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異界見聞録。九十六式歩行空挺戦車、ハイエルフ、フェンリルと異世界を旅する。  作者: トウフキヌゴシ


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46/51

第46話、襲撃。

 ナハト―ラがワイルダーキャラバンに合流して五か月がたっていた。

 桟橋の奥には一つの建物と二つの倉庫が建っている。

 

 砂漠の日差しがオアシスの水面をキラキラと輝かせている。


「生きていたとはなあ」

 オアシスの対岸におり立った金色の巨兵から声が聞こえた。

 その左右に2機の巨兵。

 上空には巨兵を下した飛行艦。

 近くには白い砂上艦がいた。

 すべてに、”斧と星のガンド帝国の紋章”が描かれている。


「重装甲巨兵、”ザンベルク改”、サクソン皇子の、”皇騎”か」

 皇族には生まれた時の特別《スペシャル》な機体、”皇騎”がつくられる。

 残りの二機は、ガンド帝国の主力機、”ルイフィール”。

 軍事力に内政を振り切ったガンド帝国が開発した強力な機体たちである。


 ナハト―ラが、アリエル改め、”シェへラザード”に乗りこんだ。

 上に開いた胸部装甲《ハッチ》はまだ閉めない。

 彼女の漆黒の髪に合わせて、巨兵も黒く染め上げられている。


 ザワリ


 下半身の多関節蛇腹構造《へび》が波打つように動く。

 切れ長で真紅のデュアルレンズが光った。


 一の字に伸びる桟橋。

 左右にはキャラバン船と潜砂艦が係留されている。

 その突端にシェヘラザードはいた。 


「相変わらず見苦しい機体だな」

 サクソン皇子だ。

「ふん、亜人型か。持ち主をあらわしているようだな」

「ふっ、あれでも一応、”皇機”だぞ」

 皇子の左右の控える上級騎士が言う。


 帝国では亜人は、人、ではない。 

 亜人(人魚)型の皇機を渡された。

 母がメイドの皇族など人ではないという、上位の皇子たちの純然たる悪意である。


「くっ」

 思わずナハト―ラが悔しそうに声を出した。


「ははっ、まあ降伏することですねえ、このままだと異端認定しますよ」

「それから、そこのキャラバン。 オアシス認定証と他のすべてを差し出せば見逃してあげてもいいですよ」

「まあ、奴隷として売って差し上げましょう」

 カスペン戦闘司祭がいやらしく笑う。

 

「……何だと」

「断るっ」

「ひどいなっ」

「皇女っ、やってしまえっ」

「ガウウゥ」

「ナハチャ、やっちゃええ」

 桟橋や船の上で見ていたキャラバンの隊員たちがざわめく。 

 

 パシッ


 怒りの表情を浮かべたハートウーマン軍曹が左手に持った杖を右手の平に当てた。

 杖を対岸にいる巨兵たちに向けた。

「……ナハト―ラ、蹂躙せよっ」


「っつ、イエスマアムッ」

 ナハト―ラが言うと同時に、


 胸部装甲を閉じながら、


 巨大な鎌《サイズ》を胸の横に持ち、


 前傾姿勢で、


 下半身の多関節蛇腹構造《へび》をくねらせながら、


 水の上をすべるように、


 走る。 


◆


 二十秒くらいだろうか、ナーガ型の巨兵が対岸についた。


「異形のものめっ、騎士の戦いを見せてやろうっ」

 すこし茶色が入った灰褐色。

 デュアルレンズが青く光る。

 近くにいた、”ルイフィール”が騎士盾《ナイトシールド》を前に片手剣を構えた。

 その姿は邪悪な魔物を狩る騎士そのものである。


「ふっ」

 ナハト―ラは、対岸まで来た前傾姿勢のまま、両手に持った大鎌をななめ下からななめ上に斬り上げた。

 同時に上半身も上に。


 ガキン


 さすが皇子付きの上級騎士だ。

 巨大な鎌の一撃は、金属音とともに騎士盾に止められ受け流される。


「反撃だっ、何っ」

 騎士が反撃しようとしたが、蛇身に支えられた上半身ははるか上だ。

 そのまま、斜め後ろ下に下がった。


 ガキン

 ガキン

 左右からの大鎌の連撃をたやすくうけられた。


「はっ、しょせんは皇族のお遊びの剣、たいしたことないわっ」

 上級騎士が馬鹿にしたように叫ぶ。

 しかし、

「油断するなっ」

 隣の上級騎士だ。

 シェヘラザードの蛇身は異形で、のばすとルイフィールの二倍近くなる。

 ナハト―ラは気づかれぬように尻尾の先を足元に伸ばす。

 尻尾の先を巨兵の足に巻き付けた。


 ブウウウン


 ルイフィールを尻尾で振り回す。


「うわああああ」

 

 バッシャアア


 そのまま、オアシスに叩き込んだ。

 さすがの高性能機であるルイフィールも水中特性はない。

 水中戦になったが勝負にならない。

 陸に戻ろうとするルイフィールをさらに水の深いところにひきずりこむシェヘラザード。

 最後はルイフィールの操縦席内に水が充満。

 上流騎士が操縦席を開け外に飛び出してきたのである。


「ひ、卑怯だぞっ」

 サクソンが叫ぶ。


「おや、いきなり爆雷を落としてきたのは誰?」

 蛇身の半分を水に沈めたまま、ナハト―ラが言う。


 ズルリ


 もう一機のルイフィールが水辺に近づくも足を滑らせた。

「ぐぬぬぬ、カスペンッ、砲撃だっ」

 白い砂上艦の前にある二連装砲が桟橋を指向。

 桟橋自体を破壊するつもりである。


 ドドオオン


「させん」

「させないよ」

 キャラバン船の上にいた自分とシャル殿だ。

 左腕のメーサーを対空迎撃モードに。

 音速のミサイルも堕とすものだ。


 ズズドオオン


 弾速の遅い砲弾だ。

 砲身から出た次の瞬間に迎撃、爆発した。


「うわああああ」

 白い砂上艦の鼻先で場j発する二発。

 艦全体が揺さぶられた。


「くうううう」

 悔しがるサクソン。

「騎士を回収しました」

 水に沈んだルイフィールの騎士が泳ぎ着いた。

「撤収だっ、これで勝ったと思うなよっ」


「かかってこいよお」

「負け惜しみをっ

「ニ度々来るな」

「ナハチャのかちい」

 騒ぐキャラバン員たち。


 ザンベルグ改とルイフィールを回収して飛行艦と白い砂上艦が去っていった。



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