第四十話、追跡。
二つの月あかりに照らされた夜の砂漠。
遠くに光の点が明滅している。
「見つけた、キャラバン船の光だ」
塔のように立った艦橋の上、ドワイフが双眼鏡から目を離した。
潜砂艦は浮上航行中だ。
灯火管制中(光を一切出さないこと)で見つかることはないだろう。
「追いついたな」
砂漠の移動は夜間行い、昼は暑いので避けられる。
が、砂の中を走る潜砂艦は別だ。
昼夜問わず移動が可能であるのだ。
夜間はマナバッテリーの消費を抑えるため潜らず砂上航行をするのである。
「見つけましたか」
ナハト―ラが隣に並ぶ。
「ええ、…………明日の昼間に攻撃予定です」
昼間に寝る場合が多い。
「そうですか、でも」
――あの落ち物にきづかれているような気がします
「ナハト―ラ皇女、相手の力は未知数です、危なくなればすぐに逃げてください」
「分かりました」
――逃げるところなんてないわ
ナハト―ラが静かにうなずいた。
「それと」
「ええ」
後ろを振り返る。
「教会の高速艦がつけてきています」
カスペンの白い砂上艦だ。
灯火管制など隠れているつもりだろうがばれていた。
「横取りをするつもりでしょう」
「……そうですね」
ふふ
二人はあきらめたように笑った。
「おや……?」
――一瞬月ががかげったような
潜砂艦と同じように飛行艦も開発されてすぐである。
《《空を飛ぶ船》》というものに考えも及ばない二人だ。
カスペンの砂上艦の上空に、サクソンが乗る、飛行艦、ツエペリン”が飛んでいたのであった。
◆
白々とあたりが明るくなり夜が明けはじめた。
「キャラバン船が止まった」
「潜望鏡震度まで潜航」
ザザザザザ
と艦が砂に沈む。
「キャラバン船の横に艦首を向けろ」
「寝静まるのを待って魚雷攻撃をかける」
潜望鏡を出したまま砂の中を移動し、船の横につけた。
「キャラバン船までの距離、およそ五百メートル」
船にとっては目と鼻の先の距離だ。
「両舷反速、艦を止めよ」
開発したての魚雷の有効射程距離である。
魚雷内臓のマナバッテリーではこれ以上進まないのだ。
「ふむ、寝静まったようだな」
潜望鏡をのぞきながらドワイフが言う。
甲板に落ち物の巨兵が座っているのが見える。
夜どうし走ったキャラバン船は、普通これから睡眠時間だ。
「一番、二番魚雷装填」
ガコン、ガコン
装填される音が響く。
「ナハト―ラ皇女、出撃準備を」
魔動無線に言う。
「準備完了しました、いつでも出れます」
ナハト―ラが無線で答える。
「魚雷発射とともに出撃してください、くどいようですが十分以上の潜砂はだめですよ」
「分かってます」
「一番、二番魚雷、発射」
シュパア、シュパア
発射音が響いてくる。
「ナハト―ラ、出撃します」
巨大な機械の人魚が潜砂艦から泳ぎ出た。
潜砂艦の魚雷発射とともに、白い高速艦と上空の飛行艦が急速の近づいてきたのである。




