第百話 早期侵攻
強敵・ヘマ総帥の「ダークホープ」との凄絶な死闘の末、激しい衝撃と限界を超えた負担によって気を失ってしまったユウ。
駆けつけたシャクの「アルティメットシールド」による鮮やかな救出劇によって無事ラボへと連れ戻されたものの、ユウは依然として目を覚まさぬまま深い眠りについていた。
心配そうに見守るアリスやリスタ、そして静かにユウの無事を信じるシャク。
スターサイド2がヘマ総帥の手によって占領され、侵攻の恐怖が刻一刻と迫る中、眠り続けるユウの意識の奥底では、彼自身の「フォース」に関わる重大な出来事が起きようとしていた――!
数日が経過した。
ユウはまだ目を覚まさない。
マザーからの作戦は、ユウの経過とともに度々変更となった。
ユウ自体はそこまで重篤ではないらしいが、フォースに当てられたことが原因かとコンピュータは推測している。
脳波の乱れや不安定さがずっと続いていた。
アリスとリスタは毎日心配しながら、宇宙船の改良を手伝っていた。
シャクは、落ち着いていた。
(ユウ……わたしにはわかります。
今、あなたの中のもう一人の自分と対話しているのですね?
ヘマ総帥のフォース、あれは不完全なあなたにはトリガーになったのでしょう。
わたしはすでに感覚が確立しています。
跳ね返すことも拒絶することもできる。
ですが、あなたはそうじゃない。
ダイレクトに受け入れてしまったのですね。)
◆
「ん?ここは……なんだ、この真っ白な空間は……ん?あそこにだれか座ってる。」
ユウは近づいていく。
「やあ、ユウ……やっと会えたね。」
「へ?俺?なんだ、この子は、昔の俺?この黒いモヤは?」
「そう、僕は君さ。君の潜在意識。フォースの根源とでも言おうか。まあ、僕がフォースの全てではないけど、抑圧されている部分だよ。
聞いたことない?色欲のフォース。」
「なんか、トウ姫様がいってたかなあ。コントロールできないとみんなに迷惑がかかるって」
「ぷぷ、あの妖艶なお姫様だね?
僕、あの人のおかげで身体が少し軽くなったんだ。
でも、まだ君はコントロールできない。
だから、押さえ込む方法しかなくて、こんな感じになっちゃうんだよ。」
「なんかごめん、俺が不器用だからだね。」
「本来ここまで僕は力を持つものじゃないんだよ。君の生い立ち、経験から、この色がどんどん抑圧されて、抑圧されればされるほど、希望や欲が増幅してしまったんだ。
ただ、奴らと違うのは、かなり健全に欲が強くなっているということかな。
君は、誰かを支配したりしようとしていない。
だから、僕は子供の姿で、力だけ増幅したんだ。」
「どうすれば、君を使いこなせるの?」
「オンオフのコントロールさえできれば大丈夫。でも、まだそれはできない。
トウ姫様が言ったように、その道の達人に指導を受けなきゃいけないんだよ。
でも大丈夫……この前出会った青年。
あの子がヒントさ。
あの子がいるところにいけば、きっとその道の達人に出会えるよ。
心配いらない。
僕を使わなくても、そのほかのフォースも素晴らしいからね。
ほら、周りをよく見て。」
ユウは周囲を見渡す。
すると、様々なユウがそこにいた。
みんな青年の姿。
「彼らは、君に備わっているフォースたちさ。
まだみんな未熟さ。でも、今の時点で青年の姿ということは、まだまだ君は成長するということさ。
僕だけ、少し扱いが特殊なだけ。
だから、今は彼らを信じて。
勝機を掴むんだ。大丈夫、今日話せてよかった……微力ながら、僕もこれからは関われるようになったよ。」
そういうと、あたりは光に満ちて、離れていった。
パチ
ユウは目を覚ました。
ピピ!
機械音とともに、医療班が駆けつける。
ロボットたちも即座に処置した。
ユウは何もなかったように起き上がる。
「なんだか、少しだけ頭がクリアだ。押さえ込むような、落ち着かない感じがない。というか、その感覚そのものがない。」
(あの子が抑えてくれてるのかな?)
ユウは皆のいるデイルームへやってきた。
「ユウ!!」
皆が駆け寄る。
ガシ!!
アリスとリスタはユウに抱きつく。
「良かった、良かった、ユウ!!」
シャクは立ち尽くして、驚いていた。
(色欲のフォースが、全く感じられない。でも、フォースは確実に開いている状態。垂れ流しです。今の彼は、光の部分のみの状態……?)
「通信です。たった今、サイド4が落ちました。」
!?
皆凍りついた。
少しずつ侵攻してきているサイド1。
サイド7に来るのも時間の問題だった。
「もうこの際だから、マザーの力でねじ伏せることはできないの?」
アリスは唐突に質問した。
「アリス、あなたも理解していると思います。
わたしたちの技術レベルが公になれば、確かにヘマ総帥たちは軽く殲滅できるでしょう。
ですが、その後、ヒューマンたちは、もう何も考えることをしなくなります。
または、機械を恐れて反乱が起こるか、どの道良い結果にはなりません。」
「ごめん、やっぱりそうだよね。なら、やっぱりわたしたちで倒さなきゃならないのね。」
「マザー、あとどのくらいで完成するの?」
「あと、一週間内には完成します。完成したら、試運転をして再調整。その後戦場に使用する形とします。」
「まさか、また出陣するつもり!?」
「うん、だって、あんなの、誰も止められないから、誰かがやらないと。
なら、俺が行くよ。今度は大丈夫。
ちゃんと準備していくから。」
ユウの表情はどこか落ち着いていた。
過信している様子も、苦し紛れでもない。
「マザー、頼みがあります。
試作型でも、何でも良いので、練習させてもらえませんか?」
「問題ありません。
サイド7内に環境を設けております。そちらまで転送するので、ご自由にお使いください。」
「わたしも行きます。ユウ、二人で特訓しましょう。」
「うん!ありがとうシャク、俺を助けてくれたんだよね?
何となくそうじゃないかと思ったんだ。」
「ええ、やはりわかったのですね。
じゃあ、一刻を争います。さっそく特訓しましょう。」
「その前に……ひとつだけいい?」
周囲はユウに注目した。
果たして雰囲気の変化したユウ。
特訓はうまく行くのか。
第百話 完
記念すべき『Ultimate Wars』第百話をお読みいただき、本当にありがとうございました!
皆さまの温かい応援のおかげで、ついに大台の第百話に到達することができました!心より感謝申し上げます!
意識の奥底で己の「色欲のフォース」の意識と対話し、迷いを払拭して覚醒を遂げたユウ。
サイド4の落城という急迫した危機の中でも、どこか穏やかで芯の通った落ち着きを見せるユウの変化が非常に頼もしかったですね。
そして、シャクとの特訓を前にユウが発した「その前に……ひとつだけいい?」という言葉の真意とは一体何なのか!? 二人の特訓の行方と迫り来る決戦の刻にご期待ください!
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