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異界見聞録。九十六式歩行空挺戦車、ハイエルフ、フェンリルと異世界を旅する。  作者: トウフキヌゴシ


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50/52

第50話、田中太一。


 今、自分は首と本体のフレームだけになっている。

 操縦席の部分は空白で、顔のカバーは吹き飛び、丸いレンズとレンズフレームがむき出しになっていた。

 首の根元には、學天測《がくてんそく》Ver・525とかかれたブラックボックス。


 シャル殿と対峙する。


「九六、どうやら私はお前がいなくなると寂しいようだ」

 シャル殿は長い時間を生きるハイエルフだ。

 かれこれ三十五年近く一緒に行動していると、情緒の乏しいエルフにもいろいろなものが湧くらしい。

「そのうえで聞こう、お前はなんだ?」

「え~と。 學天測……」

「違うな」 

「改めて聞こう、お前は誰(・)だ(・)」


「……日本陸軍降下猟兵部隊所属、九六式空挺歩行戦車の操縦者《ドライバー》、田中太一、三佐であります」

「ふんっ」

「いつから気づいておられましたか?」

「普通のしゃべりかたでいいっ」

「いつから?」

「最初からだ」

「機械《マキナ》、の体に宿ったとはいえ、女は男の性的な視線に敏感だぞ」

 ―――あああ、水浴びをのぞいた時か

「その後も異界の衣装、”こすぷれ”とかいうものを着せようとした時もな」

「それと、ハートウーマン軍曹だ」

「世界樹の影響で、”ぷろぐらむ”とかいうものが光の精霊になったのだろう」

「なら、人の魂が機械《マキナ》、に宿っても不思議はないだろう」

「ごもっともです。 でも自分が、”田中太一”と自覚したのはつい最近ですよ」

「そうか、……ではこれから、”たなか”と呼ぶのでいいな」

「…………たなか……はちょっと、せめて太一にしてください」

「では、”太一”だ」

「わかった、シャル殿」


「で、太一、これからどうするのだ?」


 カンッ


 と首とブラックボックスのついた胸部フレームを叩いた。

「ふむん、とりあえず両腕と両足はわざと切り離したから、使えると思う」

「特に、腕についた高性能3Dプリンター」

「今度は、装甲巨兵の思考同期や装甲を取り入れてみようと思う」

「うむ、特にジャンプユニットの開発は急務だ」

「ガンド帝国の飛行艦に手が出せないからなあ」


◆


 ヒュルルルルルル

 ドドドドドドオン


「来たぞお、面舵一杯」

 ワイルダー商会のキャラバン船が爆撃を受けていた。

 ガンド帝国との争いは五年を過ぎても続いていた。

 追いつめても、いざとなったら飛行艦で空に逃げてしまうからだ。

 そして痛がらせのようにキャラバン船を僻地で爆撃していく。

 

 ジャンプユニットの開発は、直接飛行艦を攻撃するのが目的である。

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