第45話、強化。
「それで……そこにいるマゲッツどもを鍛えて欲しいと……」
ここは砂漠のど真ん中だ。
さすがのハートウーマン軍曹でも炬燵に熱燗は無理があるようである。
「ふん」
専用のインベントリに炬燵と熱燗を収納した。
半纏を脱いだ。
カーゴパンツに迷彩柄のタンクトップ姿である。
軍曹の身体は小柄ながらも豊かな胸がちらちらと見えた。
「イエスッ、マアムッ」
シャル殿が気をつけの姿勢で答える。
「……まあよかろう」
ヴヴン
ハートウーマン軍曹がかすかな光とともに二人に分かれる。
世界樹の濃厚なマナの下、光の精霊として神化した彼女にとって、同一次元に二体(二柱?)存在することなど造作もないことなのだ。
帽子にスラックス、短い杖を小脇に抱えた制服。
タンクトップ姿の私服の彼女は音もなく消えていく。
ガンドーラ台地に帰ったのだ。
「マゲッツどもお、気をつけえっ」
ナハト―ラを先頭に潜砂艦のクルーが整列して気をつけをした。
「これからお前たちが言っていい言葉は、イエス、マムだけだ」
「皇国の皇女だろうが、潜砂艦の艦長だろうが私は差別をしないっ」
「なぜなら等しく価値がないからだっ」
以下略。
ニュウローランにワイルダーキャラバンの拠点の建物を建てている横で、
軍用テントを張ってブートキャンプが始まった。
◆
ナハト―ラたちが合流して約三カ月。
ニュウローランに最初につくられたのは一の字に伸びる長いふ頭だった。
その左右にキャラバン船と潜砂艦がつけられている。
埠頭の上には巨大な人魚。
ひれを壊された装甲巨兵である、”アリエル”だ。
「今まで言ってなかったことがある」
キャラバン船の上に片膝をついた自分(九六)が言った。
「なんだ?」
チャールズや弟のオルソンの父、ローラたちの祖父に当たるアイクだ。
五十代半ばで機関長をしている。
「キャラバン船のマナバッテリーの減りが少ない、もしくは増えているということがなかっただろうか」
「……どうしてそれを……?」
コックピットハッチを開けて医療用アームで後部の荷物置きをガサゴソと無造作にあさる。
セーラー服やチャイナ服をのけた。
「あった」
取り出したのは一振りの木の枝。
「! そ、それはまさか」
「世界樹の枝です」
「な、なんじゃとお」
マナは生命力そのもの。
マナをを生み出すのは、森林、大量の水、人や生物の集まるところが一般的だが。
奇跡的に手に入れた世界樹の葉一枚でも、小さな船なら動かすことができるといわれるものだ。
「それが枝となあ」
アイクの驚きの声。
「これを、潜砂艦と巨兵に仕込もうと思います」
「た、確かに」
潜砂艦の全体の九割がマナバッテリーが占める。
単独で潜る巨兵、”アリエル”は言わずもがなだ。
後に、シャル殿に許可を得て、
「ふんっ」
シャル殿が枝から小さな小枝と葉をむしりとった時の声だ。
「ひいっ」
周りの人はドン引きしていた。
葉をキャラバン船とアリエルへ。
小枝を潜砂艦に搭載。
本枝はシャル殿やフェンリルであるロボの活動用だ。
さらに、
「汎用性がないんだよね」
ということで、高性能3Dプリンターを駆使して、”アリエル”の下半身を多関節蛇腹構造に改造した。
人魚型の装甲巨兵が下半身が蛇(海蛇?)のナーガ型に変わったのである。
遥かな昔にハイランダーである姫が駆ったといわれる伝説の巨兵。
その名にちなんで、”シェへラザード”と改名された。
武器も同じように大鎌に変更される。
後の世のガンド帝国皇帝機の誕生であった。
このようにして、ワイルダーキャラバンの装備が大幅に強化されたのである。
「今日は八十キロの遠泳だあ」
アイクと相談しているとき、胸元に白い布で、”しゃる”と、”なはとうら”と書かれたスクール水着で泳いでいる二人を見つけたのであった。




