動かせたはずよ。」
「う、うん、わかった!」
(少し広げるイメージで……お?もしかして……)
ズシン!!ズシン!!
機体が歩き出した。そして、その後素早く飛び上がる。
ジェットが開いて空中を飛び回る。
バシューーン!
「す、すごい!前より手に取るようにわかる!」
そこへ、マザーとも繋がる。
「その機体には、新たなフォース感知システムを搭載しております。フォースを感知して、機体を物理操縦しなくても、ある程度反応して動いてくれます。」
「そうだよね?俺、操縦まったく素人だけど、フォースを広げた瞬間に、なんとなくわかるような気がしたんだ。」
「ユウ!フォースを先行させて動かしたあとは、操縦機器が勝手に動いてると思うの。
だから、どんな操縦をしたらその動きになるか、照らし合わせてみて!」
「な、なるほど、逆で覚えていくんだね。普通は操縦の仕方を覚えてから動きのバリエーションを組み立てるけど、フォースが使えると逆になるのか。」
バシューーン!!
シャクが驚くほど、機体の動きが滑らかであり、素早い。
(すごい……ほとんど機体性能は一緒なのに。イメージかしら、はじめからわかってるみたいな動きに見える。)
ユウは飛び回った。そして、サーベルやライフルも使いこなし、数時間で機体をものにした。
◆
その日の夜。
ラボに戻って皆と夕食をとっていた。
「ユウ。あんなにすぐに乗りこなせるなんて、驚いたわ。」
「多分……イメージだとおもう。俺、漫画やアニメでたくさんみてきたから。アニメっていうのは、空想の二次元の動画みたいなもので、似たような世界観のものが多かったんだ。」
「そうです、ユウの情報から機体を生成しましたから。そのおかげと思います。」
「マザー、ありがとう。これなら相手とも戦えるよ。」
その後も、ユウは黙々と自主トレーニングを重ねた。
◆
数日後、マザーから連絡が入る。
サイド5も堕ちたとのこと。
「ついにサイド5まで……」
「準備は整いました。これより、サイド7の防衛作戦を開始したいと考えています。みなさん、一箇所に集まってください。」
マザーから指示がある。
ジョウ博士らも集まってくる。
ラボの会議室にはジョウ博士以外の研究員も総動員した。
マザーは皆へバレないよう、代わりにラムから伝達される。
「皆様、サイド1の侵攻はついにサイド5まで及びました。これは予想よりはるかに早い侵攻となっています。
このままだと、このサイド7にもいずれ侵攻してくるでしょう。
そこで、次に侵攻すると考えているサイド6で決着をつけようと考えております。」
ラムは淡々と作戦を説明する。
早めにサイド6へ行って、人を避難させること。
重要なデータや機材の撤去。
そして、こちらからは機体を輸送していつでも出られるように待機すること。
「長くなりましたが、皆さん作戦は把握しましたか?
サイド7は、万が一に備えて、このラボはシールド展開完備をまもなく終えます。都市についてはこちらから通信を送り、各々の企業ごとに備えるようにすでに指示しています。」
(いよいよ始まる。機械の戦争が。)
ジョウ博士が前に出る。
「では、作戦通り、皆持ち場についてくれ!
以上だ!」
◆
ユウは、会議の後、個人的にマザーのいる場所に来ていた。
「マザー、嫌な予感がする。」
「どうしたのですか?聞かせてください。」
「これまで、一つずつ星を制圧してきた。勢力を拡大するために。
だが、今回は違う気がする。」
「素晴らしい。わたしと同じことを思考されていたのですね。」
「え?マザー?」
「わたしも、個人的にユウへ通信を送ろうとしていたところでした。」
「どんな?」
「ユウ、あなたはこのサイド7へ残るのです。」
「…………」
「やはり、考えることは同じでした。ユウの予想通り、このサイド7は7つの星の中でも群を抜いて発展しています。
いくら6つの星の勢力を取ったとしても、万全で構えられては到底敵わない。それは相手も思うところでしょう。
なら、最後は油断させて、こちらに勢力を割くはずです。
現に、サイド1の人工知能とのやり取りで、そう言った情報を掴みました。
向こうは外部への通信を遮断しているので、わずかな隙をついて情報を得ることができたのです。」
「じゃあ、サイド6へは……」
「シャクに行ってもらいます。あとは、こちらが用意した兵器も引き連れて。」
「万が一はないよね?」
「それは保証出来ません。ですが、それしか方法はありません。サイド6は隣接した星。ここが占領されると、たとえサイド7を守れたとしても、その後も長期戦になる可能性があります。
大丈夫です。シャクの機体もアップデートを完了しています。」
ピピー!ピコン!
「どうやら、敵がもう攻めてきたようですね。」
「え!?こ、こんなはやく!?やばい!早くもどらないと!」
第百一話 完
第百一話をお読みいただき、本当にありがとうございました!
自身の中に眠るフォースの存在を理解し、見事なイメージ力で新型機を乗りこなしていくユウの覚醒ぶりが非常に頼もしかったですね!
しかし、敵の侵攻スピードは予想を遥かに超え、ついにサイド5までもが陥落……。
スターサイド7を守るための防衛作戦、そしてマザーとユウが看破した敵の真の狙い。裏をかいた攻防戦が始まるかと思った矢先、予期せぬタイミングで響き渡る警報音!
はたして、攻め込んできた敵の正体とは!? 怒涛の展開を見せる次回も、ぜひお見逃しなく!
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