第三十九話、飛行艦、”ツエペリン”。
無事ワイルダーキャラバンの情報を持ち帰ったナハト―ラたち。
本国に連絡すると、金色を持つのエルフと獣人を教会から、”使徒”と認定され、最重要排除対象になった。
さらに新たなオアシスの発見である。
一家族が主体の弱小キャラバンから発見証の奪取の命令が下りる。
「使徒排除と発見証入手の手柄かっ」
カスペン司祭が酒臭い息を吐いた。
片手にはウイスキーの入ったグラス。
もう片方にはほぼ半裸の女性が複数。
カスペン司祭の私室だ。
「ふふ、俺にも運が向いてきた」
「これらの功績で本国に凱旋も夢ではないっ」
――こんな砂漠に埋もれる俺様ではないのだ
「ナハト―ラ皇女か」
――あと五年もすれば美人になったのだろうが
「第五皇子に乗り換えだな」
第五皇子、”サクソン”は隣の地域に派遣されている。
砂漠ほどではないが辺境地だ。
「ドワイフに恨みがあったはずだしな」
にやにやと笑うカスペン。
貴族学園の生徒時代に、現潜砂艦の艦長であるドワイフは下級貴族の令嬢を襲おうとした第五皇子、”サクソン”を止めている。
この事件でサクソンの継承権はナハト―ラの一つ上まで下がったのだ。
結局、逆恨みしたサクソンがドワイフを砂漠に左遷させたのである。
「ワイルダーキャラバンの船が出港した」
サマーンカーンにあるギルドの本部からオアシス発見証が交付されたのだろう。
建物の資材を積んでいるようだ。
誰も知らない新しいオアシスに拠点を作るつもりだろう。
「ウーボートも追尾する」
ナハト―ラがうなずく。
「出港」
隠された拠点から垂直に降下。
オアシスの水を通り砂に潜る。
潜砂艦、”ウーボート”が出発した二日後。
ヒュヒュヒュ
サマーンカーンの一部を影の黒で染めながら空飛ぶ船が飛来した。
大きさはワイルダーのキャラバン船より少し大きいくらい。
四方に上向きにプロぺラ。
後ろに二つの推進用プロペラ。
ガンド皇国の新型兵器、飛行艦、”ツエペリン”である。
『ふん、来たぞカスペンッ』
魔動無線から傲慢そうな声がする。
『お待ちしておりました、サクソン第五皇子殿下』
『すぐに追いかけるぞ、ナハト―ラとドワイフごときに手柄はやらん』
『そうでございますとも』
飛行艦、ツエペリン”の補給の後、カスペンの乗った教会の砂上艦とともにナハト―ラたちの後を追った。




