第37話、カタコト。
ヴ、ヴ、ヴ、ヴ、ヴ
砂中用ソナーが周りに響く。
どうせ砂の中だ。
ナハト―ラはモニターはまっくらなので目をつむった。
ソナーも堅いものが周りにないことが分かる程度のもの。
まっすぐ上を目指す。
しばらくするとモニターに色がついた。
2つの月の光が斜めの線になって砂地まで届いている
水面がキラキラとひかり波打つ。
「ああ」
――水の中が好き
――すべてから解き放たれるみたい
両手を広げ水の中でしばらくたゆたう。
水の中で浮遊感を楽しんだ後、水面を見た。
黒くて細長い影が水面をけがす。
左手の三又の槍を持ち直した。
「あれがキャラバン船ね」
ナハト―ラは、皇位継承権最下位の第八皇女だ。
母親は下級貴族のメイド。
母は産んだすぐに行方不明になっており、顔も知らない。
後ろ盾もない最下層の皇女は、敵国に惜しげのない人質として嫁に出されるだろう。
嫁に出された後、敵国で諜報活動をさせられるのだ。
ナハト―ラは、10代前半で諜報員の訓練を受けていた。
スッ
音もなく水面に顔だけを出し船に近づいていく。
チャプ
少し水音を出して上半身をを水の上に。
左右についた蛇腹状の腹びれを全開、水平にして姿勢を保つ。
丸みを帯びた船体。
その上にある甲板に右手をかけた。
シュッ
胸部装甲を上にあげて、
ストッ
甲板に飛び降りた。
飛び降りた前には、耐熱シートにくるまれた膝をついた巨兵がある。
「前半分は巨兵の格納庫ね」
ほんのすこし格納庫の扉を開けて。
パチリ
カメラのような魔道具で中を映す。
「作業用ね、さて」
本命の巨兵だ。
「気をつけろと言われたっけ」
膝をついた巨兵に音もなく近づく。
そっと耐熱シートをめくった。
「なっ、”終末の黒曜石っ”」
腰の後ろに横向きにつけられている。
パチリ
写真を撮った。
肩のシートをめくると赤い丸。
「異世界の国、”ニポン”のマーク、やはり落ち物ね」
巨兵は普通は人の鎧を模した形をしている。
でもこれは、直線と角が基本である。
明らかに異質なデザインだ。
「巨兵……ではないわね」
「九十六式空挺歩兵戦車のAI、”學天則Ver・525といいます」
「あなたはバザーでお会いましたよね」
「なっ」
自分ははじけるように後ろに飛ぶ。
船の手すりを蹴り、胸部装甲の上に手をかけ、操縦席に飛び込んだ。
ザパーーン
水面に勢いよく尾ひれを出しながらアリエルを緊急潜航させた。
潜砂艦に帰りついた。
「落ち物だった、ニポンマークがついてる」
「そうですかい、何かあれにこちらの存在に気づかれているような気がしてたんです」
ドワイフ艦長だ。
「”九十六式空挺歩兵戦車のAI、”學天則Ver・525といいます、あなたはバザーでお会いましたよね”と聞かれたわ」
スパイの訓練で言葉をそのまま記憶しているのだ。
「”學天則……ですか」
「そう言ったわ」
「おかしいですねえ、奴らは妙なこだわり(プライド)があって、片言(←カタカナ)でしか話をしないんですよ」
ガンド帝国は落ち物の研究が進んでいるのだ。
「カタコト……ではなかったわ」
「じゃあ何なんですかね、その人工知能《AI》は」
二人は考え込んだ。




